手塚治虫著 名作『火の鳥』(乱世編)まとめ・感想
前回の「望郷編」に引き続き今回は
「火の鳥 乱世編」のまとめ・感想を記したいと思います。
手塚治虫著 名作『火の鳥』(乱世編)まとめ・感想
『火の鳥』作品説明
1954年から手塚治虫がライフワークとして発表してきた漫画作品である『火の鳥』。
古代から未来、地球や宇宙を舞台に人間や生命の本質について
不死鳥とされる「火の鳥」と関わり翻弄され続ける人間模様を描いた作品です。
「黎明編」「未来編」「大和編」「鳳凰編」「復活編」「望郷編」「乱世編」「宇宙編」「太陽編」と複数の編から成り立っており、全てが1つの物語で完結しています。
過去と未来を行き来しており、作品全体で無限の輪廻転生を表した作りになっている本作。
不死とは何か?
幸せとは何か?
人間とは何か?
生きるとは何か?
いつの時代においても変わらない人間のテーマや苦悩に寄り添う作品です。
『乱世編』ストーリー
平安時代の終わりごろ(12世紀末)マタギの弁太は、さらわれた許嫁のおぶうを追って、京の都に出てきました。 弁太は、そこで牛若という少年に出会い、家来になりました。 一方、おぶうは時の権力者・平清盛に仕えていました。 平清盛は、永遠の命を求めて火の鳥を探していましたが、結局死んでしまいます。 やがて都は、権力をめぐる戦乱の中に巻きこまれ、騒然とした世の中になっていきました。 牛若は成長して義経と名を改め、平家のライバル・源氏の大将として活躍し、弁太はそれに従います。 けれども勝負のために、兵の命を虫けら以下に扱う義経に反発を覚えました。 そんな折、壇ノ浦の戦いのさなかに、弁太は、ようやくおぶうとの再会を果たしたのですが……。
(手塚治虫オフィシャルサイトより)https://tezukaosamu.net/jp/manga/401.html
『乱世編』感想
おぶうの気持ち
平安時代を歴史上の人物と準えて描いた今作。
木こりの弁太と絶世の美女おぶうが愛し合いながらも
運命の悪戯によってすれ違うもどかしさがありました。
平安版ロミオとジュリエットといえば良いでしょうか?
しかし、個人的におぶうは美女だったことから平清盛に連れ去られ寵愛を受けることになり
よかったのではないかと思いました。
もともと田舎育ちで強く都会への憧れを持っていた彼女にとって
平清盛は強引であったにせよ、夢を叶えて家と地位を与えてくれた存在。
弁太が助けに来た時も「会いたいけどここを離れない」と宣言しているほど
今の暮らしを気に入っていることが分かりました。
見た目がいい女性はいつの世も運が強いものですね。
乱世に生きる人
権力争いのためなら人殺しも厭わない。
殺される前に殺してしまえという戦国の常識。
昔の日本でもそこらじゅうで人が死んでいたかと思うと恐ろしいものです。
弁太はとにかくまっすぐで純粋。
乱世において時間の経過や権力に抗える可能性がある唯一の人だと感じました。
結局強い力に巻き込まれて死んでしまいますが、
どうして人は皆、彼のようにまっすぐ生きられないのだろう?
と悲しくなってしまったものです。
おわりに
憎み合い権力を求め合うことの虚しさたるや…。
他人の悲しみや苦しみの上に立つ幸せなんて幻です。
そんな権力者に不老不死が与えられていたら、
現世でもまだ人殺しが許されていたかもしれません。
かなりの長編ですが虚しく切ない乱世編、
歴史好きな人にも読んでもらいたい一冊です。