香港🇭🇰で2019年6月26日に取り上げられていた記事です。一条のインタビュー動画も記事中に紹介されています。ご存知の方も多いと思いますが、あらためてご紹介します✨

世界選手権では氷に身を寄せキスをする羽生結弦が美しく震えています。氷の王子様の夢のようなコスチュームは伊藤聡美が作りました。

「オペラ座の怪人」や「SEIMEI」など、羽生結弦と伊藤聡美のコラボレーションが氷上で奇跡のパフォーマンスを生み出します。

2019世界選手権の後、スタッフは伊藤聡美のスタジオを訪れ、これらの衣装がどのように生まれたのか、そしてリンク外で羽生結弦がどのように見えているのかを訊ねました。

多くのトップ選手のための衣装を作りました。手がけた日本の選手の中には、羽生結弦、宇野昌磨、宮原知子、本田真凜などがいます。

試合用の衣装は、選手が見せたい動きや感情やパフォーマンス全体のストーリーも考慮しながらデザインしていきます。プログラムにあった衣装にすることでジャッジの注目を惹くようにします。

選手たちはいつも、これまでの衣装の中で最も軽いと言ってくれます。時折、繊細な装飾を賞賛してくれることもあります。

高校生から就職前まで、モヒカンにしたり、パンクな格好を続けてきました。他の人と違うことをするほうが楽しいといつも思っていました。

独立した理由の一つに、他の人と仲良くするのが苦手なことです。卒業後、バレエコスチュームを専門とする大企業に4年間勤務しました。入社当初は多くの人と関わりがあり、物事の制約も多かくありました。ですが、独立後は、自分のアイデアに挑戦することができますし、自分のアイデアを伝えることめできます。

独立したばかりの頃は、資金調達が本当に困難でした。当時は今ほど仕事が少なく、当初は主に子供向けのフィギュアスケートの衣装がほとんどでした。私がトップ選手のコーチに紹介されるようになったは、私の作品が徐々に子供たちのコーチに認められるようになったからでした。

独立して4年目の今、未採用のデザインをはじめ150〜200セットの衣装を作ったと思います。フィギュアスケートシーズン（8月〜3月）は、月に8〜10人分の服を作る必要があります。1セットの服を完成させるのには2〜3ヶ月かかります。

1シーズンで約40セットの注文があります。

すべての装飾を自分で行い、夏の間ノンストップで作業しました。一晩中忙しくて、一日寝ても2、3時間しか寝られないので、想像とは違うかもしれません。

2014年のことでした。羽生結弦から突然連絡があり驚きました。私が初めて手がけた衣装は「ザ　ファイナル　タイム　トラベラー」のエキシビション用衣装でした。

2014年GPFで羽生結弦はこの衣装を着てパフォーマンスを行いました。

私は毎シーズン羽生のために衣装を作ります、そしてすでに今では10セットほどがあります。

今シーズンは彼がエキシビション、フリー、ショートの3セットを制作しました。とても光栄に思っています。

羽生結弦の服を作ると、彼は厳しくて信心深い人だと感じることができます。私たちの協力体制は、ほとんどが暗黙のうちにあります。

通常、彼は私にプログラムの音楽を参考にして、衣装の色を指定して私に渡します。ですが、時に、いくつかの例外があります。

SEIMEIの衣装は羽生がほとんど指示しました。ですから羽生はデザイナーで、私はただの「アシスタント」と言えます。羽生は「SEIMEI」の衣装には思い入れがあり、陰陽師の衣装「狩衣」をベースにデザインする必要がありました。

ネックラインのフェイクツーピースからカフスの引きひもまで、ディテールはすべて古典的な衣装からきています。衣装の再現に基づきながらも、機能を確保するという方法は、大きな課題です。この衣装のプロトタイプを手に入れるまでに5回以上もかかりました。

襟と袖口の柔らかい緑と紫の色も羽生によって指定されています。狩衣に合わせたパンツに最もよく使われるカラーです。フィギュアスケートの試合用の衣装は、本物の狩衣のようなワイドパンツとは組み合わせることができないため、パンツのカラー要素は特別に抽出し、狩衣感をだしています。羽生の丁寧なデザインと音楽へのこだわりから、彼の演技への想いが伝わってきます。服を着る時も、集中力と気配りがあり、サンプルの服を着た後、その場で大きな動きをして確認します。服の性能、見た目、フィット感など、細部をひとつひとつ確認していきます。

