私たちは経験的に「権利と義務は表裏一体である」と思うのですが、中には大学の先生や法律の専門家でも「権利と義務は必ずしも表裏一体ではない」と主張する人たちがいるのです。それでは権利と義務は表裏一体なのかどうかを考察してみましょう。

 

まず初めに権利とは如何なる意味でしょうか。権利を検索すれば「ある物事を自分の意志によって自由に行ったり、他人に要求したりすることのできる資格・能力」とあります。権利とはいわば資格であり、能力があるから与えられるものと言えます。

つまり権利とは「能力がありそれをみんなから認められた資格」と言えます。能力もないのに安易に権利、資格を与えてはならないのです。みんなが正当と認めていると言う事は必ず何かの能力があり、その為の義務を果たしているからこそ私たちはそれを権利と認めるのです。つまり何らかの義務を果たさずにそれが正当な権利だと認めてもらう事などないのです。これは原理原則です。そして権利が認められていてもその義務を守らないのであれば時にその権利ははく奪されてしまうのです。

 

また権利とは「みんなが正当と認めたもの」と言えます。つまりそれは「正しい」と言う事です。ですから英語では権利のことを「RIGHT」と言うのです。そして「正しい」と言うためには必ずその確かな根拠を示さなければならないのです。私たちは確かな根拠も示さずにそれを「正しい」と認めることはありません。これもまた原理原則と言えます。つまり正しい(権利)と言うためには必ず正しいと言う正当な根拠を示す義務があるのです。

このように本来、権利には義務が付き物なのです。ですから権利と義務は表裏一体である、と言うのは原理原則に沿っていると言えるのです。

 

 

「権利と義務は必ずしも一体ではない」と言う人たちが主に主張することは「人権は誰でも生まれつき無条件に与えられているのだ、だから人権には義務は伴わないのだ」と言う事でしょう。勿論このような考えは憲法にも記されていますので彼らの言いたいことも分かりますが、その考え方自体が間違っているのです。何故こんな間違ったことが憲法に書いてあるかと言えば「権利と義務、自由と責任」は必ず一体であると言う事がよく分かっていないからなのです。権利と義務、自由と責任が一体であると言う事は原理原則なのです。物事はこの原理原則を根拠として論理的に考えなければ本当に正しい事にはなりません。このことを知識人と言われる人たちでさえよく理解していないのです。

人権は無条件に与えられていて義務は伴わないと言うのであれば、いかなる場合であっても、人権(自由権、平等権、生存権など)は剥奪される事が無いのでしょうか? そんなことはありません。人権は公共の福祉に反するならば尊重されないものなのです。公共の福祉に大きく反すれば死刑となり生存権さえもはく奪されてしまうのです。ですから人権は無条件に与えられていると言うのはいわば建前、綺麗ごとなのです。

 本来、基本的人権と義務の関係は「自分の人権の尊重を主張するのであれば、自分もまた他人の人権を尊重し、他人の人権を侵害しない義務があるのです。これこそが権利と義務との本来の関係なのです。常に権利と義務はギブアンドテイクの関係なのです。

 

また「権利と義務は必ずしも表裏一体ではない」と言う人たちのもう一つの例としては「納税の義務を果たしていなくても投票する権利は与えられるのだ、ゆえに権利と義務は必ずしも表裏一体ではない」と言うものがあります。しかし憲法にある三大義務である納税の義務、教育の義務、勤労の義務などは国民の絶対的な義務ではないのです。国民の本当の義務と言うのは前にも述べたように「自分の人権の尊重を主張するのであれば、自分もまた他人の人権を尊重して他人の人権を侵害しない義務があると言う事です。国民の義務と言うのは他人の人権を侵害してはならない、つまり悪い事をやってはならないと言う義務があるのです。他人の人権を侵害しない義務、これさえ守っていれば私たちには基本的人権は保障されるのです。悪い事をやれば刑務所に入れられて選挙権もはく奪されるのです。逆に悪い事をせず、他人の人権さえ守っていれば選挙権、自由権などの基本的人権は保障されるのです。ですから選挙権と納税の義務などは関係がないのです。

 

しかし選挙権が与えられているならば果たさなければならない本当の義務は別にあるのです。選挙は国政を担う人たちを選ぶ大切なものですから本来ならば日本を良くするような立派な人物を見極める判断能力を養うように日頃から努力する義務があるのです。美人、美男だからとか、タレントだからとか、同級生だから、町の祭りに来てくれたから、とかそんないい加減な理由でもって投票してはならないのです。立派な人を選べる能力、その義務を果たせないいい加減な人たちには本来ならば選挙権を与えてはならないのです。常日頃から政治に関心を持ち「この人ならば」と言う強い責任感を持って投票をしなければならない義務が私たちにはあるのです。これが選挙の権利に対する国民の義務なのです。

権利とは義務を果たす能力があるから与えられるものなのです。ですからこの能力、分別のない子供達にはまだ選挙権は与えられないのです。選挙できる権利を得るには悪い事をやらない義務、そして立派な人材を選べる能力を持つ義務、これらの義務を果たせなければ、本来ならば選挙の権利を主張してはならないのです。

 

このように常に権利と義務は表裏一体であり、権利は無条件に与えられているものではありません。権利と義務、自由と責任は表裏一体であると言う原理原則をしっかり持って物事を考えないと誤ったことを主張することになるのです。ですから皆さん、物事は常に原理原則で考えるように致しましょう。