著:マヌエル・プイグ(Manuel Puig)

訳:野谷 文昭

 

Originally published in 1976

2011年5月25日 改訂新版第1刷発行

株式会社集英社

堺市立図書館より貸出

 

読書会の課題本です。

 

 

舞台や映画などメディア化もしています。

社会主義で革命思想を持つバレンティンと

同性愛者、正確にはMtFの

トランスジェンダーのモリーナが

囚人として共に監獄されます。

モリーナがバレンティンに映画の筋を

語って聞かせる所から物語は始まります。

この閉鎖された空間で二人の間に

一種の恋愛関係が生じます。

会話劇だけで成立している小説です。

非常に面白く一気に読めました。

 

2人が性交渉をした後の会話で

モリーナが

"自分がいないみたいな気がしたのよ、

あなたしかいないみたいな"

 

"でなきゃ自分が自分でないみたいな。

いま自分はあなたになったって

感じだったわ。”(p.337)

と述べたシーンが

「君の名前で僕を呼んで」を彷彿させました。

状況は異なれど同性愛者の情愛を描いている作品で

自分と相手の一体化に焦点を当てています。

 

既存の異性愛ではなくクイアな恋愛関係が

「蜘蛛女のキス」では描かれています。

モリーナの性自認や

バレンティンがどのようにモリーナの

セクシュアリティを認識するかを含めて

クイア小説としても興味深い作品です。