『アンネの日記』について [雑感]
原題 "Het Achterhuis"(後ろの家)12 juni 1942 - 1 augustus 1944” は『アンネの日記』として知られている。戦後発行されて60カ国語以上に訳され、2500万部を超える世界的ベストセラーとなったそうだ。
もちろん、エスペラント訳もある。この本は、アンネが13歳の誕生日の時に貰った日記の記載から始まっている。
" Al vi, mi esperas, mi povos konfidi ĉiaĵojn, kiel ĝis nun al neniu mi povis, kaj mi esperas, ke vi estos por mi granda apoganto."
「あなたに希望します、今まで誰にも打ち明けられることが出来なかったことが、どんなことでも出来るようになることを、そしてあなたが私にとって大きな支えとなることを。」
深町眞理子さんの日本語訳ではこうある。
「あなたになら、これまでだれにも打ち明けられなかったことを、なにもかもお話できそうです。どうかわたしのために、大きな心の支えと慰めになってくださいね。」
でも、上記のエスペラント訳に「慰め」が加わっている。
私の「違和感」はここから始まった。この「慰め」という言葉は、アンネのものなのだろうか?
英訳本を買って見ると B.M. Mooyaart-doubleday訳では。
" I hope I shall be able to confide in you completely, as I have never been able to do in anyone before, and I hope that you will be a great support and comfort to me. "
これは、深町さんとほぼ同じだ。
では、原文はどうなのだろう。大体どの書籍にも、アンネの自筆が載っている。
これを解読するのは相当にやっかいだった。何より、知らないオランダ語だし、筆記体なので、よく見るとtの横棒が抜けていたり、eかlか分からなかったりする。ネットで検索をしたり試行錯誤の上、大学図書館を含め道内の図書館にオランダ語版が無いことが分かったので、オランダ語版を国立国会図書館から借りる事にした。自分で買うと1万円くらいするが、札幌市の図書館と国立国会図書館は相互貸借が出来るので、タダで借りる事が出来るのだ。ただし、館内でしか閲覧できない。この書籍の場合は部分コピーが可能だったが、司書の許可とコピー代がかかる(A4で1枚10円)。
それで得た原文は、以下の通り。
”Ik zal hoop ik aan jou alles kunnen toevertrouwen, zoals ik het nog aan niemand gekund heb, en ik hoop dat je een grote steun voor me zult zijn.”
Google翻訳だとこのようになる。
「今まで誰にも出来なかった私だからこそ、全てをあなたに託すことができますように、心より応援していただければ幸いです。」
何となく違う感じだなぁ。
この原文からエスペラント訳だと、
"Mi esperas, ke mi povos konfidi ĉion al vi, kiel mi neniam povis fari ĝin al iu ajn, kaj mi esperas, ke vi estos granda subteno por mi."
「私は希望します、いままで誰にも出来なかったことをあなたにはすべて打ち明けられることを。そして、あなたが私の大きな支えとなってくれることを。」
日本語に訳したのは私なので、生片端な文章だが、少なくとも、「慰め」という単語が含まれていないことは分かる。
どこで、この単語が入ってしまったのか、それが次の疑問だが、それは、もう深町眞理子さんに聞くしかないのだろうか。
ただ、『アンネの日記』には、a版(アンネが最初に書いた物)、b版(アンネが後に公開することを考えて手を加えたもの)、c版(ホロコーストの後、ただ一人生き残った父オットーが性に関することや家族間のトラブルなどを削除して出版したもの)があり、これらをすべて網羅した『アンネの日記 研究版』(文藝春秋 1994)がある。これを見れば、疑問が解けるかも知れない。
もちろん、エスペラント訳もある。この本は、アンネが13歳の誕生日の時に貰った日記の記載から始まっている。
" Al vi, mi esperas, mi povos konfidi ĉiaĵojn, kiel ĝis nun al neniu mi povis, kaj mi esperas, ke vi estos por mi granda apoganto."
