TV視聴 ハンブルク・バレエ「アンナ・カレーニナ」(2022年5月収録) | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

振付 ジョン・ノイマイヤー

音楽 チャイコフスキーほか

アンナ・ラウデール/エドウィン・レヴァツォフ/イヴァン・ウルバン/アレイズ・マルティネス/カレン・アザチャン

 

 先日のBSプレミアムで放送されたのを観ました。この作品は、2021年3月に予定されていて中止になったハンブルク・バレエ団来日公演のプログラムにも入っていましたよね。初演は2017年。評判が良いらしく、他国のバレエ団でも上演されているようですが、えーと……個人的にはイマイチでした🙇‍♀️ 家でTV画面を通して収録映像を観た、という不利な条件のせいもあったかもですが。

 トルストイの小説は1870年代の帝政時代を舞台にしていますが、それを現代に置き換えて描いた作品アンナ(アンナ・ラウデール)夫(イヴァン・ウルバン)は政治家、アンナが運命的出会いをするヴロンスキー(エドウィン・レヴァツォフ)は、な・ぜ・か🙄ラクロスの選手という設定で、あらすじはだいたい原作通り(だと思う)。

 

 まず面白かったところに触れておきます。アンナとヴロンスキーは鉄道駅で出会い恋に落ちるんだけど、ちょうどその時、鉄道の線路番の男が列車に轢かれて死ぬ💥という事故が起きる。その死体を見たアンナは不吉な予感を覚えます。以後、その男の亡霊(カレン・アザチャン)死神のように、最後まで事あるごとにアンナの周り(脳裏)に現れるのですね。そして終盤、結婚生活もヴロンスキーとの関係も社会的信頼も失った彼女の前に現れる亡霊=死神は、アザチャンではなくレヴァツォフなのです😱 その死神とアンナがPDDを踊るんだけど、それはヴロンスキーと初めて心を通わせた時と同じような振付だった。ここで彼女は死神/ヴロンスキーと手を握る=死と結ばれる=自殺を覚悟するという、とてもノイマイヤーらしい演出でした。こういうのは好きです。

 

 もう一つノイマイヤーらしいと思ったのは、死神と踊る前のシーンで、アンナはオペラに行くんだけど、その作品が「エフゲニー・オネーギン」。タチヤーナが手紙を持って夢心地になっているシーンで、そのタチヤーナがアンナに寄り添おうとするんだけど、アンナは彼女に心を開けない。もちろんそれは、心を病んだアンナの妄想。ノイマイヤーの「椿姫」でも「マノン」が重ねられていましたね。それと同じ手法ですが、タチヤーナとアンナの生き方は対照的なので意味合いが違ってきます。ここでノイマイヤーの言いたいことはよく分かる……ちょっと説明しすぎには感じたけど💦

 

 シーンごと、振付ごとの、心理描写の繊細さ緻密さ深さは期待を裏切らないし、それを的確に踊ってみせるダンサーの表現力も素晴らしい🎉 アンナ・ラウデールとエドウィン・レヴァツォフのパートナーシップは完璧で、夫役のイヴァン・ウルバンも感動的なダンスを見せてくれました。アンナと夫とヴロンスキーによるパドトロワも印象的。農夫リョーヴィン役のアレイズ・マルティネスすごく良かったです。

 

 でもって、あまり好きになれなかった理由……休憩入れずに3時間弱という長尺であることからも想像できるけど、いろんなことが詰め込まれすぎていて説明過多気味、観ていて疲れてしまった😔

 アンナと夫とヴロンスキーの話の他に、キティ&リョーヴィンの結婚までの経緯も、アンナの兄夫婦のゴタゴタの顛末も、いくつものシーンを使って丁寧に描いている。3組の全く異なる夫婦の在り方を対照的に見せているのは分かるけど、小説ならともかく、同じことをバレエでやると、他のカップルがアンナの心理にどう影響するのか分かりづらい。

 こういう重層的な構成はノイマイヤーお得意だけど、3組の夫婦を見せることが効果的に機能しているように思えず(←個人の意見です🙇‍♀️)、却って過剰&饒舌に感じてしまいました。他の2組の夫婦を出して対比させるなら、消化したエッセンスの形で象徴的に挿入するほうが私は好きかも。

 他にも、例えばアンナが息子と踊るシーンが何度かあるんだけど、そこに意味があるのは分かるけどさ、それ must かな? アンナと夫とヴロンスキーの話にギュッと絞るだけでも十分面白いと思うんですよ(←個人の意見です🙇‍♀️)。でも、丁寧に、言い方かえればしつこく物語るノイマイヤー。その深い考察はこちらの知的感性をくすぐってくるし、言いたいことがいろいろあることは分かるけど、それらを受け止めるのが、もういっぱいいっぱいになってしまいました。

 

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