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仏教ライフを考える西原祐治のブログです

一億総中流が成り立っていた理由

2023年06月03日 | 現代の病理
『君はなぜ、苦しいのか-人生を切り拓く、本当の社会学』(2023/3/8・石井光太著)、図書館の新刊案内にあった本です。

本の紹介には次のようにあります。


日本の子供が感じている幸福度が、先進国38カ国のうち37位。子供のうち7人に1人が貧困、15人に1人がヤングケアラー、児童虐待の相談件数は年間20万件、小中学生の不登校は24万人以上、ネット依存の子供が100万人を突破……。
子供たちを覆う息苦しさの正体とはいったい何なのか。
貧困と格差をどう乗り越えるか、虐待する親からどうやって逃げるか、いじめはなぜなくならないか、マイノリティーといかに向き合うか……。子供が直面している困難の正体を見極めたうえで、マイナスをプラスに変える処方箋を提案する。(以上)

第一章は「君たちはどんな社会に生きているのか」から始まります。その中に「かつて、一億総中流が成り立っていた理由」に次の様にあります。以下転載です。

当時の給与体系は年功序列だったが、終身雇用制と年金のお陰で老後の人生まで保障されていた。
 他方、個人商店を中心とした旧来型の社会システムにも、働く側にとってそれなりのメリットがあった。具体的に挙げれば次のようなものだ。

・家族や知人が経営者なので、社会に適応しづらい人も安心して働けた。
・人間関係のつながりが強く、仕事上の競争が激しくなかった。
・ツケや配送など客に個人的な融通を利かせることができた。
・周りがみんな肉親や知人なので孤立の予防につながった。

世の中には、生まれつき気が弱い人や心身の病気を抱えている人など、他者と競い合って自立を実現するのが困難な人が少なからずいる。旧来の社会システムの中には、そういう人たちの社会参加を助ける装置が倔わっていたのだ。

そう考えてみると、新しい社会システムは、それまで個人商店という環境の中で社会の一員として働いていた人々をふるいにかけたと言える。その結果、少なくない人たちが社会の中で居場所を失い、生活の糧を得る手段を失うことになった。
 彼らが自力で稼いで食べていくことができなくなったらどうなるのか。生活保護など公的資金による支援が必要になるだろう。現状では社会で生きる力がないと判断され、「社会的弱者」として生きていくのだ。

 これを示すのが図(1‐2)だ。わずか20年の間に知的障害者の数が大幅に増加しているのがわかるだろう。(*1995年297.000人→2016年962.000人)
 知的障害者の生まれる率は時代によってそこまで大差がないであろうことを踏まえれば、以前は障害だと見なされていなかった人々が、社会で生きることに難しさを感じるようになり、福祉につながった一面があるのだ。
このように見ていくと、旧来型の社会システムの中では自立した納税者として生きてこられた人たちが、新しい社会システムの中ではこぼれ落ちて社会的弱者とされ、福祉の助けなしでは生活できなくなっていくプロセスが見えてくるのではないだろうか。
 ここから言えるのは、社会的弱者とは社会構造がっくり出した存在であるということだ。(以上)
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