小説・詩ランキング


 


 「シダンゴやま」――名前が気になって、いつか行きたいと思っていた。富士・箱根を展望する名所「高松山」までの縦走計画を立ててみたのだが、数日前の雪が残っていて思ったほどスピードが出ないので、断念してひと回り短いコースにした。それでも、「シダンゴ」の由来にますます謎が深まったのは収穫だ。

 

 

 

 シルエットは行程の標高(左の目盛り)。折れ線は歩行ペース(右の目盛り)。標準の速さを 100% として、区間平均速度で表している。横軸は、歩行距離。

 

 シャドーの標高グラフを見ると、最高点は「ダルマ沢ノ頭」。標高 880メートルらしい。「らしい」というのは、国土地理院が山頂として認定していないので、公式の標高がないのだ。しかし、↑等高線を見ると明らかな独立峰だし、現地で見てもそうだ。縦走路の分岐点にもなっている。

 

 この種の「不遇なピーク」は、低山には意外に多いこともわかってきた。

 

 

 


 ↓出発点の「」バス停広場。「寄」と書いて、「やどりき」とフリガナがふってある。しかし、以前は「やどろぎ」と読んでいた。松田町が観光向きに「やどりき」に変えてしまったのではないかと思う。

 

 あんのじょう、車掌は「やどろぎ」と言ったw

 

 

 

 

 

 バスの乗客は、私以外の全員が丹沢の「鍋割山方面」へ向かった。松田町が力を入れている観光「ロウバイ園」も、そっちにあって、いまちょうど満開だ。逆方向の「シダンゴ山⇒」は人気がない。冬行く山じゃないのかもしれない。

 

 ↓2020年に撮った「ロウバイ園」の写真。


 

 

 

 

 

 

 

 ↓中津川を渡る。顔を出しているのは、雨山か。

 

 

 

 

 左へ行くと「大寺観音堂」。「シダンゴ山」は右。

 

 



 ↓「大寺観音堂」。もとは大きな寺があったんだろうか。

 

 


 


 ↓茶畑のわきを昇っていく。扇風機が空回りしている。「」の裏山が見える。丹沢の「鍋割」から延びてきた尾根の末端。

 

 

 

 

 このへんだけ、雪が残っている↓。

 

 


 

 ↓頂上に近づくと、また残雪が出てくるが、たいしたことはない。

 

 

 

 

 それにしても、杉とヒノキの植林ばかりで、おもしろくない。

 

 

 

 

 ↓「シダンゴ山」頂に到着。

 

 

 

 


 小さな祠のとなりに由緒書き。

 

 

 

 

 原始仏教で、如来となる前の段階を称した「シダゴン」(聖者。=羅漢?)が訛(なま)って「シダンゴ」となった。それを「震旦郷」と書き表した。箱根の明神ヶ岳や、丹沢の尊仏山とともに、「シダンゴ山」にも「シダゴン(仙人)」がいた。白馬にまたがった弥勒菩薩が降臨したという伝説が麓の「寄神社」に伝わっている。とほうもない話だが、仙人だか聖者だかが、どうしてミロクになってしまうのか?

 

 いろんな話がごちゃごちゃになっている気がするが、インド、中国はともかく、古代朝鮮半島、なかんずく新羅では、ミロク信仰が土俗と習合した「花郎徒(ファランド)」の民衆運動が盛行した。ミロクの化身とされる「花郎(ファラン)」という美少年のまわりに青年男女が集まって、武芸学識を磨いたという(⇒:新羅の花郎と聖徳太子)。「仙人」について言えば、山を仙人の住む聖域とする信仰は、朝鮮南部から対馬島までに多い(網野善彦『無縁・公界・楽』,平凡社ライブラリー,p.128)。ミロク菩薩が「白馬にまたがって」というのも、‥いまちょっと出て来ないが、「花郎」の伝説か、大陸の弥勒教関連で見たおぼえがある。

 

 日本の仏教では、ミロクといえば「半跏思惟」の考える人だが、大陸の本来の「ミロク仏」「ミロク菩薩」は、まるでイメージがちがう! 大川隆法ではなくBTSだ、と言えば分かってもらえようか?

 

 中央アジアから中国北部にかけて広く隆盛し、朝鮮半島にまで伝わった大衆的なミロク信仰は、日本にはほとんど伝わらなかった。その土俗的なミロク信仰が、この相模の地にはあるのだとすると、それを伝えたのは、新羅などからの渡来人ではないだろうか?

 

 地図を見ると、「弥勒寺」という集落があるではないか。下山してから調べてみたところ、⛩マークの「寄神社」は、もとは「弥勒神社」といったそうだ。しかし、「阿弥陀神社」とか「弥勒神社」とかありえない。明治の「廃仏毀釈」以前は、寺院だったのではないだろうか? さらに調べると、『吾妻鏡』に「波多野弥勒寺」として登場する。「波多野」は今の「秦野」だろう。「寄神社」は、頼朝の時代には、弥勒菩薩を本尊とする寺だったのだ。(⇒:松田町HP「寄神社」

 

 

 

 

 ↓江の島と、大磯海岸の高麗山(こまやま)が見える。

 

 

 

 

 ↓うしろを振り返ると、「鍋割」付近の山稜。

 

 

 

 

 丹沢表尾根」。うしろに大山も覗いている。

 


 

 

 西側。富士山宝永山が、ちょこっとだけ見える。


 

 

 

 

 

 

 

タイムレコード 20230130 [無印は気圧高度]
 「寄」バス停[285m]820  - 824大寺観音堂[310mmap]826 - 838休憩ベンチ[365m]850 - 909鉄塔下の残雪[505mmap]  - 952シダンゴ山[779→758m 755mGPS]1035 - (2)につづく。