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― SEVEN~7~ ボイスドラマ台本2 ―

2023/09/02

「星達の集う時間」


【運命・縁】 ~全てはすでに縁という意図~

――学校の廊下。
足音。チャイム。
女生徒  121「あんたね。いい加減にしてよ」
貴夜   122「何がですか?」 (怯えながら睨む……)
女生徒  123「先生に媚び売って点数稼ぎしてるでしょ?」
貴夜   124「変な言いがかり……」
透    125「何をしているんだ?」
貴夜   126「あ。冠崎先生」
女生徒  127「何でもないです」  (気まずく立ち去る)
走っていく足音。
貴夜   128「助かりました」
透    129「あ、冠瀬さん。良かったら、資料室へ来ないかい。
        コーヒーぐらいならご馳走するよ」
貴夜   130「え?あの」                (戸惑い)
透    131「大丈夫。とって食ったりしないから」  (冗談半分で)
コーヒーを注ぐ音。
透    132「はい。コーヒー。熱いから気をつけて」
貴夜   133「ありがとうございます」
透    134『それから度々、貴夜はこの資料室へ遊びに来るようになった。
       貴夜との時間が幸せな時間だと思うのは、あの夢のせいだろうか』

 

―――研究室。
警報?
リース  135「透!すぐ、実験棟に来てちょうだい!!P497が暴走を始めたわ!!」  (P497=氷霊です)(慌てている) 
氷霊   136「アアアアァァ」     (耳を突くような叫び)
透    136「氷霊が!?」
がや研究員137-1「暴走しだしたなんて」137-2「これも失敗だ」137-3「なんて事」
137-4「成功例にはならなかったわ」137-5「もう使えない」
―――――――――――――――――――――――――――(ガヤ。がや)
リース  138「研究員が一人、犠牲になったわ。透、処分してちょうだい」  (淡々と)

氷の割れる音。
透    139「判りました。……大丈夫。ゆっくりお休み」  (最初はリースに向かって淡々と。後は氷霊に向かって、震える声)
氷霊   140「とーるぅ……とーる。と……る」  (呟くように。段々、小さく。ゆっくりと繰り返す。『とおる』の回数を増やしても構いません。)
透    141「悪夢はもう、終わりだよ」   (悲しさを殺して、優しく)
心臓の音。
リース  142「ご苦労様。医務室に行ってらっしゃい。指が凍傷になるわよ」 


―――遊戯室。
扉の音。
透    143「誰もいないのか……」 (呟くように)
 座り込む音?  扉の開く音。
闘華   144「ああ、いたの」    (疲れ切った声)
透    145「お帰り。自分の部屋へ行った方がいいよ。疲れてるだろ」
闘華   146「いい。透がいるから」
透    147「そうですか」
闘華   148「殺したくなんてないのに、なんで殺さなきゃいけないんだろう。
      力なんか欲しくないのに、欲しがってなんかないのに」      (段々泣き声で)
透    149「貴夜のように幸せになど、なれないか」
闘華   150「貴夜って誰?」
透    151「憎んでいる。憎みたかった。『どうして、あの時を<許せる>のだろう』
       ―――間――― 
透    15-a   「罪はどう償うんだろう。ねぇ、闘華どう思う」
闘華   152「……解らない」   (諦めたように)



――学校
チャイムとドアの開く音

貴夜   153「とうるセンセ」      (気軽に明るく)
透    154「やあ、また来たのかい」   (貴夜につられて明るく)
貴夜   155「だって~あのクラス陰険なんだよ。昨日もね~」 
透    156「冠瀬さんは幸せだね」
貴夜   157「???どこが?」
透    158「僕にはそんな悩みなんてないから」
貴夜   159「悩みがないって良い事じゃないの?」
透    160「そうかな?僕には何もないんだよ」
貴夜   161「何も?家族とか友人とかあるでしょ?」 
透    162「無意味だよ。僕がここに存在することも無意味なんだよ」 
貴夜   163「そんな事無いよ。私が居るもの」   (そんな事を言うなんて悲しい。と思ってる。)
透    164-00「……苦笑。 そうだね」       (嬉しい)
透    164『あの時のように、貴夜の目は優しかった』 


