政府や財務省は「世論を小さな問題や論点に誘導して大きな問題から目を逸らさせる」という手法をよく使います。
これは案外効果的なやり方で、昨今の防衛増税や少子化対策増税に向けた世論誘導でも大活躍しています。

増税緊縮脳の巣窟と化した政府、与党、財務省界隈は、
①積極財政策や財政支出増加の流れは必ず阻止する
②減税や社保負担軽減の世論醸成は絶対に潰す
③最後は増税や歳出削減(予算付け替え)の方針に誘導する
という“大命題”を掲げ、それを絶対不可侵の聖域化し、神聖な場所を侵そうとする愚か者が出現しないよう必死に世論誘導を図っています。

彼らは「えっ、消費税減税だって?お前、そんなこと本気で言ってんの?お前みたいなナマケモノは次世代に膨大な借金を残す穀潰潰しやっ!いまどき減税なんて甘えたこと抜かすバカは一人もおらんでっ!いま議論すべきは児童手当の所得制限を撤廃すべきか否かなんや!」と畳みかけ、論点を矮小化し、できるだけ卑近で小さな議論に持って行こうとしていますよね。

こうした世論の意図的な誤誘導に対して国民も異を唱えるべきですが、ほとんどの国民は政治や経済に無関心かつ怠惰なものですから、幼稚な議論誘導にまんまと引っ掛かり、減税とか社会保険料負担の軽減といった超重要課題を議論しようともせずに、小さな論点やどうでもよい議論に目を奪われ、喧々諤々と生産性のない議論に時間を費やされるのが関の山です。

『児童手当の所得制限「継続すべき」56%、「廃止すべき」33% JNN世論調査』
https://news.yahoo.co.jp/articles/472de7e80b33e196021a5769d16fbafc7b44be37
「政府は少子化対策の一環として、自民党の茂木幹事長をはじめ、公明党や多くの野党が「児童手当の所得制限を撤廃すべき」と主張していますが、所得制限について「継続すべき」と考える人が56%、「廃止すべき」と考える人が33%だったことが最新のJNNの世論調査でわかりました。
児童手当は中学生以下の子どもがいる世帯に1人あたり最大1万5000円を支給するものですが、一定以上の収入の世帯は所得制限によって減額、もしくは支給対象外となっています。(略)
政府は将来的に子ども関連予算を倍増させる方針ですが、その方針に「賛成」の人は68%、「反対」の人は19%でした。一方、その財源について増税で賄うことに「賛成」の人は40%、「反対」の人は51%でした。
少子化対策の具体的な取り組みとしてもっとも効果的だと思う取り組みについて聞いたところ、▼「児童手当など経済的支援の拡充」は16%、▼「幼児教育や保育サービスなどの拡充」は17%、▼「働き方改革の推進とそれを支える制度の充実」は29%、▼「若い世代の賃上げ」は26%、▼「結婚を支援する取り組みの拡充」は7%でした。」

少子化対策の根幹は、
①婚姻件数を増やすこと
②婚姻後の経済不安を無くすよう若い世代の所得を劇的に引き上げること
③不安定な雇用契約やブラック労働を根絶すること
④出産・育児をサポートできる医療機関や保育機関を全国に満遍なく配置すること
⑤出産・教育・医療の無料化、児童手当の拡充
といった点にあり、正直言って児童手当の所得制限撤廃なんて優先順位150番目くらいの些末な話です。

JNNの調査結果では“所得制限について「継続すべき」と考える人が56%、「廃止すべき」と考える人が33%だった”そうですから、国民間に高所得者層にまで児童手当を配る必要はないという妬み・嫉みの感情が思った以上に根強いのが判ります。

私としては、「所得制限なんて要らんやろ。どうしても制限付きにしたいなら、確定申告ライン(2000万円超)辺りにバーを引いたらいいやないの?」くらいにしか思いません。

それよりも、現行の貧相な児童手当(支給は中学卒業まで。3歳未満15000円/月額、3歳以上10000円/月額)を劇的に拡充し、支給対象は満18歳まで一律月額50000円くらいまで引き上げるくらいの議論をすべきです。

ついでに、大学までの教育費の全額無償化、就業までの医療費全額無償化、出産費用全額無償化等々、子持ち家計の負担軽減につながりそうな政策をどんどん要求し議論の俎上に載せるよう声を上げて欲しいですね。

子供の小遣いレベルの児童手当を放置したまま、全国民が“所得制限をすべきか否か”といったレベルの低い議論に誘導され、所得階層間でルサンチマン丸出しの非難合戦をしている場合ではありません。

収入が足りない、カネが欲しいと思うのはどの世帯にも共通する頭痛のタネであり、それこそが日本社会を崩壊させた平成・令和大不況の主症状なのですから、政府から家計への貨幣供与政策を堂々と訴えるべきであり、そこに軸足を置いた議論をしてもらいたいものです。