『涼宮ハルヒ』の世界に転生してカニを貪り食いたい

最近ライトノベル界隈で異世界転生ブームが起きているのはご存じだろうか。

何の変哲もない一般人である主人公が異世界に転生して冒険をしたり、モンスターや魔物相手に無双したりするのだが、私にはどうにも興味が持てず、そのジャンルからは身を引いていた。

しかしそんな私も毎晩酒を飲みながらアニメを見ているうちに転生したい理想の世界が見つかってしまったのだ。

 

 

 

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それが『涼宮ハルヒ』の世界である。

 

涼宮ハルヒシリーズ』とは、無自覚に世界を望む通りに改変してしまう少女、涼宮ハルヒと彼女が発足した同好会・SOS団を取り巻く日常を描いたライトノベルだ。

神の如き能力を持つハルヒや、彼女が力を暴走させないように監視している宇宙人・未来人・超能力者が存在すると考えただけでも充分魅力的なのだが、私の目的はそこにはない。

私がこの世界に転生したい理由とは

 

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殻の無いカニを食べたい ただそれだけである。

 

私はあらゆる食べ物の中でカニが一番好きなのだが、どうにも好きになれないところがある。それが殻だ。

この殻を割って中に詰まった身をほじくり食べるのだが、殻はべらぼうに堅いし、身はほじっても中々出てこない。ハルヒの新刊並みに出てこない。

カニに殻さえなければもっと美味しく食べられるのに…

そんな私の願いを叶えている可能性がある世界、それが『涼宮ハルヒ』の世界なのである。

 

前述した通りハルヒは世界を望み通りに改変する能力を持っており、その能力を無自覚に発揮しSOS団に宇宙人・未来人・超能力者を呼び寄せたり、喋るネコを生み出したりと結構トンデモないことをやっている。

そしてハルヒは作中こんな言葉を残している。

 

 

カニはNGよ、あたしアレ苦手なの。殻から身をほじくるのがイライラすんの。どうしてカニって殻も食べられるようになってないのかしらね。」

涼宮ハルヒの消失』24頁から引用

 

 

世界を改変する少女がカニが剥き身で生まれてくることを願った。

つまりこの世界では殻を実質的に奪われたカニがブ厚い冬着からさっぱりとした夏着に衣替えをしている可能性があるのだ。

 

だがこれはあくまでも可能性にすぎない。それもほんのごく僅かな可能性だ。

というのも超能力者・古泉曰く、ハルヒは超常的な現象を起こす一方常識的な思考も持ち合わせており、なんでもかんでも願いを現実に反映するわけではないらしい。

それに上記のセリフを見てもらえば分かるが、ハルヒカニに対して興味を抱いていない。一生出会うことのない地球の裏側の住人くらいにしか思っていない。はたしてそんな人間たちをある日全員露出狂にしてしまおうなどと考えるのだろうか。

 

やはりこの世界に殻がないカニがいる可能性はまだまだ低い。しかし私とてなんの策も無しに異世界転生を果たしたわけではない。

ハルヒは高校入学初日、宇宙人・未来人・異世界人・超能力者がいたら私のところに来い、と叫んだ。そして長門・みくる・古泉のファンタジーな面々をSOS団に呼び寄せた。

しかしSOS団が結成されて1年が経ても異世界人はSOS団に加入していない。すなわち、まだハルヒの世界には異世界人は存在していないのではないか。私が全宇宙初の異世界人足り得るのではないか。

 

そうなれば話は早い。歴史上初めて発見された異世界人をハルヒが放っておくはずがなく、私はSOS団への入団を許可、いや、強制されるのだ。

難なくハルヒとお近づきになったところでただ一言「殻がないカニが発見されたらしい」と言ってやるだけでいい。

いくらカニに興味がないハルヒでもそれを耳にすれば「それならみんなで世界のありとあらゆるカニを食べつくしましょう!」と言いだし、日本海の底ではズワイも松葉もタカアシも殻を脱ぎ始める。

 

ここまで長い道のりだったが、もう1つ避けて通れないことがある。それはハルヒの監視役であり、世界の均衡を保つため日々奔走しているSOS団のミラクル三銃士だ。彼らはカニが甲羅を脱ぐことも、アルマジロが甲羅を脱ぐことも是とはしないだろう。

これも抑え込むのは簡単だ。「ハルヒに自身の正体をバラす」と言えばいいのだ。当然俺は世界に仇なす敵と認定され危害を加えられるかもしれない。

けれど、ハルヒがせっかく見つけた異世界人を痛めつけられ激怒する危険性の方を重視し「カニが裸になるくらいで世界が平和になるならいいか…」と考えを改めてくれるに違いない。ここに理想郷が誕生したのだ。

正直彼らにはすまないことをしたと思っている。

終わらない夏休みを記録し続けたり、巨大なバケモノを退治したり、着たくも無いメイド服に身を包んだりと、世界平和のために彼らが奮闘している事を俺は知っている。だが俺にはそんなこと関係ない。俺はただ心ゆくまでカニを貪りたいだけなのである。

 

すべての障害は消えた。あとはカニを食らうだけだ。タラバズワイイチョウワタリアサヒハナサキタカアシケガニ。彼らが裸踊りで迎えてくれる。

せっかくなので殻剥きついでに、安価に手に入るようハルヒにはハダカガニの大量発生にも協力してもらおう。そうして今まで試してこなかった色々なカニ料理で腹を満たすのだ。

 

焼きガニカニカニ雑炊カニカニカニカニあんかけカニクリームコロッケカニグラタンカニピラフカニチャーハンカニシューマイカニトマトクリームパスタカニサラダカニ玉春巻き生春巻き茶碗蒸し寿司ちらし寿司

 

 

 

 

ああ、すばらしい新世界。ああ、すばらしき異世界転生。

 

 

カニ食べ放題は最高だが、私もSOS団に入った以上団員の義務を果たさねばならない事を忘れていた。

たとえば毎週末の不思議探索。あれは午前9時に集合なので、休日は昼まで寝ていたい私にとってあれはキビしい。うん、キツいな。

まさかカニの殻を剥きに異世界に来たら、自分の布団カラが剥かれている気分を味わうとは思わなかった。長門の眼鏡はないほうがいいが、やっぱり世界には殻があったほうがいいのかもしれない。

 

 

なぁ、カニ。迷惑かけたな、すまなかった。一緒に殻のある世界に帰ろう。

 

お前に殻があろうとなかろうと

 

 

 

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ちゃんと食べてやるからよ。