野口内科 BLOG

  野口内科は鹿児島市武岡に開業して46年を迎えました。
  当ブログでは、当院からのお知らせ、医療・健康に関する情報の他に、近隣の話題、音楽・本のこと等を綴ってまいります。

    診療時間 午前  9:00〜13:00
         午後 14:30〜18:00 (金曜は〜18:30)
    休診   日曜・祝日・木曜午後
    電話   099−281−7515
    住所   鹿児島市武岡二丁目28−4
    院長   野口 仁

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         ▶▶▶ バス路線図

 ● 薬の説明書のイラスト 420 ●


雨が多くて、桜の花見のタイミングを逃した方も多いのではないかと思います。
今日も雨の強い時間帯があり、雷も鳴っていました。
明日からしばらく晴れて気温も上がるようですが、週末からゴールデンウイークの始めまで傘マークが続いています。

4月の後半の薬の説明書に選んだのはハナミズキです。
せめて晴れている間に、花を楽しめるといいですね。


はなみずき

深緑【診察室のBGM 214】


アーティストもベテランの域に達すると、ファン層も高齢化していくのが常。
なので、どういう年齢層の客が集まるのかに興味津々でライブに出向いたところ、私が最高齢ではないかというくらい若い人たちの熱気に溢れていたのには驚きました。

UAのことをどこまで知っているのだろうか、浅井健一はイカ天出身って知っているのだろうか、などと思いながら、彼らの音楽が若い人たちを夢中にさせているのは素直に嬉しいことです。

この二人とベースの
TOKIEとドラムの椎野恭一の4人組のユニット AJICO は、2000年から2001年にかけて活動したっきりでしたが、2021年に突如として再始動。
それが全く新しいファン層の開拓に繋がったのでしょうね。

4月11日に鹿児島で行われた彼らのライブ、若い女子はUAの前に陣取り、ギター小僧と思われる男子は浅井健一の前に陣取っていました。
私はTOKIEの前に。
彼女の妖艶なベース捌きをしっかり堪能してきました。

2001年にリリースした「深緑」の中からも何曲か披露してくれました。
「毛布もいらない」については、ウクライナやガザの戦地に思いを馳せてUAが熱唱。
歌詞は途切れ途切れながら、思わず一緒に口ずさんだのでした。

緑色の布地に盛り上げた黒いインクでUAの描いた絵を印刷してある独特な手触りのジャケット。
そのCDを棚から引っ張り出して、また聴いています。


≪ 過去記事ウォッチング 36 ≫

口内炎若い頃は、頻繁に口内炎を起こしていました。
その度に父に処方された軟膏を塗ってはみるものの、改善するのに7~10日かかるのが常でした。
ある時、物は試しと、口内炎に適応のある半夏瀉心湯を服用してみました。
すると、1日で痛みが緩和するし、4日目には跡形もなくきれいに治ってしまったことにビックリでした。

2020年に「口内炎には半夏瀉心湯」という記事の中で、抗がん剤治療の際にできる口内炎の予防や治療について書きました。
昨年、たまたま知り合いが抗がん剤の副作用による多発する口内炎で食事が摂れず、激ヤセしている姿を見ました。
半夏瀉心湯の処方を主治医に頼んでみてはどうかとアドバイスしてみたところ、その後、食事がおいしく食べられるようになって体重も増えたという嬉しい報告を受けました。

この4月から薬価の高くなった漢方薬が多い中、半夏瀉心湯は従来通り。
当院では、口内炎の標準治療にこの漢方薬を据えております。


 ★ 診察室のデスクトップ 116 ★


今回の診察室の机に置いてあるモニター画面の写真は鹿児島市中央公民館です。

鹿児島に観光で訪れる人が必ず立ち寄る西郷隆盛像の真向かいにある古めかしい建物がそれです。
開館して今年で97年となるようですね。
私が小さい頃には古くさい印象しか持っていませんでしたが、新型コロナウイルスワクチン接種事業を始めるにあたっての説明会や鹿児島マラソンの受付などで最近でも中に入る機会も多く、その度に時代を生き抜いた建物の尊さを感じます。