【運命・聖】 ~全てはもう聖なる定め~

―――道端
――足音
占い師  165「もし、そこのお嬢さん。そこのあなたですよ。冠瀬 貴夜(かんぜ きよ)さん」
貴夜   166「なんで・・・私の名前!?」  (驚きと怪訝)
占い師  167「すみません。ちょっと、あなたの運勢が気になったもので」
貴夜   168「私、お金なんて持ってないですよ」  (怪しい人だと思ってる)
占い師  169「お金なんて取りません。少し、占わせていただけませんか?」 (にっこりと)
貴夜   170「いいけど・・・」 (ついつい。OK)

――扉が重く開く音。 
貴夜   171『扉の向こうは暗く、中に進むといすがあり、その前に黒いテーブルが一つ。
         机の上にはコインと短剣、小さな杖そして水の入ったカップ』
占い師  172「少しこのコインを見つめてて下さいませんか? 触ってもいいですよ。
         でもこれから何があっても、声だけは出さないでください」
貴夜   173『私はじっと黙って、そのコインを見つめていた。と、彼は短剣で自分の腕を切りつけた。
         私は息をのんで、したたり落ちる紅い血は水の入ったカップへと落ちてゆくのを見ていた。
         杖でその水をかき混ぜると、水が紅く染まる。』
占い師  174「もういいですよ」
貴夜   175「え、あ。はい・・」
占い師  176「闇に・・・」  (言いよどむ)
貴夜   177「あの・・・?」
占い師  178「あ、ええ。・・・。これから、あなたは7つの星に支配されるでしょう。
        風はあなたを誘い、炎はあなたを留め、水はあなたを癒し、
        地はあなたを包み、光はあなたを弄び、闇はあなたを操る」
貴夜   179「あの・・・。よくわからないんですけど」     (理解できない)
占い師  180「わかりやすく言うとね。誘惑には気をつけなさいって事」 (あっさりと簡潔に)
貴夜   181「さっきの言葉と全然違うんじゃないですか?」 
占い師  182「簡単に言っただけだよ。それより、占いはこれでおしまい。時間をとらせて悪かったね」

――部屋。
部屋の電気をつける。
スイッチ音。
占い師  183「『定め』は変わらない」
透    184「死神……」
占い師  185「星の欠片を握りし者。星の行く先を『定め』なければならない」
透    186「まだ、『定めの時』じゃない」
占い師  187「でしょうね」
透    188「何の冗談ですか?」
占い師  189「冗談なんかじゃないよ。亀裂が抑えきれなくなってきてるのは事実」 (子供っぽく)
透    190「もう少し、持ちこたえてくれませんか?まだ、やるべき事がある」 
占い師  191「判ってる。出会った時に決めてたじゃない。『定め』が決まるまで」

透    192『瞬間―遠い記憶が鮮やかに蘇った。』

占い師  193「ここから空の眺めは綺麗ですね」
透    194「そうかな。ここから見える星は全て偽りだよ。星があったのは大昔」
占い師  195「見せてあげましょうか?大昔の星を」  
透    196「本当に?」    (驚き)
占い師  197「ええ、でも今じゃありません。あなたが、星の行く先を決める時」
透    198「星の行く先?」

――――風の音。

占い師  199『彼方自身が『定め』を決めた時に―』


透    200「そうだったね」 (懐かしそうに笑う)
占い師  201「人が不死を得て、世界の均衡は崩れた。透、それを戻す為の力が必要だよ。
         人が欲しがる強き力がね……全ては世界の為に」
透    202「その為に人は滅びるべき…か。……生き残るのはたった一人」 (諦めにも似た足掻き)
占い師  203「まだ、判らないよ。 覚えておいて。未来は予測不可能な領域になってる」
透    204『それは、予測された未来より最悪の事が起こるのか。それとも……』