2018年平昌オリンピック「SEIMEI」は、2015年NHK杯の「SEIMEI」とは全然違います。大面積のビーズ刺繍から、エレガントな刺繍に置き換えられただけでなく、フェニックステールパターンもダイヤモンドに置き換えられて衣類の重量が軽減され、生地もより軽い素材に置き換えられました。

2016年GPFで羽生結弦が4連覇を果たした後、「ノッテステラータ」の衣装も作りました。羽生のためにデザインした衣装の中では最も大胆なものです。当時、羽生はサンサーンスの「白鳥」の音源を指定して、自由にデザインさせてくれました。「白鳥」という曲は、これまで多くの優れたバレエ作品に取り入れられてきたので、すぐにバレエ衣装のスタイルからデザインを取り入れることにしました。男性のフィギュアスケートの衣装はバレエの衣装と同じではありません。羽生の中性的な見た目に合わせ冒険してみました。背中の中心線に向かってV字型の深い切り込みを作りました。切り込み部分は羽生の肌色によく似た生地を使用しています。遠くから見ると、羽生の美しい肌を際立たせるために素肌が露わになっているようにも見えます。薄いボディの形状。

羽生はこのデザイン図を見てすぐに、デザインは良かったと言いました。深い切り込みには抵抗がなかったようです。衣装はプログラムの世界観を衣装が助ける限り、羽生は基本的に拒否しません。

衣装のテーマはもちろん白鳥で、羽を使って暖かく柔らかな感じを表現しています。見づらいかもしれませんが、羽を軽くスマートに見せるために、生地を羽にカットして本物の羽と混ぜました。試合中にデコレーションが落ちるとポイントが差し引かれるので、フィギュアスケートの衣装は実際にはあまり羽毛がありません。作っているときに何度か縫いましたが、縫った後は接着剤を塗ってから、羽が落ちないようにラインストーンを付けて固定しています。

輸入されたイタリア製の廃盤になっている生地は、独特のツヤがあり、背景色が白でも単調ではありません。階層感を強調するために、装飾にはダークラインストーン、ブラック、グレー、さらにはピンクのラインストーンも使用しました。

羽生は特にラインストーンの数を要求していませんが、3,000を超えるラインストーンが装飾されている場合でも、全体の重量は850グラム以内に抑える必要があります。

羽生が初めて「星降る夜」の衣装を試着したとき、袖についていた大きなストーンが重すぎてジャンプの動きに影響を与えると感じたので、その場でストーンをはがしたそうです。

このスーツは羽生にぴったりで、2018年の平昌冬季オリンピックでも着てくれました。

とても嬉しかったです。

大会では選手たちが大きな動きをするので、伸縮性があり軽い品質の生地を選ぶようにしています。男子選手の服装は850グラム以内、女性選手の服装は350グラム以内です。目に見えない部分はすべて取り除き、ラインストーンは軽量化のために可能な限り薄くします。また、試合中はジャンプやスピンが多く、衣類の重さが違うと重心が片側にずれてしまいます。プレイヤーが完璧な動きをするために、試合用の衣装を作るときには、左右の重みのバランスをとるようにしています。装飾に関しては、スワロフスキーのラインストーンに加えて、軽いラインストーンでは表現できない立体感と繊細な光沢を表現できるため、服に広い範囲の刺繍を施します。徐々にデザインが氷に映ると独特の色に変化するので、さらにエアブラシなどの道具を使って、通常の染色では実現できない効果を生み出します。

フィギュアスケートが好きなだけでなく、氷の上で自分の服がどのように見えるかを知りたいという理由で、試合を見に行くことがよくあります。自分の目で見た後、色を濃くして少し装飾を加えたり、スカートの揺れ方に合わせて形を整えたりすることを考えます。また、フィギュアスケートを観戦していると、実際に観客に背を向けて滑る選手が多いことに気づいたので、背中のデザインや装飾に特に気を配り、選手の背中を美しく見せています。

より良い試合用の衣装は、パフォーマンスの効果をよりよく表すことができます。

コスチュームデザインをする前、フィギュアスケートの大会をよく見ていました。大学時代に浅田真央さんの大会をテレビで見て、フィギュアスケートのコスチュームを作りたいと思うようになりました。

良い衣装は、選手のモチベーションを上げることができると思います。

これまでにパワフルで優秀なトップ選手にたくさん会うことができました。

好きなことをして、生きていけることは、とてもうれしいことです。（一部抜粋意訳終わり）