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横川~坂本


 

 

 「元三大師堂」の門前から、急な石段を 15分ほど下りると、日蓮(1222 - 1282)が修行した「定光院(じょうこういん)」がある。今回は時間の関係で行かなかったので、↓数年前の写真を出しておこう。

 


 

 

 門からなかに入ると、正面に日蓮の像がある。延暦寺のほかの聖人とも、仏像ともちがって、ほとんど柔和なところのない、強靭な意志を秘めた風貌だ。しかし、高い学識の裏付けをも感じさせる。

 

 母子が参内していた↑。子供は怖がっているようすだった。

 

 



 

 「元三大師堂」前には、道元の聖跡に向かう路もある↓。

 

 

 

 

 「承陽大師」は、曹洞宗の祖・道元(1200 - 1253)の諡号(おくりな)。「従是下(これよりした)一丁半」:坂を下りたところに、道元の「霊蹟」がある。大悟の場所だという。「悟り」とは一度で完成するものではなく、成仏すれば、さらなる成仏を求めて無限の修行を続けることが成仏の本質だと道元は言う。そのことを覚った地なのだろうか。

 

 道元は、日蓮にも劣らない激しい弾圧を比叡山から受けたという。横川は、宗派の異端の地でもあるのだ。

 

 

 

 

 「恵心堂」↑。恵心僧都(えしんそうず)源信(942 - 1017)の住坊。源信は、ここに籠って『往生要集』などを著述し、浄土教(阿弥陀信仰)の基礎を築いた。ただし、現在の建物は、麓の坂本里坊にあった別当大師堂を移築再建したもの。

 

 源信は、存命当時広く知られており、『源氏物語』には、光源氏の出家を導いたり、入水した浮舟を助けたりと、何度も登場する。紫式部(970頃 - 1019以後)は、『日記』でも僧都について記しており、慕っていたようだ。

 

 「恵心堂」は、春の桜と若葉、秋の紅葉が美しい場所でもある。源信が籠って、極楽世界を思い描きつつ研究にうちこんだ地にふさわしい。

 

 



 「恵心堂」の入口に建てられた石碑。「南無阿弥陀佛」の下に、「極重悪人 無他方便 唯称弥陀 得生極楽」と書かれている。「極重悪人」には念仏以外の手段は無いが、ただひたすら「阿弥陀仏」を称名すれば、極楽往生することができる。‥‥念仏は本来、悪人を救うためのものなのだとすれば、ここから親鸞の「善人なほもて往生を遂ぐ。況や悪人をや。」までは、一歩の距離だろう。

 

 しかし、法然親鸞が出る前の平安時代の阿弥陀信仰は、たいへん厳しいものだったようだ。臨終にあたっては、一心不乱に「阿弥陀仏」を唱えなければならず、一瞬でもほかのことを考えれば往生できなくなるとされた。『今昔物語集』には、臨終の念仏を唱えながら、棚の上の酢瓶を一瞬見たために、酢瓶の中の小蛇に転生してしまった「横川の僧」の話がある(⇒巻20第23話)。

 

 


 

 

 恵心堂」の先には、恵心僧都の墓所もある。↑右の石標に、「是ヨリ三丁」「恵心僧都御墓」とある。

 

 ところが、ここで大ポカをやらかしてしまった。広い道を、ただまっすぐに行けばよいのに、わざわざ細い枝路のほうへ降りて行ってしまったのだ(「是ヨリ三丁」の向かい側)。どうしてこんなばかげた間違えをしたのか、いまだに分からない。

 

 これから三石岳へ上がってゆくはずなのに、どんどん高度が低くなるので↓、変に思ってYAMAP〔登山者用のGPS付きSNS〕を見ると、日吉台に下りるエスケープルートを、標高差70メートルほど降りていた。来た路を急いで戻ったが、30分近くロスしてしまった。

 

 

 

 

 広い道に戻って、先へ行く。恵心僧都の墓所もあった↓。石段で上がってゆくようになっている。

 

 

 

 

 道のまん中にモミの巨木が立っている↓。自然樹が増えてきた。この先約3分で、道は二手に岐れる。左は、三石岳の中腹を巻いて下って行く道。三石岳のピークを踏んでおきたいので、右の道へ進む。

 

 

 

 

 右肩に出て、展望が開ける。空はすっかり晴れあがって、雲ひとつない。向かいは、四明岳大比叡に列なる比叡山の主脈。

 

 

 

 

 ↓三石岳 676m。三等三角点がある。

 

 

 

 

 難所は、ここからの下りだった。YAMAPにはルートがあるのだが、なぜか現地には無い!w あるのは、ただの崖だ。「(鹿よけ?)ネットに沿うように進む」と、口コミがあるが、そのネットも見あたらない。いまさら戻るのも億劫なので、そろそろと踏み跡を探しながら崖を降りてゆく。

 

 しばらく下りると、ようやくネットらしいものが見つかった↓。はっきりしないが踏み跡もある。

 

 

 口コミにある倒木をくぐる。倒木はありがたい。障害物ではなく目印になる。

 

 

 

 

 ↓下の道(三石岳を巻いた道)に降り立った。標高571メートル。どう考えても、ここはバリ・ルートだ。

 

 

 

 

 「八王子山」西肩に到着↓。この岐れ道は迷いやすい。

 

 黄矢印へ直進すると山頂へ向かうが、八王子山頂は「日吉大社」の奥宮で禁足地。立入禁止! 罰が当たって遭難しても知りません。

 

 そこで、右へ巻いて行くことになるが、手前の階段状の道(赤矢印)は、沢へ降りてしまう。緑矢印が、正しい巻き路。

 

 

 

 

 巻き路から、「八王子山」社殿前の参道に出る↓。

 

 

 

 

 「八王子山」社殿↓。「三の宮」と「牛尾宮」。

 

 

 

 

 参道を下りてゆくのだが、‥この石段、ハンパじゃない。一段一段が高いのなんの。写真では、そうは見えないが、きょうの行程で、ここがいちばんきつかった。

 

 

 

 

 「日吉大社」(東本宮)門前に降り立つ↓。

 

 

 

 

 「日吉大社」鳥居前↓。木立ちのなかへ直進すると、延暦寺・東塔へ登る「本坂参道」。自動車道路で左へ曲がると、ケーブル「坂本」駅。右が、日吉大社から横川へ。

 

 

 

 

 

 

タイムレコード 20211006
 (2)から 元三大師堂1423 - 1435恵心堂南で道迷い1501 - 1528三石岳 - 1550巻き道出会い1608 [571m] - 1632八王子山西肩1638 [350m] - 1649八王子山参道出会い1653 [335m] - 1713日吉大社東本宮門前[151m] - 1716日吉大社鳥居前(延暦寺本坂分岐)1730 - 1740坂本比叡山口駅[118m]。