発表者:新潟大学 小林 聡子氏
日本ヴィクトリア朝文化研究学会
第21回大会
2021年11月20日 10:00-11:50
本日は日本ヴィクトリア朝文化研究会の大会に
zoomで出席しました。
表題の発表が一番興味があった内容でしたが、
期待通り大変面白かったです。
テニスンの詩、「シャロットの姫」(The Lady of Shalott)を
題材にしたウォーターハウスの三作品に見られる
女性観についての研究でした。
まず驚いたのはウォーターハウスの作品制作の特徴として
物語の時間軸を逆から描いていく手法でした。
発表ではヴィクトリア&アルバート博物館が
所蔵している構想スケッチから
ウォーターハウスの試行錯誤を紹介していました。
主に三作目に焦点を当ててウォーターハウスの
描いたシャロットの姫における
多様な女性像が明らかにされました。
纏められている髪は女性の貞淑性を示すと同時に、
そして後の官能性の目覚めを示唆しているそうです。
伸びをした退屈そうな様子は
現状への不満を表しているようです。
また胸部を強調するポーズからは官能的に映るとありました
衣服の赤色は姫の存在感を主張していると
解釈されていました。
1人の女性から見える女性像のゆらぎは
ヴィクトリア朝当時の女性の多様さと
連動しているとありました。
当時の社会の女性観からの影響を読み解いていました。
「家庭の天使」に代表される貞淑さや
「新しい女」や女性参政権運動者などの革新さや官能性、
ヴィクトリア朝の女性観の変化がウォーターハウスの
シャロットの姫に見受けられるとの論じていました。
衣服の赤を合理服運動やエスティックドレスの流れで
論じる点が個人的には斬新で驚きました。
私はシャロットの姫に使用されている赤やピンクが
官能的な女性性を感じさせると思っていましたので、
それを「新しい女」などの女性の力強さを示しているという
主張が興味深かったです。
素晴らしい発表を聞けて非常に満足しました。