私は生まれつきゲイだったのか、未だにわからない。
ピンクレディーやスケバン刑事は好きなのに、女の子のスカートはめくってたし、吉原炎上や女子プロレスまで大好きなのに、女の子にラブレターは書いたことあるし、田原俊彦や真田広之ではなく、桃井かおりや夏木マリに憧れたのに、女の子とSEXしたこともある。
日本舞踊をしていたということもあり、幼少期には女の子ぽいと言われることもあったし、上に挙げたようにオカマになる要素は満タンなのに、一般の殿方のように女性に対して性的興奮は確かに存在した。

それが中学に入る頃からだろうか。
女子はかわいい。男子はカッコイイ。どちらも「普通」に性的に見るようになっていた。世の中の男子は皆、私と同じように感じているものだと思っていたのだ。女子のうなじを見れば唾を飲み込んだし、男子の太ももを見ればゾクゾクした。どちらに落ちるかわからない、繊細な思春期の性の綱渡りを始めた時、彼は現れた。

M田先生

20代後半。身長は180以上あり、モデルのようなスタイルでバスケの顧問だった。髪はサラサラ。笑うと歯がとてもきれいで、吉田栄作に雰囲気が似ている。
(↓この俳優さんな)


沖縄という島国でまだ10数年しか生きていないチョコザイな私は、初めて見る「ガチイケメン」という生き物に心から驚き、戸惑い、高鳴り、ショックを覚えた。
しかも。しかもだ。その生き物が中学1年の私の担任になるというではないか。
ぶっちゃけ、バチクソあがった。
あの日は、毎週木曜夜7:30から始まるスケバン刑事の最終回が始まる直前の7:28頃のドキドキを見事に越えてた気がする。私のハートがニューレコード。
きっと素敵な中学生活を送れるに違いない。そうときめいていた。



しかし彼は暴力教師だった。


私の母校は、当時は荒れ果てていると有名な中学校で、ヤンキーではない生徒の方が少なかった。今思えば、ソレに対抗できる人材として彼を校長は呼び込んだのではないだろうか。
ヤクザの息子で有名な、番長格のY田も泣いて土下座をするほどの恐ろしさ。
今の時代では絶対に考えられないだろうが、女子だろうが関係なく、態度が悪かったりすると石でできた床に一本背負いするんだから全校生徒が彼に震え上がった。
密かに彼の姿にドキがムネムネしている私も、もちろん例外ではなかった。
煙草が見つかればトイレで膝蹴りを喰らい、博打がバレれば竹刀でみぞおちを突かれた。
私ではないが、イジメが発覚した際には彼の怒りは凄まじく、加害者側の生徒を指導室へ呼び出し、ブラインドを閉めてフルボッコにするんだからもう、ヤクザだ。

そんな恐怖の大魔王でもイケメンはイケメン。思春期の私の中にいる性なる魔王は、彼の大魔王という風格に屈することはなかった。そのおかげで私はとんでもない血祭りにあげられることとなる。

ある日、彼に呼び出された。
また何かしでかしたっけな?煙草がまたバレたか!?
恐怖に慄きながらも、彼に呼ばれて一対一になる悦びを噛みしめながら指導室へ行くと彼が微笑みながら招き入れてくれた。あんっやっぱかわいい。
話を聞くと、どうしても私にバスケ部に入ってほしいとのこと。学年で長身な方だし、何より足の指が長いのはとてもバスケに向いているのだそうだ。

私の足の指先まで見てくれているなんて…

しかし私はバスケには1ミリも興味がなかった。ので、「入りません」「そこをなんとか入ってくれ」の押問答になった。(じゃあ交換条件でセフレになんて言えるわけがない)
私の全く興味なさげな顔を見て、彼は最終手段に出た。
「ナイキのバッシュを買ってやる」
私の学生時代はバスケットシューズを履いていれば一流のオシャレさんで、貧乏育ちの私には無縁の存在だったので、その一撃にまんまとやられ、首を縦に振ってしまった。
翌日、彼は約束のブツを持ってきた。後悔先に立たず。私はバスケ部に入部することになった。

しかし今も昔も変わらず、私はチームプレイというものに心が動かない。自分勝手に動きたいし、他人にも気を使ったりで疲れるし、かなりの苦手分野だ。
入部初日はまず見学。

