知佳の美貌録「3者面談 進学コースの夢叶わなかった母の言いぐさ」
孫娘の将来を真剣に考える祖父母なら、もとはといえば自分たちが産み育てた長男がやらかした育児放棄、孤児同様となって寂しい思いをする孫、せめてその好子には女学校なりと行かせ夢を持たせてあげたと思う。 それを己らが楽したいものだから女衒の真似事ばかりさせた。 おかげで好子は、己の子久美に向かってその恨みつらみを果たそうとしているかのように思われた。 己の産んだ長男に向かってではない。 性懲りもなく好子は可愛いはずの孫に向かってでもオンナを高く売りつける手法を直に伝授してみせたことからも、その怨念がわかろうというものであった。 学期末が近づくにつれ、久美のクラスでの周囲の友達は何度も将来を案じる親がわざわざ登校してきて3者面談を受けていたが、好子は一向に我が子が進路を決める時期が来ていることすら理解しようとはしなかった。 家庭訪問の折など、どんなに説明しても久美の優秀さを一応話しを聞くふりをし、肝心な話題になるとわけのわからない話題を持ち出しはぐらかし認めず、女ごときが進学校への進学などというものは、その必要性を理解しようとしてくれなかった。 この親にしてこの子ありというべきか、大学目指せと諭さなければならない当人ですら家が貧しくこのまま高校へ進学しても食べていけないからと就職をと言い出す始末。 業を煮やした担任が久美の親宛に手紙を持たせ、あの理解に乏しい母親を3者面談に誘ってみたのであったが・・・ 案の定といおうか情けないと言おうか、呼び出された好子は確かに説明段階では返答は丁寧語だったものの、さっぱり中身を理解できておらずのらりくらりと逃げ、結局その場で久美の口から就職をと言い切ってしうに至り本人が納得してるならそれでいいじゃないですかと母が返し、時間がないからとさっさと帰ってしまった。 時間がないなどということはありえなかった。 なぜなら、保護費を受け取る好子は、この頃では幸吉の真似をして酒を飲み暇さえあれば例の変な本を読みふけったり寝て過ごしていたからであり、近所でもその体たらくが評判になっていたからである。 久美にしてもそのように言わなければ、帰宅した時の母の態度が目に見えていたからである。 学のない母に、女が義務教育以上、ましてや大学など必要だとは おそらく何年たっても理解できないだろうことを、金持ちの旦那を見つけ春を鬻ぐことはわかっても大学に進めば将来が開けるなどということを理解できないだろうと、生まれてこの方母の生きざまを見るにつけ、十分すぎるほど理解していた。 オンナの峠を越えてしまった母、どう頑張ってもそこいらの男に貢ぐことはやるだろうが、金持ちの旦那を見つけ春を鬻ぐ代わりに我が子の大学の費用を捻出させるなどということは土台無理と理解していたからこそ、担任にはそのように言い切ったのである。 生活保護の心地よさを知ってしまったからだろう、よいとまけなどに出てその日食べるためのお金を稼ごうなどという殊勝な考え方はまるでしなくなっていた。 これは余談だが、好子が女衒に仕込まれたのはあくまで芸者が先で私娼は付け足し、芸を見せ男を虜にすることこそ得意なはずなのに何故か私娼に、殊に生まれ育ったこの地では執着してしまう。 のちになり、亭主や子を捨て駆け落ちした先ではこの芸、つまり接客商売にこそ身を転じ食いつないでいて、それはそれで結構実入りもよく客もついたようで、数人のパトロンまで得ていたようだから不思議だ。
就職組の道を選ぶ
それでもせめてもと、大学進学をあきらめる代わりに生活保護家庭の子に対し、就職のための進学をと 学校側は久美に商業科を勧めた。 奨学金を使えば学費は免除、しかもある年齢まで生活費は母子家庭の子供に対するがごとく生活保護費に含まれ、親は食い扶持はもちろんのこと学費も自腹を切って出す必要がない。 こうすれば、県の教育委員会を通じて商業科への極めて優秀であるという推薦状さえ通れば親の承諾は暗に必要なかった。 必要なかったというのは、その年齢ではあくまで保護者が権利を握っているからであるが・・・ クラスでも常に5本の指に入っている秀才を、商業科へ推薦を書かされるとは担任も思わなかった。 推薦といえどテストは一般生と同様にある。 「勉強だけはしておくように」 と気遣う教師に 「先生、これまでヤマ勘でテスト受けてきてたんだけど」 それでも大丈夫かと -のちのちも異口同音にー 久美は明るく言ってのけたという。 以前にも書いたが、そして受験発表の日、久美は 母の好子が下宿生と間違いを起こしたという、あの隣の大学進学のための高校の裏門から入って表門を、にこやかに笑いながら通って自宅に帰った。 久美のささやかな意地であった。 それを見た近所の連中が 「やっぱり久美ちゃんはすごいねー」 あの高校に合格したんだと誉めそやしたという。 親は知らずとも子を通じ久美の成績は近所中に知れ渡っていた。 その高校に受験しても、恐らくトップクラスで合格できただろうと担任は後々まで悔やんだ。 こうして久美は、県立校の中では絶対就職組とわかっている高校に通うことになった。 ただ違ったのは中学まで弟の世話をやいてから学校に向かったものを、このころから一切の費用が奨学金としてら振り込まれることもあってやめている。 このころから徐々にではあるが殊に母と一線を画すようになっていった。 父幸吉は好子との結婚後、わずか15年ほどでアルコール依存症で廃人同様となり、将棋云々はもはや語れなくなり、母好子は、そのわずか5年後、つまりふたつ違いの弟が進学校を卒業し、超有名大学に進学が決まると、久美のまるで知らない男の後を追って行方をくらましてしまうことになる。
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アップデート 2024/02/21 12:45
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