鹿児島では、旧考古資料館の保存活用法が検討されている一方で、鹿児島県産業会館の存続が危惧されています。
何とか残してほしいですね。


中央公民館



過去にデスクトップ画像に採用した写真などを少しずつインスタグラムに投稿しています。
興味のある方は覗いてみて下さい。


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サプリメント02小林製薬の紅麹を含んだ機能性表示食品で、死亡例を含む健康被害が多数報告され、連日のように大きく報道されています。

この機会に、機能性表示食品の問題点を考えてみたいと思います。

サプリメントや健康食品が医薬品よりも安心・安全なものという勘違いを捨てて、ご自身の身を守るために。

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サプリメントや健康食品は医薬品と違ってあくまで食品扱いなので、医薬品のように効能・効果を謳って宣伝・販売してしまうと法律に抵触して罰せられます。
これを定めているのが薬機法 ( 正式名称 : 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 ) です。
何らかの健康向上を目的に製造販売していても、これを具体的に表示すると法律違反となるのです。

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具体例をノコギリヤシでみてみましょう。

ノコギリヤシノコギリヤシ果実抽出液は、前立腺肥大症に伴う様々な排尿障害に有効性があるとされ、海外ではメディカルハーブとして医療現場で使うこともあるようです。
専門的になりますが、抗アンドロゲン受容体遮断作用や α1受容体遮断作用、抗炎症作用などがあるとされています。

夜間頻尿・最⼤尿流量率・排尿後残尿量・前立腺の大きさなどについて検討した報告がいくつもあるのですが、効果についての評価は一定していません。
また、ノコギリヤシ果実抽出液の有効成分が特定できていないので、日本の法律上の区分は果実に過ぎません。

ですから、ノコギリヤシを使ったサプリメントの広告では、「前立腺肥大症」「頻尿改善」などという表現は使えません。
法律に抵触せずに排尿機能に効果がある ( かもしれない ) ことを伝えるために、言い換えに腐心しています。

「中高年男性のスッキリ爽快な毎日」
「キレや勢いをサポート」
「水分をとると夜に何度も・・という中高年男性に」

といった実例がありますが、いずれも尿や前立腺という言葉は使ってないですよね。
暗示しかできないのです。
しかし、曖昧な表現に惑わされ、女性が購入して飲んでいたという笑い話のような実話もあります。

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Food_for_Specified_Health_Usesところが、いわゆるトクホ ( 特定医療用食品 ) として認められると、許可マークと共にその効能が表示できるようになります。
ただ、保健機能を有する関与成分について有効性や安全性などを科学的な根拠を調べてデータを国に提出し、審査を受けて認可を得なければなりません。
かなり高額なコストと時間を要するため、認可を得るハードルは高いものになっています。

そこへ助け船を出したのが、2013年6月5日の規制改革の答申でした。
「トクホは許可を受けるための手続きの負担が大きいので、もっと簡単に機能性を表示できるようにすべきである」としたのです。
この答申を受け、当時の安倍首相が企業活動の障害を徹底的に取り除くとして「健康食品の機能性表示を解禁いたします。国民が自らの健康を自ら守る。そのためには適確な情報が提供されなければならない。当然のことです・・・」などと高らかに宣言したのです。

そして、2015年4月から機能性表示食品の制度がスタートしました。

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さて、その機能性表示食品ですが、事業者が「表示しようとする機能性」の科学的根拠を説明する資料等の書類一式を国に提出し、不備がなければ受理され、届出日の60日後から販売可能となります。
届出さえすれば認可を必要としないという容易さからか、いまや6000品を超える機能性表示食品が出回っています。

書類提出する資料は「最終製品を用いた臨床試験」か「最終製品又は機能性関与成分に関する研究レビュー」のいずれかを提出する必要がありますが、機能性表示食品の9割以上が後者の資料を提出しているようです。
つまり、ほとんどが自社製品を実際に人に使用して検証するのではなく、「製品に含まれている成分にはこんなデータがあります」という他人のふんどしを活用したお手軽な書類で手続きを済ませているのが実態なのです。

