※ 週刊東洋経済「依頼したい弁護士25人」(労働法)

※ 司法試験考査委員(労働法)

※ YouTubeで3分解説!

https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK

 

今日の労働判例

不二タクシー事件】(東京地判R3.3.26労判1254.75)

 

 この事案は、タクシー会社Yに勤務する運転手Xが、親の介護などの事情で、指定された出庫・帰庫時間を守らないことが多く、14日の出勤停止処分を受けたこと等について、これを違法と争った事案です。

 裁判所は、Yの処分を無効として、Xの損害賠償請求の一部を認容しました。ここでは、特に懲戒処分の有効性について検討します。

 

1.実務上のポイント

 懲戒処分の有効性については、懲戒事由が事前に定められていて、それに該当する事実が存在することだけでなく、非違行為に対する処分が合理的であることが必要です。重すぎる処分は無効となります。

 この処分の合理性は、会社業務への影響の程度や本人の責任の重さなどの非違行為の程度だけでなく、他の事例や先例との均衡なども考慮されます。

 本事案では、出庫・帰庫時間の不遵守への処分事例が少なかったからなのか、先例との比較はあまり行われていませんが、同じ時期に、駐車違反などの交通法規違反で処分された他の運転手などと比較して、処分が重すぎる、と評価しています。

 さらに、交通法規違反が多くなれば、タクシー会社としてYが行政上の不利益を受ける危険があったけれども、Xの行為にはそのようなYの経営に悪影響を与える可能性は極めて小さい、と認定されています。

 このように、懲戒処分の有効性について、一般的によく示される評価要素を中心に検討され、その有効性が判断されました。懲戒処分の重さについて判断に悩む場合が多くありますが、他の従業員との対比や会社業務への影響など、どのような事情がどのように評価されるのかを見極める際の参考になります。

 

※ JILA・社労士の研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。

https://note.com/16361341/m/mf0225ec7f6d7

https://note.com/16361341/m/m28c807e702c9

 

※ この連載が、書籍になりました!しかも、『労働判例』の出版元から!