ものすごい暑さもようやくおさまって来たようです。いやもう、日本の夏がここまで大変な季節になるとは……


さて、今回のお題は「15分で練習」。

私のような「仕事と家事のスキマ時間にちょっとずつコマ切れでピアノを弾く人」の、15分単位の練習のメニュー例を書いてみます。似たような環境の方の参考になれば。

時間にゆとりがある場合には、もっとゆったりと構えて集中してじっくりと弾くのが良いのは言うまでもないけど、コマ切れ練習でもやり方によっては結構「練習したぞ」という充実感があると思います。



---------------------------------------------------
☆ 15分メニューを作る
---------------------------------------------------

15分というとすごく短いイメージですが、実はかなりのことが出来る。ドラマだって15分あれば相当に話が進みますよね。

この15分を1単位として、1日に2単位から4単位ぐらい出来れば、ちょっとした量の練習になります (とは言え、いつもコマ切れでは落ち着かないので、時間が取れる時には1時間なり2時間なりのまとまった時間で落ち着いた練習をするのがよろしいです)。


15分を活用するポイントは、あらかじめ15分用のメニューを何種類か作っておいて、タイミングを逃さないこと。ピアノの前に座った時に、すでに練習内容が決まっていてすぐに弾き始めること。
何をやろうか迷って教本やリアルブックなどをパラパラ見たりしてると、あっという間に15分が終わってしまう。

30分、60分のメニューも何種類か作っておくと便利です。その場で悩まずに、すぐに練習を開始できます。



---------------------------------------------------
☆  15分の例
---------------------------------------------------

ある程度コードを覚えた初心者向け。
まずは基本的なパターンから。



【基本練習】

・メジャースケール・マイナースケール (ハノン39番のパターン)

・ダイアトニックコード

・クローズドヴォイシング(ルートなし4音)のⅡ-Ⅴ-Ⅰ


おなじみ、12キーの定番練習の詰め合わせで15分です。各練習の比率は、その時に自分が一番必要と感じるものを多めにします。

実は私、超初心者のころは「ハノン39」のような音階練習をサボっていて、後になってすごく後悔しました。超初心者のころって、コードとメロディさえ弾ければなんとかなっちゃうから、意外に音階練習しなくても済むんですよ。
コードを覚えるだけで精一杯で、音階練習まで手が回らないってこともありますけど。

でも、いずれは必要になってきます。たとえばEからすぐにEメジャースケールやEメロディックマイナースケールが弾けるようにする。これは、上達してスケールを使ってアドリブするようになったら12キーで即座に出来ないと結構マズいことになってきます (今の私がまさにそのマズい状態)……

特にジャズメロディックマイナースケール (クラシックと違って上行下行が同じ構成音) は応用が効くので、早めに覚えておくと後で楽ができるはずです。地道にやると幸せになれると思う。



クローズドヴォイシングは、とにかくまずは覚えることですが (過去記事参照) 、覚えたらそれで終わりじゃなくて、出来るだけ毎日使うのも大事。
ピアノを弾く時間が全くない日は、後述の「デジタル単語帳アプリ」や、カードやノート(過去記事参照) があればそれを見るだけでもいいので、36個を全部バラで覚えるまでは、とにかく毎日何かやる、ってことで。

これ、正直言って大変です。でも、出来るようになれば、「自分は大きな力を手に入れたぞ!」と思えます (ゲームやマンガの主人公みたいに)。思えるだけじゃなくて実際に、そのコードをリズム良く弾くだけでもジャズっぽくサマになって「曲の演奏」という感じになります。

あまり使わないコードや異名同音のコード (F♯とG♭など) はうっかり忘れがちなので、全部覚えてからも時々全体を復習したほうがいいです。
私は今でもスキマ時間にはスマホの単語帳アプリで、自作の鍵盤図のスライドショーを見ています。詳しくは、この記事の最後で。



さて、ここまでは「基本練習」の話でしたが、以下は基本練習と並行して、自分に合わせて計画するオリジナル練習。何をやるのかは人によって違います。

---------------------------------------------------

【その時に気になっていることを練習】

一番気になってモヤモヤしていることを、ピンポイントで15分集中して練習。

特定のリズムやアーティキュレーションでも、難しいフレーズの運指でも、ヴォイシングでもなんでもいい。
出来るだけ問題を細かく分解するとやりやすい。たとえば「この曲のヴォイシング」のような大きなものより、「このイントロのヴォイシング」「このフレーズのヴォイシング」ぐらいがちょうど良い。

内容にもよるけど、15分集中してやると、意外に解決のヒントや練習の突破口が見つかったり、どうにかなることも多い。

15分で全くどうにもならず「解決の見当もつかない、手も足も出ない」というものは、たぶん「範囲が広すぎる問題」か「根が深い問題」なので、あとで改めて問題を細かく分解するか、まとまった時間を取る方がいいと思います。
私の場合、「根が深い問題」の典型は、たとえば「1拍半」を安定してキープできないという基本的なリズム感の悪さでした。


