2022年9月23日の西九州新幹線開業が間近に迫るJR九州長崎駅。
今回はここからJR九州の観光特急「36ぷらす3」に乗車します。
★★本記事記載の運賃、ダイヤなどは2022年5月の乗車日現在のものです。
「36ぷらす3」は毎週木曜日~月曜日にかけて九州各地を巡る観光特急で、全席がグリーン車指定席です。
乗車のみのグリーン席プランのほか、ランチプラン、ディナープランなど食事付きのプラン、宿泊付きの旅行プランなど多彩な利用方法が用意されています。
その中でもグリーン席プランは価格が最も安く、空席があれば一般の特急列車と同様に「みどりの窓口」やJR九州のサイトから予約購入することもできるなど、最も気軽に「36ぷらす3」の魅力に触れることができるプランです。
今回はそのグリーン席プランで長崎から博多まで乗車します。
乗車のために支払った費用は、運賃2860円+グリーン券6500円の計9360円で、乗車2週間ほど前にJR九州のサイトから予約決済。九州到着後に博多駅の券売機で発券しました。
長崎駅3番線ホームで発車時刻を待つ「36ぷらす3」の黒い車体。
「36ぷらす3」の車両はかつて九州新幹線開業前の博多〜西鹿児島間で特急つばめ号として活躍した787系の6両編成を大幅にリニューアルしたものです。
博多寄りから1号車と2号車がグリーン個室、3号車がグリーン個室と販売カウンター、4号車がマルチカー(フリースペース)、5号車と6号車がグリーン席車両となっており、
6両編成での定員わずか105人という数値からも贅沢な車内の造りを想像することができます。
今回は5号車に乗車します。
車体にも大きく描かれている36+3という変わった列車のネーミングは、九州が世界て36番目に広い島であることなどにちなんだものです、
5号車グリーン席車内。
同じグリーン席車両でも6号車は畳敷きになっており、靴箱を備えたデッキで靴を脱いで客室内に入る斬新な造りになっています。
グリーン席の座席は九州新幹線で使われているものがベースで、窓は左右に動かす障子の向こうに上下に動かす簀子が透けて見えています。
お隣4号車マルチカー車内。
1両全てがフリースペースとなっています。
天窓を思わせる明るい天井と広々とした空間が列車内にいることを忘れさせます。
マルチカーの中央部にはソファが置かれ、背後には「LOUNGE BAR39」の金色のロゴが。乗車記念撮影の格好のスポットとなっていました。
さらにお隣3号車には販売カウンターがあり、乗車記念品や軽食、アルコールを含む飲料などを購入できます。
この3号車は、先述の博多〜西鹿児島間の特急つばめ号として、この車両が運転されていた時代にビュッフェとして使われていた車両で、間接使用に照らされたドーム型の天井などは当時からのものです。
特急つばめ号が廃止されて以降は、一般の座席車両に改造され、他の特急列車に使用されていましたが、
「36ぷらす3」運転にあたり、ビュッフェとして使われていた当時に近い形に復元されたようです。
なお3号車より前の1号車、2号車のグリーン個室席については別途旅行商品などとして発売されていますので、5号車、6号車のグリーン席の乗客が利用できるのは、ここ3号車までとなります。
3号車の冷蔵庫には酒類を含む飲料が並んでいました。
所望の品が売り切れるのを心配してか、3号車販売カウンターは長崎駅発車前から長い行列ができる盛況でした。
3号車の販売カウンターで購入したカレー、かつサンド、炭酸水。
購入した飲食メニューは自席のほか、4号車のマルチカーのテーブル席でいただくこともできます。
マルチカーでは車内イベントなども催されますが、それ以外の時間帯については、
5号車、6号車のグリーン席車両と販売カウンターがある3号車の中間という連結位置から考えても、
グリーン席プランの利用者が、食事や談笑の場所として活用するのがふさわしいのではないか。と感じました。
乗車記念に購入したクリアファイル。
手揚げ袋は有料ですが、それ自体が乗車記念品になりそうです。
マルチカーのの障子は縦方向に開きます。横方向のグリーン席の障子も含め、開口部は窓全体の半分で、単純に考えれば車窓を楽しむのには適していませんが、
敢えて車窓を「覗き見る」ことを意識した仕掛けとも言われているようです。
