大学選手権は帝京大学が圧倒的強さで連覇を達成し幕をとじました。しかし、考えさせさらることも多い大会でした。
1,102−14
102−14 このスコアは何でしょう。
これは平成7年1995年1月15日 成人の日(成人の日は1月15日が固定でした)の出来事です。
かつて日本のラグビーカレンダーは、成人の日の日本選手権を最高で最終の舞台とすることで回っていたのです。晴着の振袖姿がスタジアムの花を添えたものでした。
102−14このスコアは、社会人ラグビー王者の神戸製鋼に学生チャンピオンの大東文化大が挑んだ結果の問題のスコアです。
その前から、日本選手権のあり方に疑問が出ていました。というのも社会人と大学ラグビーのレベルの差は開きっぱなしで、1987年の木本監督の早稲田が東芝府中を破って優勝してから、10年以上も学生の勝利はなかったのです。その結果、客足は遠のき、成人の日も15日が固定でなくなり、その意味をなくしていきました。
この1987年と1995年というのが日本ラグビー界の転機でした。1987年には第一回ラグビーWCが開催され、1995年に日本のラグビー界にもオープン化(プロ容認)に梶を切ったからです。
この102−14の結果で、ついに日本選手権のありかたが変更され、チャンピオン同士の一対一の対戦から、いわゆるトーナメント方式で大学上位校やクラブチームも含む、複数のチームが参加して行うように変更されることになります。
しかし、その3年後には 1回戦で
明治ー神戸製鋼 0−108
早稲田ートヨタ 7−101
となり変更しても改善はされません。
2,帝京大学の挑戦
そんな中、帝京大学には1996年に岩出監督が就任します。
岩出監督は、チーム内の問題など、さまざまな苦難のシーズンを経験することになりますが、最後には「脱体育系」を引っさげて、その後2009年度から大学選手権9連覇を達成することになります。
学生では負け無しの状況である9連覇中の帝京大学の目標は、「日本選手権でトップリーグのチームに勝利すること」に移行してきました。
帝京大学は大学の医学部を駆使し、栄養学的体つくり、科学的トレーニング、スポーツ科学的戦法、脱体育系の合理的上下関係、心理学的モチベーション理論、プロのスタップを揃えた合理的な組織運営をします。
いわば学生ラグビーに、世界のプロラグビーでは標準である、組織的に科学を導入したシステムで徐々に成果をあげたのです。
しかし、トップリーグの壁は厚かったのです。
帝京大学の日本選手権での成績は
2008年度 対 ブラックラムズ 25−25 でトライ数まけ
2009年度 対 NEC 5−38
2010年度 対 東芝 10−43
2012年度 対 東芝 19−86
2013年度 対 パナソニック 21−54(キャプテン 中村)
2014年度 対 トヨタ 13−38(キャプテン流)
そして翌年にその目標が達成されました。
2015年度 対 NEC 31−25(キャプテン坂手、姫野途中出場)
対 東芝 24−38
2016年度 対 パナソニック10−28
2017年度 対 サントリー 29−54
これを最後に学生ラグビーの日本選手権の参加の道がなくなります。帝京大学は目標を失い、その翌年には学生の10連覇を果たせませんでした。
3,帝京大学ラグビーの強さ
2022年度大学選手権は、岩出監督から引き継いだ相馬監督で圧倒的強さで2連覇をつげて終了となりました。まさに圧倒的です。
3回戦 対同志社 50−0
準決勝 対筑波 71−5
決勝 対早稲田 73−20(インタビュアーも思わず間違える最多得点)
このままで行くとこの連覇は数年は続くと思われます。
わかりやすいのは他の大学とは全くフィジカルが違います。そしてメンタルも違います。慌てません、スキがありません。
この強さの原因は下記の4点にあると思います。
1,科学的合理的ラグビー (肉体(栄養、トレーニング)、心理、データ重視、戦法、など) 2,その一環として完全なる脱体育会系組織の実現 3,医学部を含む大学組織を使ったスタップ陣の充実 4,実績や、ベネフィットなどからの有利なリクルート
3の「スタッフ陣の充実」の現状をラグマガ付録の写真名鑑で確認してみました。
学生以外のスタッフは筑波大は11名(コーチ陣も全員28歳以下の卒業生、寮なし全員自炊)に対し、帝京は28名(ほぼ全員専門家、アステチックトレーナー5名、薬剤師1名、栄養管理2名、ドクター2名、全員入寮)