---------------------------------------------------

【スケール練習】

・気になっているものだけを集中して練習。
ひたすら15分やると、かなりの密度でできます。


---------------------------------------------------

【初見でコンピング】

・黒本やリアルブックからランダムにその場で選んだ曲を、コードだけでも通して最後まで弾く。
テーマは弾けなくてもいいので、15分でコンピングが一応形になるようにしてみる。


---------------------------------------------------

【フレーズコピー】

(練習に使う曲をいくつか、あらかじめ決めておいてその中から選ぶ)

・その曲の、4小節ぐらいのフレーズに集中してコピーして弾いてみる。


---------------------------------------------------

【コード進行】

(練習に使う曲をいくつか、あらかじめ決めておいてその中から選ぶ)

・その曲の、コード進行だけに集中して練習。


---------------------------------------------------

【アドリブ】

・iReal Pro からランダムにその場で選んだ曲で、できる範囲でアドリブ。
難しい曲だったら、キーの主音だけで弾き、リズムを最大限に工夫する。 


---------------------------------------------------

【『ハウ・トゥ・インプロヴァイズ』のエクササイズ】

・エクササイズを1つやる。あらかじめリストアップしておく。

ジャズの筋トレ (過去記事参照)。



この他にも、自分で必要だと思うことをリストアップして、15分でできる自分用のメニューをいくつか用意しておくといいと思います。
ただ、大きな流れの中の一部として「その練習は何のためにやっているか」を注意しないと、その場限りの散発的な練習になってしまうかもしれません。

大きな流れというのは、「ヴォイシングを学ぶ」とか「リズムを身につける」とか「コード進行を知る」など。特にリズムが大事だと思います。自分がリズムが苦手なので、大事さがよく分かります。

リズムはごまかしが効きません。たとえコードが弾けてもリズムがダメだとぶち壊しになるのは、私自身が苦い経験から学びました。「ジャズは音高より音価」という人もいるぐらい、ホントにホントにリズムは大事なので、ぜひ優先して練習することをオススメしたいです。



---------------------------------------------------
☆ 「フロー状態」
---------------------------------------------------

15分練習は、かなりのことが出来る。でも、30分や60分の練習より不利な部分もあります。だんだんノッて来て、ちょうど夢中になったところで時間切れになっちゃうんですよね。

夢中になってひたすら没入するいわゆる「フロー状態」になるのはとても楽しいことなので、より多く経験した方がいい。そのためには、いつも15分ばかりでは物足りない。やっぱり、ある程度まとまった時間があるほうが良いです。毎日は無理でも、なるべくまとまった時間をひねり出したいところです。

15分練習でも、最初に何かちょっと工夫すると短時間で深く没入しやすいかもしれません。すぐに没入できれば、ノリノリ状態を少しでも長く体験できて、お得です。
ジャズピアノの15分練習の場合、可能であれば練習開始時間直前まで練習対象の音源をヘッドホンやイヤホンで聴いていると、早く没入できる効果があると思います。



---------------------------------------------------
 ☆  デジタル単語帳アプリWordHolic
---------------------------------------------------

基本練習のところで書きましたが、クローズドヴォイシング  (過去記事参照) の復習に、最近使い始めたアプリが「WordHolic」です。
Android、iPhone、iPad対応。

紙の単語帳をそのままアプリにしたような、直感的に使える便利なもの。元々は英単語用ですが、コードを覚えるにもぴったりです。
私がクローズドヴォイシングを必死で覚えていたのは去年のことですが、あの頃にこれを使っていれば、多分ずっと楽に覚えられたかもしれません (過去記事にこのアプリについて追記しました)。


おもて、裏、それぞれに文字も写真もコメントも入力出来ます。
私はおもてにコードネーム、裏に鍵盤図の写真を載せています。


おもて面
AE94B175-1F6A-4D08-B0E2-5A2B237A3D5F

裏面
3712980F-FE8B-445F-B916-D4B0C1D258F9

使い方はアナログの単語帳と同じ。タップするとクルッとひっくり返って反対の面になります。
重要なものにはブックマークをつけられ、暗記したものにはチェックを付けられます。

 

アナログの単語帳には、すっぽりと手に収まる感覚があって、触感でページめくりを楽しむのもとても良いものですが、デジタルにはデジタルの良さがあります。
デジタルの良いところは、シャッフルや一覧、条件で抜き出し、などが簡単に出来ること。そして、自動でページめくりするスライドショーモードがあることです。スライドの速度は細かく調節できます。

電車での移動中などにスライドショーを見るだけでも良いですが、スマホをピアノの譜面台に置いて、ランダムな再生順でスライドショーを流して、ピアノでそれを弾いていくエクササイズもオススメです。


なんだかんだ言ってもコードを覚えるのはやっぱり大変なので、ちょっとしたことでその苦労をやわらげて、少しでも楽しく出来たらいいと思います。


では皆さん、どうぞ体調に気をつけてお過ごしください。



---------------------------------------------------

            にほんブログ村 音楽ブログ ジャズピアノへ