「あなたに希望します、今まで誰にも打ち明けられることが出来なかったことが、どんなことでも出来るようになることを、そしてあなたが私にとって大きな支えとなることを。」
深町眞理子さんの日本語訳ではこうある。
「あなたになら、これまでだれにも打ち明けられなかったことを、なにもかもお話できそうです。どうかわたしのために、大きな心の支えと慰めになってくださいね。」
でも、上記のエスペラント訳に「慰め」が加わっている。
私の「違和感」はここから始まった。この「慰め」という言葉は、アンネのものなのだろうか?
英訳本を買って見ると B.M. Mooyaart-doubleday訳では。
" I hope I shall be able to confide in you completely, as I have never been able to do in anyone before, and I hope that you will be a great support and comfort to me. "
これは、深町さんとほぼ同じだ。
では、原文はどうなのだろう。大体どの書籍にも、アンネの自筆が載っている。
これを解読するのは相当にやっかいだった。何より、知らないオランダ語だし、筆記体なので、よく見るとtの横棒が抜けていたり、eかlか分からなかったりする。ネットで検索をしたり試行錯誤の上、大学図書館を含め道内の図書館にオランダ語版が無いことが分かったので、オランダ語版を国立国会図書館から借りる事にした。自分で買うと1万円くらいするが、札幌市の図書館と国立国会図書館は相互貸借が出来るので、タダで借りる事が出来るのだ。ただし、館内でしか閲覧できない。この書籍の場合は部分コピーが可能だったが、司書の許可とコピー代がかかる(A4で1枚10円)。
それで得た原文は、以下の通り。
”Ik zal hoop ik aan jou alles kunnen toevertrouwen, zoals ik het nog aan niemand gekund heb, en ik hoop dat je een grote steun voor me zult zijn.”
Google翻訳だとこのようになる。
「今まで誰にも出来なかった私だからこそ、全てをあなたに託すことができますように、心より応援していただければ幸いです。」
何となく違う感じだなぁ。
この原文からエスペラント訳だと、
"Mi esperas, ke mi povos konfidi ĉion al vi, kiel mi neniam povis fari ĝin al iu ajn, kaj mi esperas, ke vi estos granda subteno por mi."
「私は希望します、いままで誰にも出来なかったことをあなたにはすべて打ち明けられることを。そして、あなたが私の大きな支えとなってくれることを。」
日本語に訳したのは私なので、生片端な文章だが、少なくとも、「慰め」という単語が含まれていないことは分かる。
どこで、この単語が入ってしまったのか、それが次の疑問だが、それは、もう深町眞理子さんに聞くしかないのだろうか。
ただ、『アンネの日記』には、a版(アンネが最初に書いた物)、b版(アンネが後に公開することを考えて手を加えたもの)、c版(ホロコーストの後、ただ一人生き残った父オットーが性に関することや家族間のトラブルなどを削除して出版したもの)があり、これらをすべて網羅した『アンネの日記 研究版』(文藝春秋 1994)がある。これを見れば、疑問が解けるかも知れない。
あけましておめでとうございます。
本年も昨年同様、よろしくお願いいたします。
tyuuriさんのコメントを楽しみにしておりますが、拙ブログのコメント欄は年末年始、一時的に閉じております。
by ハマコウ (2023-01-01 14:51)
あけましておめでとうございます。
本年も宜しくお願い致します。
長く交流していた方のブログのコメント欄が「誹謗中傷」?で荒らされたため、ご本人が閉鎖してしまったことがありました。それと同じかと、心配していました。
さて、『アンネの日記』完全版ですが、日本語訳でも、疑問が解決できなかったので、今、国立国会図書館から、原本(オランダ語)の相互貸借を申請中です。1月中には届くでしょう。
なぜ、ここまでこだわっているのか、自分でもよく分かりませんが、多分、白黒ははっきりさせたいからですね。原文(アンネの自筆)は残されているのですから。
by tyuuri (2023-01-01 16:34)