最近、ネットのコメントやSNSのリプライの内容や表現に関する規制や罰則、削除基準などが厳しくなりつつある。

ネット上の誹謗中傷が原因で命を絶ってしまう人や心身を病んでしまう人もいる以上、規制を求める声がある程度大きくなるのは致し方ないが、「本人が傷ついたら、すべて誹謗中傷」、「匿名で他人を中傷するのはSNSの弊害」という昨今の風潮には承服しかねる。

TVをはじめ脳内のアップデートが遅れ気味の連中に限って、「ネットやSNSの体たらくを見るにつけ、日本人のモラル低下を認識せざるを得ない」と偉そうに嘯くものだ。

しかし、そういう教科書チックな認識はまったく間違っている。

ネットやSNSに転がる、一見中傷や憎悪、悪口にしか見えないコメントやリプは、すべて市井の人々の素直な本音や本心であり、不平不満であって、それ以外の何物でもない。
そして、そうした本音や本心は、ネット社会の普及とともに急激に膨張したわけではなく、日本人が社会的生物として活動を始めた有史以来、脈々と存在し続けてきたものだ。

ネットによる双方向的情報社会が出現する以前は、自分の心に溜め込んだ社会や他人の行動に対する本音や不平不満の数々は、せいぜい、親兄弟や友人、飲み仲間に対して、世間話や井戸端会議、飲み会の場で発露するしかなかったが、ネットやSNSという情報媒体が整備されたことにより、自分の本音ややるかたない不平不満を相手にリアルタイムでぶつけることができるようになった、というだけに過ぎない。

つまり、受け取る側に取って見たくも聞きたくもない他者からの意見や不平不満という存在自体は、太古の昔から個々人の脳内や心の中に厳然と存在していたものであり、それを強制的に見せつけられる、ある意味自由で、ある意味不自由な社会になったということなのだ。

他社の意見や本音、不満をぶつけられることは、批判される立場の人間にとって不快極まりなく不都合なことだろうが、自分がいくら嫌悪しても、相手の思想や脳内に手を突っ込んで変えたり消したりすることが絶対にできない。

以前のエントリーでも採り上げたことがあるが、筆者は、ネットやSNSのコメントやリプに対して過度な規制や罰則を科すことに断固として反対する。
それは思想警察を擁護し、思想や表現の自由という民主社会の根幹を冒涜するに等しい愚行であり、絶対にやってはならない。

そもそも、ネット上の表現規制に御熱心なのは、TV/新聞・雑誌などのオールドメディア、功成り名を遂げた芸能人や著名人、自己顕示欲に塗れ賛同や称賛の声以外聞きたくないメガインフルエンサー、発言の矛盾を突かれて狼狽する左翼界隈 (LGBT・ツイフェミ・ヴィーガンなど)みたいな如何わしい連中ばかりで、日ごろは言論の自由や表現の自由を声高に叫ぶくせに、自分の発言や投稿が攻撃されるや否や、他者の言論の自由を真っ先に封じ、その思想の自由まで奪おうとする。

ネットやSNSという空間は、面と向かって罵り合いや殴り合いをするわけじゃないんだから、いくら気に喰わないコメやリプがあったとしても、相手の脳内にまで手を突っ込み、訴訟をちらつかせて脅迫しまがいの恫喝をするなど、まともな大人のやることではあるまい。

誹謗中傷してくる相手に対しては、
①コメやリプを削除する
②相手をブロックする
③反論する
④無視する
⑤SNSから足を洗う
と対処する方法はいくらでもある。

言葉で殴られたら言葉で殴り返せばよいだけのことなのに、それができない豆腐メンタルな輩が、法や行政を総動員して相手の言論や思想の自由を剥奪しようとするのは、民主国家の土台に大きな穴をあけようとする暴挙でしかない。

何度でも言うが、言葉で殴られたら言葉で殴り返せばよい。
気に喰わない相手や意見があっても、互いに飽きるまで、拳ではなく言葉の応酬で殴り合えばよいだけだ。

ネットやSNSは、市井の人々が本音を気軽に吐露でき、政治家であれ著名人であれ有名人であれ、ダイレクトかつスピーディーに自分の意見をぶつけることができる非常に有意なコミュニティ媒体なんだから、そのストロングポイントをわざわざ潰しに行くようなバカな真似をすべきではない。

