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台本書きをしてしまう人の大半は、小説以外の方法で表現される作品と同じ感覚で物語を作っています。

前回の記事では、台本書きがどういったものか、なぜ嫌われてしまうのかを解説しました。
今回は「台本書きから小説書きに直したい!」という方向けに、5つのコツをご紹介します。

 

  1. 台本書きをしたくなる理由を知る
  2. 会話の人数を減らす
  3. 台詞の中に発言者のヒントを入れる
  4. 状況から推測できれば、複数人の会話も説明を省ける
  5. 台本書きの落とし穴は台詞だけじゃないことを知る

 

コツ1 台本書きをしたくなる理由を知る

台本書きをしている人は、「その方が楽だから」「分かりやすいから」という理由までは説明できても、
「なぜ台本書きだと楽なのか」や「なぜ台本書きをしないと分かりにくい文章を書いてしまうのか」は理解していないことが殆どです。
原因が分からないことについて対処するのは難しいので、まずは台本書きに頼りたくなる理由を知りましょう。

台本書きの一番の利点は、「誰が何を話しているのかが一目で分かること」です。
そしてこの利点が最も活かされるのは、大勢の登場人物が次々と言葉を発しているときです。
本来小説という表現は、大勢が次々と台詞を話すという展開に向きません。
それなのにそうした表現をしたくなる人が多い理由は、夢小説の題材の殆どが、アニメ、ゲーム、漫画などの「小説形式以外」で書かれた物語であるためと思われます。
物語を作るとき、無意識に自分が好んでいる表現方法に引っ張られていませんか?

物語には、表現の方法によって制限があります。
例えば漫画では、『音』や『匂い』をそのまま表現できません。
代わりに、実際には目に見えないはずの『音』や『匂い』を絵や言葉で表現することで、読者は聞こえないはずの音や実際には感じない匂いをイメージできます。
細かく言うと、五感の内の『視覚』だけは絵で補うことが出来ているのが漫画なので、それ以外の『聴覚』『触覚』『味覚』『嗅覚』を絵か文章で表現する必要があります。
アニメやゲームの場合、絵と言葉と音まで表現方法が広がります。

小説は言葉だけで書けるから簡単だと思って書き始める初心者さんも多いですが、上手に書くには言葉だけで伝えることの難しさがあるということもまた事実なんです……

漫画で表現したい内容をそのまま小説にしようとすると、普段は絵で表現されているものしか見たことがないたくさんの表現を言葉でしなければなりません。
絵で見たときはストレスなく読めて楽しい大勢が代わる代わる台詞を発するシーンも、小説の場合は直感的に誰が話しているのか分かりにくく、読み手はストレスになります。
そんなときに「台本書きをすればいいんだ!」と思ってしまうのです。
その結果、台本書きの形式に甘えることで、『どれが誰の台詞か説明しないと収集がつかないような構成のお話』を作り続けてしまいます
まずはその落とし穴から脱出しない限り、台本書きを卒業することは出来ません。

 

コツ2 会話の人数を減らす

コツ1でご説明したように、台本書きに最も甘えてしまうのは、発言している人が多すぎて「これ誰の台詞?」という疑問が発生してしまうシーンです。
そのようなシーンをいきなり台本書きをやめて描くのは至難の業なので、最初は大勢が一気に話さないお話から書いて慣れていくことがオススメです。

理想は二人の会話がメインになる形です。
二人なら、最初の台詞がどちらの台詞か分かれば、あとは交互に発言者が変わるということは察せますよね?