障子を開けて車窓を「覗き見る」と、有明海越しに島原半島と雲仙普賢岳を望むことができました。平成初期の大噴火からすでに30年以上が経過しています。
有明海に面した小長井駅でしばらく運転停車。到着と同時に長崎方面へ向かう普通列車が発車していきます。
食後もしばらく居座ったマルチカーには大きなモニターがあり、九州の観光案内ビデオがエンドレスで流されていました。
5分、10分と続く運転停車中も手持ち無沙汰な時間の長さを感じることはありません。
小長井駅を発車し次の肥前大浦駅との間で長崎県から佐賀県に入った列車は、その先の信号場で特急列車と行き違うため再び運転停車。
特急かもめ号が約2時間で結ぶ博多〜長崎間を「36プラス3」は約3時間半をかけゆっくりと走ります、
長崎行の特急かもめ号が隣の線路を通過すると発車。
振り返ると先程隣の線路を駆け抜けた特急かもめ号が、湾に沿う線路を走り去る姿が見えていました。
このように長崎本線の有明海に沿う区間は急カーブが連続し、長崎〜博多間の高速運転のネックとなっていましたが、
2022年9月に西九州新幹線が開業すると、長崎〜博多間の鉄道輸送は、佐世保線武雄温泉駅での特急と新幹線の乗り継ぎがメインとなり、この区間を走る特急列車はなくなります。
また36ぷらす3についても、乗車中の長崎〜博多間の運転は9月19日をもって終了となることが発表されています。
肥前浜駅に到着。
19:09〜19:24まで15分の停車時間がありホームに降りることができます。
九州各地を巡る「36ぷらす3」の各行程では、途中駅のホームや駅舎でイベントや物販などが行われる「おもてなし駅」が設定されており、長崎~博多ルートでは当駅が該当します。
長崎本線肥前浜駅は長崎本線と佐世保線が分岐する肥前山口駅から4駅目。
味わい深い木造駅舎が乗客を出迎えます。
肥前浜駅での「おもてなし」は19時過ぎという停車時刻に相応しく「お酒」。
駅舎の一角は「HAMA BAR」として開放され地酒の試飲や販売が行われていました。
肥前浜駅での途中下車を終え、ここでようやく予約していた5号車の自席へ。
各座席には沿線の見どころなどを集めたリーフレットと記念乗車証などが用意されています。
「36ぷらす3」は木曜日に博多を発車、熊本経由でその日の夕方に鹿児島へ、翌日以降、宮崎、大分と周り日曜日の夕方に博多に戻ったのち、月曜日に長崎を往復する運転スケジュールになっています。
「金の路」と名付けられた長崎ルートのうち復路の長崎→博多は全行程で唯一の夜間走行となります。
肥前浜駅を発車する頃には日も暮れ、車窓が闇に包まれると、視線は否応なしに車内の凝った造作に惹きつけられます。
「36ぷらす3」車内の至ることろには、福岡県の伝統工芸「大川組子」の内装が施されています。
19:49佐賀に到着。20:05の発車まで16分停車。
19:54。向かいのホームに佐世保からの特急みどり28号が到着し、2分停車ののち博多へ向け先に発車していきました。
特急みどり28号の博多着は20:38で、博多まで「36ぷらす3」に乗っていたのでは間に合わない、博多発21:09の新大阪行最終の山陽新幹線に乗り継いで、阪神地区へその日のうちに帰ることが可能になります。
「36ぷらす3」は停車駅間の区間乗車も可能です。
今回は 長崎→佐賀間の区間乗車が多かったようで、佐賀~博多の最終区間は空席も少なくない状況に。
佐賀駅発車後にクルーから配られたアメ。
販売カウンターで乗車記念品として販売もされていました。
鳥栖から鹿児島本線に入り列車は福岡の市街地へ。
終点博多からの乗り換え放送が始まりました。
21:05。終点博多駅に到着。
ここから列車を乗り継ぐと九州新幹線で鹿児島中央や熊本、在来線特急で大分や長崎のほか、山陽新幹線区間運転のこだま号で福山まではその日のうちに帰ることができます。が。
木曜日の朝から九州を巡り、5日目の月曜日の夜に全行程を終え博多駅に戻ってくる「36ぷらす3」の運転スケジュールを考えると「その日のうちにどこまで帰れるか」というような慌ただしい発想は似つかわしくないようにも感じられます。
21時ではまだ宵の口の大都会福岡のこと、
飲食店を訪れたりホテルにチェックインして、列車で巡った九州旅行を回想し、翌日以降ゆったりと帰路につきたいものです。
最後までお読みいただきありがとうございました。