制度上、提出された資料の正当性をを国がチェックするわけではないので、体裁さえ整っていれば捏造されたデータであっても通ってしまうという怖さが潜んでいます。
国が効果や安全性を保証しているのではなく、いわば提出する業者の良心に委ねられているだけなので、早い段階からこの機能性表示食品制度の不備・問題点は度々指摘されてきました。

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サプリメント01トクホの認可を受けたり機能性表示食品の届け出をしたりすると、晴れて商品にその機能を表示することが可能となります。
問題なのは、しっかり検証を受けたトクホに比べて、機能性表示食品の方に過剰な表現が多いことです。

例えば、GABAという成分を含むトクホでは「血圧低下」の表示しかありません。

一方の機能性表示食品では、これに「睡眠の質向上」「ストレス軽減」などの表現を加えて販売されているものもあります。

根拠の希薄なデータであっても簡単に届け出できる敷居の低い制度を活用した方が、トクホを超える表示ができるっておかしくありませんか?


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一般の方に大きな誤解を与えている点があります。
トクホや機能性表示食品はあくまで食品扱いなので、副作用や薬剤との相互作用を調べる必要はありません。
調べていないだけで、副作用がないわけではないのです。

我々がよく遭遇するのは肝機能障害です。
トクホや機能性表示食品ではないのですが、具体例を1つだけ紹介します。

入院古くからあるクロレラによる肝障害の例を経験しています。
この方は、肝炎で入院中にクロレラが疑わしいというレベルで話が終わっていました。
退院して自宅に戻ったら、余っているクロレラがもったいないと服用を再開してしまいました。
せっかく落ち着いていた肝機能が再び悪化して再入院となり、クロレラ摂取は厳禁となりました。

今回の紅麹のサプリでも再び飲んで腎障害が再燃した例があったようですね。
痛い目に遭っているのに、この手の商品は医薬品と違って安全なものという思い込みがあるので、安易に再び口にしてしまうのでしょう。

この例に限らず健康被害の例をいくつか担当してきましたし、文献等での報告は嫌というほど目にしてきています。
例えば、トクホで認められているカテキンは海外では肝障害を起こした例も多数報告されているんです。

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そして、もう一つ問題点を挙げておきます。
表示通りに成分が含まれていなかったり、その逆で書いていない成分を含んでいたりすることがあるのです。

血圧にいいとされる「かつお節オリゴペプチド」や「豆鼓」を含んだトクホの商品に、その有効な成分がほとんど含まれていないという事例があったのです。
日本サプリメントが販売していた商品で、トクホの認可は取り消されました。( → こちら )

また、トクホや機能性表示食品ではないですが、昨年の今頃、花粉症に効くというお茶にステロイドが入っている例が相次ぎ、問題となりました。
検査異常値を元に、この商品の隠れた成分を疑った医師からの通報で発覚した事例でした。( → こちら )

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副作用は調べられていないし、表示に必ずしも信用が置けないというサプリメントやトクホ・機能性表示食品を皆さんは口にしているのです。

機能性表示食品導入を決めた際の安倍元首相の言葉を繰返し見てみましょう。

国民が自らの健康を自ら守る。そのためには適確な情報が提供されなければならない。当然のことです。」

少なくとも機能性表示食品については、国民が自らの健康を守る状態にある食品ではあるとは言えません。
健康食品の市場拡大をもくろんだ企業論理を優先させているだけに過ぎないのです。

これから、機能性表示食品制度の見直しも議論されていくことでしょうが、私から一言。

自らの健康を自ら守りたいのであれば、サプリメントや機能性表示食品を一切口にしないことです。

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最後に。

6cbcdda9c15080afafb0553150ec825f_tノコギリヤシのことを取り上げましたが、これを機能性表示食品として届けているメーカーがあります。 ( → こちら )
何と、「トイレが近いと感じている中高年女性の日常生活における排尿に行くわずらわしさを緩和する機能がある」としているのです。

世界的には、前立腺肥大症に絡めて男性の排尿に関連した研究しかなされていません。
女性にも効果があるのが本当なら、提出したデータは世界に大々的にアピールすべき画期的なものです。
本当なら、機能性表示食品程度に留める必要なんかないではありまんか?

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