著:宮口幸治


2019年7月20日 発行

2019年9月15日 7刷

株式会社新潮社

堺市立図書館より貸出


続編を読む前に再読しました。

境界知能などのハンディを負った子どもに脚光が当たるきっかけになった本です。

発達障害については知られてきましたが知的障害者が抱える生きづらさやそれが適切に対処されないことで加害者になってしまう危険性を明らかにしています。

例えば認知力の1つ、想像力が弱く未来像が描けないので目標が立てられない、そのため目標がないと努力できない、結果として努力しないことで成功体験や達成感が得られない。すると自信がなく自己肯定感が持てないし他人の努力も理解できないという負のスパイラルに陥ってしまいます。(p.54-55)

自己肯定感を持たせるために褒めることが推奨されます。しかし褒めるだけでは根本的な解決に繋がりません。(p.123)

著者は自尊心が低いことが問題ではなく自尊感情が実情と乖離していることを問題視しています。(p.125)


またその対策として認知能力を向上させるコグトレを本書は提唱します。

著者は努力して課題を達成するプロセスから適切な自己評価が行えるようになると述べます。また人の役に立つことで自己評価の向上に繋がりやる気を持てる可能性を示唆します。


私は塾講師になってから発達障害や知的障害を抱える生徒さん、また境界知能と思われる生徒さんを見てきました。 塾講師として本書で挙げられている褒めることに注力するや頑張らなくていいと言うなどの現在の教育の問題点に共感します。各個人の能力や適性に基づいた目標を持たせ、それに向かって努力することが重要だと思っています。