2019年5月31日金曜日

バラモン教・時代の更新と破壊者カルキ_「神話と占い」(その81)_






*******
千福年説の正体
*******


「聖霊」「救世主」「再臨=再生=復活」「千福年説(「千年王国説」「至福千年説」「千年至福説」ともいう)」というキーワードに彩られたシーア派マフディー論(マフディー再臨後の地上にはシーア派ムスリムしか生き残れない。シーア派にとって終末はシーア派世界を千年も謳歌したあとゆっくり訪れる天国)が、『新約聖書』に収録された『ヨハネの黙示録』に酷似していることはよく知られています。しかしシーア派がキリスト教を真似たわけではありません。「千福年」の思想は、アジア世界に古くから定着していたものです。



⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒
宇宙霊=ブラフマー(宇宙精神とも)が目覚めると三界(天地空)が創造され、ブラフマーが眠ると三界は混沌に突き落とされる。ブラフマーの一日は、地上の四十三億二千万年に相当する。カルパは千回の大時代に分割でき、各マハユガはさらに四つの小時代(クリ、トレタ、ドワパラ、カリ)に分割される。

わたしたちが生きる堕落の時代カリユガでは人々は邪悪でその大半がシュードラ(奴隷)で、その惨(みじ)めさは破壊者カルキが来臨したとき、ようやく終わりを告げることになる。シャンバラという村の祭司長の家に生まれる破壊者カルキはブラフマーの一部であり、ヴィシュヌ(太陽神、創造神)十番目の化身(1、マツヤ→2、クールマ→3、ヴァアラーハ→4、ナラシンハ→5、ヴァーマナ→6、パラシュラーマ→7、ラーマチャンドラ→8、クリシュナ→9、クリシュナ仏陀→10、カルキ)である。カルキは白馬に乗って地上に現われ、世界中を駆け巡って徹底的に悪を打ち滅ぼす。彼の使命は来たるべき「創造の更新」の前ぶれとして、世を浄(きよ)めることにある。

百年に亘(わた)る大飢饉のあと七つの太陽が空に昇り、わずか残った地上の水をすべて枯らしてしまうだろう。そうして太陽はカルキの勝利を待って大地を燃やし尽くし、その後雨が降り続いて地上を水底へ沈めるだろう。すると水面に蓮の花が開きブラフマーを閉じ込めて眠らせる。不滅の神々も死を避けられない人間たちも、このとき再び宇宙霊=ブラフマーに吸収され深い眠りに堕ちるだろう。

その後ブラフマーはおよそ一千年の眠りに就く。この間ブラフマーは黄金色(こがねいろ)に輝く宇宙卵の中に入りロータス(睡蓮)に乗って水面に浮かんでいるが、目を覚ますやまた、あらためて創造の為(し)事に着手する。


【バラモン(ブラフマン)教】カリユガ
「ブラーフマナ」、「プラーナ」など
⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒

「七つの太陽」という表現は黙示録文学にはお馴染みの表現で、七天それぞれに存在している太陽がいっせいに地上へ集まってしまう危機的状況を表します。終末における「天層の崩壊=神々の黄昏(たそがれ)」の暗喩です。紀元前八〇〇年頃記述された『ウパニシャッド』などから推定するに、紀元前一〇〇〇年頃成立した初期ヒンドゥー思想「バラモン教(「ブラフマン教」ともいう)」は、早くも「時代は更新される」という考え方を中心教義に据(す)えていました。


現在では、インド・ヨーロッパ語族が本来的に持っていたこの「更新」思想が、セム語族が本来持っていた「一度きりの人生・一度きりの時代」を訴求(そきゅう)する精神と不自然に融合した結果、「終末論」が生まれたものとみなされています。


ところで「千福年説」は神々や人間の魂が「時代の更新=蘇(よみがえ)り」を待つあいだ「宇宙霊の中で過ごす一千年」がもとの形です。ブラフマーの今日から明日への移行時に訪れるつかの間の休息期(睡眠)だったものが、循環しない時代の中にとり残されているものです。






0 件のコメント:

コメントを投稿

TOPへ戻る