 

Aは本を読んでいた。
するとそこにBがやって来て言った。

「ここ座ってもいい?」
「別にいいけど……」
「ごめん、迷惑だった?」
「そんなことないよ」



登場人物はAとBだけだったら、上記の会話はシンプルです。


A「ここ座ってもいい?」
B「別にいいけど……」
A「ごめん、迷惑だった?」
B「そんなことないよ」



書かなくても想像出来るので、上記みたいにわざわざ発言者を書く必要はないですよね。

 

コツ3 台詞の中に発言者のヒントを入れる

ト書きなしで、どちらの台詞か表現できるテクニックもあります。


「ここ座ってもいい?」
「なんだ、Bか。別にいいけど……」
「ごめん、迷惑だったかな?」
「そんなことないよ」



二つ目の台詞で、それとなく相手がB(つまり発言者がA)であるヒントを出しています。

そこから察することで、自然と前後の台詞がAとBのどちらの台詞か分かりますね。
ちなみに登場人物が男女だと、こんなテクニックも使えます。

「なあ、ここ座ってもいい?」
「別にいいけど……」
「ごめん、迷惑だったか?」
「そんなことないよ」


呼びかけの「なあ」や「~か?」という表現は、女性はあまりしませんよね。
登場人物が二人だけなら、読み手は無意識に男言葉の台詞を男の台詞だと察するので、説明なしでも読めるのです。
方言や独特のしゃべり方をするキャラの場合も、このテクニックが使えます。

 

コツ4 状況から推測できれば、複数人の会話も説明を省ける

これはシーンによりけりですが、状況から察することができるように書けば、複数人の会話も少ない説明で表現できます。


Aは本を読んでいた。
するとそこにBとCがやって来て言った。

「なあ、ここ座ってもいい?」
「別にいいけど……」
「おいC、席なら他に空いてるじゃん。ごめんねAちゃん、迷惑だったよね?」
「そんなことないよ」



状況から言って、最初の台詞はBとCのどちらかです。
でも三つ目の台詞で「ちょっとC」と窘めているということは、Bはその場に座ることに乗り気ではないですよね。
つまり、最初の台詞はCの言葉だと察することが出来ます。

もちろん、全部が全部このテクニックで描ききれるものではありません。
また、複数人が一気に出てくると「今この場に誰がいて、どういう状況で……」と察しながら読む小説では大変疲れるので、一つのシーンに登場する人物の数は抑えるのが読みやすさのコツではあります。

 

コツ5 台本書きの落とし穴は台詞だけじゃないことを知る

台本書きを直そうとする人の多くは、台詞の前に名前を振らないようにさえすればOKだと思い込みがちです。
台詞部分の書き方だけが目に見えて違うから、そこさえ直せば小説の体裁はとれていると安心してしまうのです。

しかし、厳密に言うと、下記の表現もどちらかというと台本的です。


Aは本を読んでいた。
するとそこにBとCがやって来て言った。



このお話のヒロインがAで、BとCが元ネタの原作キャラだとすると、BとCの外見や年齢などは省略されても伝わると思います。
では、Aはどういうタイプのヒロインでしょう?
本を読んでいる場所は?
今って何時頃?

小説は想像して読むことを楽しむ物です。
けれどそれは、何でもかんでも読み手に「察してくれ」と委ねる物ではありません
絵で背景に高校の図書室を描く一手間のように、文章でそれを表現する必要があります。
漫画では窓の外に青空が描かれていれば一発で昼だと分かるシーンでも、小説だと「昼だ」という情報を書かないと夜のシーンと誤解される可能性もあります。


ある日の放課後、Aは図書室で本を読んでいた。
するとそこにBとCがやって来て言った。



時間と景色が見えましたね。
漫画で言うと、これまでは背景が描かれてなかったところに図書室の背景が描かれ、夕暮れの空が描かれたイメージだと思います。
ここまで描ければ、それは台本ではなく小説と呼べるようになったと思います。

ただし、これはあくまでも最低限の描写です。
絵で言うと、やっと線でそれらしい形を縁取れるようになったくらいの状況です。
上手な人の絵だと、同じ図書室でも綺麗な校舎か古い校舎かまで描き分けられるように、小説も使う言葉や表現次第で、もっと描かれた内容が具体的に想像しやすくなります。

こうした表現を身につけていくことで、文章はどんどん上手くなります。

※補足
ただし、表現の盛りすぎは注意です。
物語の本筋にあまりにも関係ない部分を過剰に掘り下げると、読み手が混乱するので避けましょう。

 

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