【終末・闇】~闇に漂う空間~

―――資料室。
貴夜   205「このノートに書いてあるの、星空みたいだね」 (ぼんやりと)
透    206「あたり。これは天空だよ。夜のね」(笑いながら)
貴夜   207「研究じゃなかったの?」
透    208「これは趣味だよ」
貴夜   209「天文学?」
透    210「そんな難しい物じゃないよ。星の名前とか神話とか書き留めてあるだけ。さてと・・・。会議の時間だ」
貴夜   211「えーもう行っちゃうの」  (残念)
透    212「冠瀬さんはどうするんだい?まだここにいる?」
貴夜   213「ココア飲んでる間に戻ってこなかったら帰る」  (待つ気なしです)
透    214「わかった」
扉の閉まる音。




航    215「俺を呼び出すなんてどういう事だ?」
透    216「そんな顔しなくても、取引の返事をしたいと思ってね。
       推薦は辞退するよ。元々、僕は乗り気じゃない。リースも了承したよ」
航    217「そうか。データファイルはこれだ。まだ、コピーはこちらで預かるがな」  
透    218「商談成立だね。お茶でもどうだい?」  
カップの音。
航    219「……お前…。お茶に……何か入れ……」  (苦しげに)
倒れた音?カップの割れる音。
透    220「悪いけど、取引なんてする気は無いんだ」  

――鈴の音。
占い師  221『決めたのだね。定めを』

氷霊   222『誰か。声を聞いて。私の声を聞いて、透を止めて』
――扉の開く音?
鬼炎   223「氷霊か!?その半透明な姿は?」
氷霊   224『鬼炎、聞いて。透が、全てを終わらせる気なの。定めは貴夜って子に託される。私たち、死んじゃう
        透を止めて!!死ぬ気だよ。』
鬼炎   225「な……何を!??」
氷霊   226『早く!透を止めて』
鬼炎   227「……わかった。」

――足音。スイッチの音。
闘華   228「透、どうなってるの?研究所の皆が眠って……透?
        何してるの?マザーコンピュータの制御を解く気?」  (不可解と驚き)
透    229「闘華。お休み」
何か音。。打撃音?
透    230「そして、ごめんね」

――扉が乱暴に開けられる音。火の音。止まぬ風の音。
鬼炎   231「氷霊から聞いて、まさかと思ったけど……」(息切れ。肩で息)
透    232「何が?」(ニッコリと答える)
鬼炎  233「透、何があったんだよ?」
透    234「『定め』の時が来ただけだよ。」
鬼炎   325「何だよ。それ……何のために!!」
透    236「人が生を歪めて、300年。罪は償わなければ、ならない。
          研究所が始めた研究。罪を成功に変えてはいけない。
          不老不死は大罪。生態系の全てを狂わせ、世界を破壊に導く。
          そして―神の予見は外れない」
鬼炎   237「何が起こる?いや、何を起こす気なんだ?とおる!!」
透    238「残るのは七つ星だけ。未来は全て貴夜の手の中だよ」

透    239『どうして、あの時を<願う>のだろう』
鬼炎   240「透?」

透    241「時間の果てはどんなだろう?ねぇ、鬼炎どう思う?」

―――風の音。破壊音?




無音。


占い師  242『これで、良かったと?』
透    243『未来は何時だって、神の予測可能域だろう?』
占い師  244『そう、だね』


透    245『あの時間、あの場所、あの場面。
         もしも、出会わなければ。
         もしも、望まなければ。
         もしも、選ばなければ。
         そうすれば、違っていたかもしれない。』

透    246『星は何を望むだろう。ねぇ、貴夜。君には判るだろう』

占い師  247『全てが壊れたこの場所から、全てが始まる』






※無断使用禁止※

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