2024年12月30日月曜日

【読了】伊藤正徳著『連合艦隊の最後 太平洋海戦史』(光人社NF文庫、新装版、2004年4月)

 伊藤正徳(いとうまさのり、1889年10月18日-1962年4月21日)氏による一連の戦記物を読み始めました。敗戦後10年をへた時期(1955年8月)に書き出され、著者晩年の6年間(66~72歳)で一気に書き下ろされた11冊にも及ぶ連作で、学生の頃からいずれ読もうと思っているうちに時が過ぎていました。単行本の初出時期は以下のとおりです。

 1956年03月『連合艦隊の最後』
 1956年12月『大海軍を想う』
 1957年12月『軍閥興亡史 1』
 1958年05月『軍閥興亡史 2』
 1958年12月『軍閥興亡史 3』
 1959年09月『帝国陸軍の最後 第1 侵攻篇』
 1960年04月『帝国陸軍の最後 第2 決戦篇』
 1960年08月『帝国陸軍の最後 第3 死闘篇』
 1961年03月『帝国陸軍の最後 第4 特攻篇』
 1961年10月『帝国陸軍の最後 第5 終末篇』
 1962年06月『連合艦隊の栄光』

 どこから読み始めるべきか迷う中、やはりまずは第一作目と思い、数年前に改めて『連合艦隊の最後 太平洋海戦史』(光人社NF文庫、新装版、2004年4月)を購入していました。しかしいざ読もうとすると、小さすぎる活字が難となり、最初の数ページで挫折していました。

 最近、電子版『連合艦隊の最後』(グーテンベルク21、2022年8月)が出ていることを知り、ちょうど Kindle Unlimited を試そうか思案している時期だったので、一緒にダウンロードしてみたところ、これが大当たり。活字をいくらでも拡大できるので、目に優しく、楽々読み進めることができました。実際読んでみると、若干の美文調でところどころ読み慣れていない熟語が出てきたり、フリガナなしで大量の未知の人物名、地名が頻出するのに困りましたが、読んでいる端末で直接調べ、電子書籍に直接メモ書きできる機能もあって、紙の本なら感じていたであろうストレスが軽減されて、スムーズに読了することができました。

 ざっと調べてみると、紙の書籍としてこれまでに8回ほど再刊されているようです。

 ①伊藤正徳著
  『連合艦隊の最後』
  (文芸春秋新社、1956年3月◇330頁)

 ②伊藤正徳著
  『連合艦隊の最後』
  (ポケット文春571〔文芸春秋〕1968年6月◇261頁)

 ③伊藤正徳著
  『連合艦隊の最後』
  (角川文庫、1974年11月◇338頁)

④⑤伊藤正徳著
  『連合艦隊の最後 付・連合艦隊の栄光』
  (光人社、1980年12月◇366頁)
   ※1990年2月、新装版。

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⑥⑦伊藤正徳著
  『連合艦隊の最後 太平洋海戦史』
  (光人社NF文庫、1993年7月◇367頁)
   ※2004年4月、新装版。

 ⑧伊藤正徳著
  『連合艦隊の最後 新版』
  (光人社、2000年11月◇313頁)

手元には⑤と⑦を置いてあります。グーテンベルク21と比べてみると、言い回しにわずかな違いがあって、恐らく①か②か③を底本にしたことによる差異だと思われます。グーテンベルク21は底本について何ら言及されていないので、今後確認でき次第、こちらに注記しようと思います。

  ***

 さて本書①が1956年3月に刊行される経緯について、伊藤氏は⑦「初版の序」の中に、「敗戦十年を経た八月十五日に、私は試みに、本書の題名で数回の海戦記を書いてみた。ところが、市井の反響は、私の四十年の記者経験中で最大のものを感じ、記者として退き下がることが出来なくなった。遂に、『時事新報』紙上に七十六回、引続き『産経時事』の紙上に四十一回の長篇を書いてしまった。書き続ける以上は、正確な史実に基き、綜合的に、解説と批判とを織り交ぜて、一つの描写を試みようと思い立った。いわば連合艦隊の伝記の終末篇を書くようなものだ」とありました(⑦の3・4頁。下線はブログ引用者による)

 今回、『時事新報』76回と『産経時事』41回(計117回)の初出に当たってみたいと思いましたが、戦後複雑に統廃合を重ねた各社新聞の情報がわかっていないと原本の情報にたどりつくのは意外に難しいことがわかり、断念。直接、東京の国立国会図書館に通って、マイクロフィルムをていねいに調べる必要があるようです。

 代わりに単行本の章立てと採録の節数を掲げておきます。

  第一章 艦隊成るまで  【8節】
  第二章 真珠湾の回想  【5節】13
  第三章 順風満帆の緒戦 【4節】17
  第四章 ミッドウェー海戦【5節】22
  第五章 ソロモン消耗戦 【10節】32
  第六章 マリアナ海戦  【8節】40
  第七章 レイテ海戦   【31節】71
  第八章 二つの特攻作戦 【9節】80
  第九章 結論(その一) 【8節】88
  第十章 結論(その二) 【6節】94

うまく117節となっていることを期待しましたが、単行本にまとめるうえである程度整理されているようです。もともと新聞の読者を意識して書かれていたからか、1話ごとにそれなりに読ませる内容になっていて、毎日数話ずつ読み進めているうちに、全話読み終えていました。

とりあえずもう1冊、『大海軍を想う』を読んでから、先に読んでいた世界の歴史にもどる予定です。

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