誰もが1度は観たことがある映画、サウンド・オブ・ミュージックを英語の学習にあてようと思います。

さて、男爵夫人の発案で盛大なパーティが催されます。

招待客の1人、ゼラー氏は、玄関で大佐と夫人にあいさつした後、部屋の中央に進み、2階バルコニーから掲げられているオーストリア国旗を咎めるように見つめます。それから、知り合いの男性客に次のように話しかけます。

I suppose you noticed the obvious display of the Austrian flag?

「これ見よがしにオーストリア国旗が掲揚されていたのに気づかれたことでしょうな」

(なお、DVDの英語字幕は、いつも正確なセリフを反映しているとは限りませんので注意が必要です。)

大広間からつながるサイドテラスに、子供たちが集まっています。

大人の社交場を興味津々と眺め、ダンスに興味を示しています。

次男のクルツがダンスを教えてくれとマリアに懇願して、2人は踊り始めます。もちろんクルツはうまく踊れません。

それを見て、大佐が近づきます。

あくまで紳士としてふるまう大佐は、クルツに次のように話しかけます。

Do allow me, will you?

「代わっていただけますか」

初めは軽やかなステップで踊っていた2人。マリアが大佐のまわりを回る、大佐が手を叩く。

マリアがとまると大佐が回ります。

そのとき、男爵夫人が遠くから2人の踊る姿をじっと眺めていました。

2人は再び踊り始めてから、お互いの目を見つめ合います。

しばらく沈黙が続いた後、マリアは、もうこれ以上覚えていないと言って後ずさりして、大佐から離れるのでした。

そこに男爵夫人が近寄ってきて、2人に話しかけます。

Why, that was beautifully done. What a lovely couple you make!

この Why は、おやまぁ、という感嘆の言葉です。

「おやまあ、お上手ですこと。素敵なカップル、息もぴったり合っているわ」(中あな流翻訳)という感じでしょうか。

大佐が思いついたように言います。

Yes. I think it’s time the children said good night.

「そうそう、もうそろそろ子供たちがおやすみを言う時間だ。」

この it’s time that S + V(過去形)の表現に要注意です。

なぜ that 節の動詞が said と過去形になっているのでしょうか。(なお、この会話では、that は省略されています。)

その理由は、これが仮定法過去の用法を使った表現だからです。

つまり、ここでは、「おやすみを言う時間が来ていたのに、まだそれをしていなかった」ことを言っているのです。つまりおやすみを言ってないという現実に対して、そうすべきだったのにという意味合いを込めているわけです。

そこで我に返ったように、マリアは、子供たちに声をかけて、招待客へのお別れのあいさつに向かわせます。

そこで歌われるのが次の曲、So Long, Farewell です。

この曲の歌詞で繰り返されるフレーズが次です。

So long, farewell
Auf Wiedersehen, good night

♬さようなら、ごきげんよう
また会いましょう(ドイツ語のさよなら)、おやすみなさい♪

子供たちの可愛らしい歌と踊りに招待客はすっかり魅了されます。

子供たちが部屋に上がった後、招待客の1人である男爵が、その場にいる人たちに次のように語ります。

Is there a more beautiful expression of what is good in this country of ours than innocent voices of our children?

「我が国の良さを表現するのに、あの純粋な子供たちの歌声以上に美しいものがあるだろうか」

この発言を小耳に挟んだ、先ほどの紳士、ゼラー氏が次のように口を挟みます。

Oh, come on, Baron, would you have us believe that Austria alone holds a monopoly on virtue?

さて、今回はこの文章をどう翻訳したら良いかを考えてください。








はい、言いますよ。

翻訳の一例は次の通りです。

「おやおや、男爵、善いことはオーストリアだけが独り占めしていると我々に思い込ませようというおつもりですかな」(中あな流翻訳)

この後、大佐が加わり、ゼラー氏との間に見えない火花が散り始めます。

Captain: Herr Zeller, some of us prefer Austrian voices raised in song to ugly German threats.

大佐:ゼラーさん、おぞましいドイツの脅しよりもオーストリアの歌の方が好きな人もいるのですよ。

Zeller: The ostrich buries his head in the sand…
…and sometimes in the flag. Perhaps those who would warn you that the Anschfuss is coming and it is coming, Captain, perhaps they would get further with you by setting their world to music.

さあ、ここの翻訳は一気に片付けてしまいます。

「ダチョウは砂の中に頭を突っ込んでやり過ごすのですな。時には、旗の中にでも。もしかして、人々が警告するかもしれませんな。オーストリア併合が近いと、大佐殿。もしかすると、貴方は彼らが演奏する音楽を聴かなければならないですぞ」(中あな流翻訳)

ダチョウ(ostrich)は、オーストリアのことを指しています。

また、Anschfuss というドイツ語が使われていますが、これはナチスドイツによるオーストリア併合のことを意味しています。

さらに2人の舌戦が繰り広げられます。

Captain: If the Nazis take over Austria, I have no doubt, Herr Zeller, you will be the entire trumpet.

「もしナチスがオーストリアを併合するなら、間違いなく、ゼラーさん、貴方は、進軍ラッパ吹きということになりましょうよ」

Zeller: You flatter me, Captain.

「それはうれしいことを言ってくださる、大佐殿」

Captain: Oh, how clumsy of me. I meant to accuse you.

「おお、なんと気が利かない奴だ、私は。こき下ろそうというつもりだったのに」

さあ、物語は、いよいよ佳境を迎えようとしていますが、歴史的背景として、1938年3月に行われたナチスドイツによるオーストリア併合が近づいており、その影がトラップ大佐の家族と、やがてはマリアにも訪れようとしていることを知らなければなりません。

次回につづきます。

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