※ 週刊東洋経済「依頼したい弁護士25人」(労働法)

※ 司法試験考査委員(労働法)

※ YouTubeで3分解説!

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今日の労働判例

【国立大学法人東北大学(雇止め)事件】(仙台地判R4.6.27労判1270.14)

 

 この事案は、大学職員の業務を通算8年間行った従業員Xが、大学Yによる更新拒絶を無効として争った事案です。裁判所は、Xの請求を否定しました。

 

1.更新の期待

 裁判所は、労契法19条に関し、1号2号いずれにも該当しないと評価し、更新拒絶を有効としましたが、特に注目されるのは、2号該当性に関して指摘された、更新回数と通算期間です。

 すなわち、通算期間が8年であることだけを見れば、無期転換(労契法18条)が認められる5年を超えていますので、更新の期待が当然に認められるようにも見えるのに、なぜ更新の期待が否定されたのかが問題になるのです。

 この点、途中で、給与ではなく業務量に応じた謝金を受け取る内容の業務に従事していた時期(この時期の勤務時間は他の時期と異なり週30時間よりも相当に短く、社会保険等にも加入していない)があり、それによって雇用継続が中断していたと見ることもでき、このことが更新の期待を否定するポイントであるようにも見えます。

 けれども、裁判所は、このような中断があったことをそれほど重視していません。重視しているのは、業務の内容や給与が、年度によって大きく異なった点です。すなわち、①時給2100円で「キャンパス・コミュニティの製作業務」をしていた時期、②時給1172円で「技術補佐員」として研究プロジェクトに関する業務に限定して行っていた時期、③時給1172円で「キャンパス・コミュニティのメンテナンス業務及びICTルームのパソコン管理業務」に、上記のとおり謝金を受け取る形態で関わっていた時期、④時給1172円で「事務補佐員」として研究資料の収集、複写、正本、配布資料の作成補助等の補助的な業務に関わっていた時期、がありました。裁判所は、このような多様な勤務形態に着目し、更新の期待の判断に際し、単純に期間を通算することはできない、と判断したのです。

 通算した勤務期間の長さが、多くの場合大きな要素として重視されますが、その勤務態様から勤務期間が長くても更新の期待が否定される場合があり、その具体例として参考になります。特にこの判決からは、勤務の内容や条件などの具体的な内容を重視している点がポイントになるでしょう。

 

2.実務上のポイント

 5年を上限とする規定を設け、途中に雇用契約とは違う形態の契約を挟めば、それで更新の期待が否定される、という単純なものでないことが示されました。更新拒絶に関するトラブルを回避するためには、更新の期待を抱かせるような運用がなされているかどうか、という実態を慎重に検討することが必要です。

 

※ JILA・社労士の研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。

https://note.com/16361341/m/mf0225ec7f6d7

https://note.com/16361341/m/m28c807e702c9

 

※ この連載が、書籍になりました!しかも、『労働判例』の出版元から!