…ねぇ すげーやりたくねーんですけど

その言葉ばかりが脳裏を走っていた。なので私はその初日以来、バスケ部には顔を出さなくなった。貰い逃げ&サボり逃げである。
意外にも彼は私を呼び出すなどといったことはせず、バッシュを返せとも言わなかった。
ラッキーと思っていたがしかし、明らかに彼は今までより私に対してのあたりが強くなった。
私も懲りずにまた煙草がバレてボコられ、授業中に私語をすれば張り手をくらい、私を含む要注意な生徒はクラスの1番前に座らされた。

それが最高で最低な日々の始まりだった。

彼はいつも白いTシャツにピッチリしたジャージを履いており、私は1番前に座っているので彼の足の長さも手伝って、私の目の前には常に彼の股間があることになる。もちろん私の目線は彼の股間へ釘付けだった。
朝会ともなると、彼もまだ20代なのでイロイロとお元気。ピッチリしたジャージに露骨に浮き出るパンパンな彼の大魔王が、私の毎日の楽しみになった。
Life is beautiful
こんなに朝が待ち遠しくなるなんて誰が予想しただろう。
彼の大魔王がピンコ勃ちで上向きな朝は、私の1日のテンションも高くなり、逆に彼のがふにゃっとしょぼくれている日は私もテンション低め。
彼の大魔王の向きが私の1日のボルテージの矢印のようだった。


悪魔の朝。
いつものように私は、口を半開きで彼の股間へ釘付け。無我夢中とはこのことだ。しかしそこへ彼が何やら質問?話しかけてきたらしい。
我に帰ったが、私は何も聞いていなかったので「聞いてませんでした」そう正直に言うと、クラス全員の前で彼はどんどん不機嫌な目つきになっていった。

やばい…今日機嫌悪いぞ…こわい…しかしどうやって立て直せばいいんだ?わからない…あ、そうだ!とりあえず何かユーモアなことを言えば治まりつくかもしれない!彼も笑って通り過ぎるさ!あはは
そこで私は笑顔で指をさしてこう言った。


「先生、ちんちんたってますよ笑」


…愚かだ。あまりに愚かすぎた。私は完全にバグッていた。
一瞬笑うが2秒後に凍りつくクラス全員。
中学生とはいえ、40人の生徒の前で朝勃ちを晒された彼の方から

ブッッチン

と何か切れる音がした?
と、思った頃には私はもう座っていた席から石の床に吹っ飛んでいた。
「おまえなめてんのかコラ」
そう言いながら、床から起き上がろうとする私を殴り、蹴り、私はその度に床の同じ場所へ舞い戻り、黒かった学ランは床の土埃で白茶色くなっていった。
とどめに耳を掴まれ起こされ、彼の得意技一本背負い!

ぱっちーーーーん(私が受け身をとって手で床を叩く音)

床に寝そべった、青タンのできた私の目はそれでも彼の股間を確認していた。彼の大魔王はもう萎んでいた。


今思うと、あの頃の私は彼の拳をも、プレイだと思っていたのかもしれない。とりあえず殴られ好きなドMにならなくてよかった。私はマトモです。


そんな彼が夢に出てきた。内容は覚えてないが、夢の中では彼は年をとらず、爽やかでイケメンのままだった。相変わらずピッチリしたジャージを履いていた。
寝起きの煙草を吸いながら、彼と中学生時代を思い出していたら今の彼を知りたくなったので、見なけりゃいいのに検索かけて調べてみた。
なかなか見つからない。諦めようとしたら1枚だけ画像を発見した。

そりゃあそうだ。あれから30年も経っているんだから、彼ももう60近い。爽やかな片鱗もなかったが、すぐに彼だとわかった。彼は校長先生になっていた。
暴力はNGだけど、アレのおかげで悪い道に行かなかったとも思うし、目上の人は脅威な部分がなければ下はなめてかかるし人間的に成長しない。躾けるという内面的なことを教わった気がする。

彼に恋はしていない。だが私がゲイとして生きる要素のひとつになっていることは確かだ。
私はゲイとしてひとつも恥じてはいない。必要な時が来るならば「私はゲイです」と胸をはって言える。
なので、彼にはひとつのきっかけになってくれて感謝している。ありがとうございました。
私と違う世界でどうぞお幸せに長生きされますように。