ミュージカル「ソーホー・シンダーズ」@紀伊國屋サザンシアター | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

脚本 アンソニー・ドリュー/エリオット・デイヴィス

曲 ジョージ・スタイルズ 歌詞 アンソニー・ドリュー

演出 元吉庸泰

林翔太/松岡充/東山光明/豊原江理佳/綿引さやか/西川大貴/松村雄基/水夏希/菜々香/青野紗穂

 

 舞台はロンドンの歓楽街ソーホー地区。シンダーズはcinder(燃えかす、灰)の複数形だけど、ここではシンデレラのこと。童話の「シンデレラ/Cinderella」は、このcinderに「小さい」という意味の語尾をつけた「灰にまみれた小さい女の子」という意味のあだ名だそうで、「灰かぶり姫」という和訳の本もあるよね。本作はそのシンデレラ物語を下敷きにした、現代の青年ロビーが幸せを掴むまでの話。

 

 ネタバレあらすじ→ソーホーで、亡き両親が遺したコインランドリーを営むゲイのロビー(林翔太)は、義理の姉2人(菜々香/青野紗穂)の意地悪により金銭的に追い込まれ、ネットで知り合った経済界の大物ベリンガム卿(松村雄基)に金銭援助をしてもらうため時々会っている。そんなときロンドン市長候補者ジェイムズ(松岡充)と出会い2人はフォーリンラヴ。そうとは知らず、ジェイムズを後援しているベリンガム卿は選挙資金集めのパーティーを開き、ロビーも招待する。市長選がらみのパーティーとは知らされずに出かけたロビーは、そこでジェイムズと鉢合わせし、マスコミが2人の仲を嗅ぎまわる。ロビーはレッドボーイ(男娼)だと報道され、ジェイムズには女性の婚約者マリリン(綿引さやか)がいたことからスキャンダルになり立候補を取り下げる。しかしそれがきっかけで皆が自分の気持ちに正直になり、マリリンはジェイムズと別れ、ロビーとジェイムズは結ばれる。

 

 一応書いておくと、市長候補者がゲイで実際に男性の恋人がいてもイギリスでは許容範囲のはずだから、スキャンダルの要点は、バイセクシャルのジェイムズにはフィアンセがいた=浮気してたってことと、ロビーとの関係が売春/買春かどうかですよね。でも、ロビーはベリンガム卿からお金をもらっているけどセックスはしてない(ベリンガム卿はパーティーの夜ロビーを自宅に泊めるつもりだったけど😆)、ジェイムズとはセックスはしてるけどお金はもらってない、だからいずれに対しても男娼行為はしてない。

 ところが、2人の関係を知ったベリンガム卿が腹を立て、ロビーの義理の姉たちを買収して、ロビーはお金で男と寝ているとマスコミに吹聴させるんですね。もちろん、自分とロビーとのことは秘密にしたまま(のハズ)。

 

 以下、辛口です🙇‍♀️  2019年以来の再演だそうで、それだけ評判が良かったんだと思うけど、えーと実は、物語のキモであるロビーの気持ちや行動がよく理解できなかったです。そもそもジェイムズと出会って相思相愛になったとき、なぜベリンガム卿と別れずダラダラと二股交際していたのか、それがいちばんの疑問。卿からの金銭援助がそれほど魅力だったのか? いや、普通に仕事を探せば?って思うけどねー🙄  パーティーには行きたくないけど洋服代として卿がお金をくれたからって、それ返せばいいじゃん😑

 そして、スキャンダル報道のあとジェイムズと別れてロンドンから出て行こうとする理由も分からなかった。二股かけていたので自己嫌悪に陥ったとか、ジェイムズを裏切ってしまい申し訳なくて、とかなら分かるけど、「自分は誰にも愛されていない」みたいなこと歌っていたような。ジェイムズに振られて落ち込んだのなら、すべてはロビーが悪いわけだから(と私は思う)真摯に謝罪すればいいんじゃないの? 彼が何を悩み何に悲観してロンドを去るのか理解不能だった。それとも、何か大切なセリフを聞き逃したのでしょうか💦

 打算的で楽な道を選び被害妄想っ気もある彼が、事件をきっかけに人間として成長していく話ならともかく、最初からロビーは純粋な好青年として描かれていたからなー。

 

 一方ジェイムズについては、ロビーとベリンガム卿との関係を知ってショックを受けるのは当然だし、公の立場上自分がバイだという性癖を隠して世間体を保ちながらジェイムズへの愛との間で悶々とするのは分かるんですよね。最後にマリリンの方から解放してくれて、自分に正直に生きる道を選べてよかったですね。ただ、残念ながら松岡充はロンドン市長候補者に見えなかったな。立ち振る舞いや彼の持ち味が政治家ぽくないのかも。

 ということで物語にイマイチ入り込めなかったけど、いちばん面白かったキャラは、選挙本部長ウィリアム(東山光明)ですね。その悪党ぶりがスカッとカッコ良かった。候補者を手の平で躍らせるとか、世間の評判を操り、メディア受けする演説原稿を書いているのも彼だし😎  しかも改心などせず最後までワルなところも気持ちいい。結局スタッフへのパワハラを訴えられ失脚するとこまで完璧でした。東山さん楽しそうに演じていたよ。

 また、ロビーの友達でシングルマザーのヴェルクロを演じた豊原江理佳も、その上手い演技が印象に残りました。最後になったけど楽曲はキャッチーなメロディーや心に響く歌詞が多くて楽しかったです。

 

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