『採用前に企業が就活生の「裏アカ」調査、たった数十分で特定も 過激投稿の“無法地帯”を見て人格把握』
https://news.yahoo.co.jp/articles/801a3b25f57e37526df7339967c77134597018de?page=1
「就職活動中の学生によるSNSへの投稿を、企業が採用時に活用しようと調査する動きが広がっている。特に注目されているのが、学生が本名で作っているアカウントとは異なる、匿名の別アカウントだ。通称「裏アカ」と呼ばれ、悪口や本音など、実名では書きづらい内容をあけすけに投稿しているケースが多い。調査会社は、本名のアカウントに掲載されている情報などを手掛かりに、早ければ数十分で学生の裏アカを特定することもある。(略)
 東京都千代田区にある雑居ビルの一角。SNS調査などを手がける民間会社「企業調査センター」のスタッフが黙々とパソコンに向かっている。調査対象の学生のアカウントを割り出し、投稿内容をチェックする作業だ。(略)
 実際に見せてもらった作業の手順はこうだ。(1)依頼先の企業から、この会社に就活生の履歴書情報が送られてくる。(2)スタッフは、ツイッターやインスタグラムの検索機能を使い、履歴書に記載されている名前や誕生日を入力。次第に本人のアカウントを絞り込んでいく―。
 例えば、出身高校は野球が盛んだと分かれば、甲子園に出場した経験がある学年の学生のアカウントを調べ、そこから同級生伝いに特定していくこともあるという。
 さらに、アカウント名を推測しながら検索を進めていき、20分ほどで当該の就活生らしきアカウントを発見した。(略)」

就活生の裏アカまで調査するなんて、正直言って悍ましいというしかない。
まさに思想弾圧とも言える検閲行為で、明らかに越権行為や脱法行為の類いと言える。

記事の後半では、
「一方で、こうした調査には危うさもある。他人に知られたくない本音を投稿したアカウントを調べることで、学生の出自や思想信条を把握する可能性があるためだ。利用の仕方によっては、就職差別につながりかねない。」
「職業安定法は採用活動で人種、思想信条などの個人情報の収集を原則、認めておらず、収集する場合は同意が条件だ。厚生労働省も配慮すべき事項として身元調査を挙げ「就職差別につながる恐れがある」と指摘している。厚労省担当者はSNS調査について「一概には言えない」と前置きしつつ、思想信条などの個人情報を収集する恐れが高い点を挙げ「好ましくない」との見解を示している。」
「「企業側もSNS情報で不採用にしたとは言わず、調査したこと自体開示する必要はないので、企業側がどういう理由で不採用にしたかが学生には分からず、ブラックボックスになっている」と分析する。」
といった批判や危惧を紹介されているが、企業が就活生の良心や思想信条にまで踏み込んで調査するなんて明らかに行き過ぎており、人権侵害にも等しい暴挙だろう。

最近の就活事情は昭和・平成期とは大きく異なり採用側のNGワードも広がっており、次の11項目を尋ねるのは禁句とされている。
1. 本籍・出生地に関すること
2. 家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)
3. 住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
4. 生活環境・家庭環境などに関すること
5. 宗教に関すること
6. 支持政党に関すること
7. 人生観、生活信条に関すること
8. 尊敬する人物に関すること
9. 思想に関すること
10. 労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
11. 購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること

ゆえに、就活生の裏アカをコソコソ調査するのは明らかに上記のほぼすべての項目に触れる違法行為でしかない。

そもそも、社会経験の乏しい若輩者の思想信条を把握したところで意味がない。
そんなものはこれから社会経験を重ねていく過程でいくらでも変化するし、新入社員が一人でギャーギャー騒いだくらいで会社という組織の鏨はビクともしない。

新卒社員がSNS投稿で何かやらかして失敗したとしても、「弊社は社員個々人の思想信条の自由を尊重しており、業務外で為したSNS発信などの行為に対して、何ら束縛も責任を取る立場にありません」と木で鼻を括ったような態度で放置しておけばよいだけの話だ。

第一、ネットやSNSでやらかすのは新卒社員だけではあるまい。
社長や役員、管理職、ベテラン社員がSNSの投稿で炎上した例など枚挙に暇がないし、まずはお前の会社にいる就活生に性行為や性接待を強要する下賤な就活担当者を粛清しておけ!ときつく叱り飛ばしておく。