西浦特急 鉄道と旅のブログ

鉄道・飛行機などで国内外を旅行した様子のほか、鉄道を中心に交通全般の話題を取り上げます。

祝開業!西九州新幹線かもめ号乗車記(博多15:54→武雄温泉→長崎17:22)

福岡県福岡市JR博多駅。今回はここから2022年9月23日に開業した西九州新幹線経由で長崎へ向かいます。

西九州新幹線のうち2022年9月の開業区間は佐賀県武雄市の武雄温泉駅から長崎駅までの間です。

博多から長崎へ向かう場合、武雄温泉駅までは西九州新幹線に接続する在来線特急リレーかもめ号を利用することになります。

乗車券については博多〜武雄温泉〜長崎で指定席を利用すると運賃2860円、指定席特急券3190円の計6050円となりますが、

2022年10月現在[おためし!かもめネット早特7]という企画乗車券がJR九州のサイトで発売されており博多〜長崎間を西九州新幹線経由で3200円で移動することができます。今回はそちらを利用しました。

博多駅改札口の発車時刻表。今回利用するのは博多15:54発の特急リレーかもめ41号。(下から2段目)

特急リレーかもめ号の行先は先述のように西九州新幹線乗り換えの武雄温泉駅ですが、長崎行の西九州新幹線かもめ号に接続する列車ということで、博多駅の行先表示は長崎になっています。

実際とは違う行先を掲げることには賛否両論ありそうですが、

武雄温泉行では長崎へ行ける列車であることが伝わらないうえ、武雄温泉駅で特急リレーかもめ号から下車した乗客の多くが長崎行の西九州新幹線かもめ号に乗り継ぐと想定されているため、これで良いのかも知れません。

博多駅4番線で発車を待つ特急リレーかもめ41号。

西九州新幹線開通前日まで博多と長崎を結んでいた在来線特急かもめ号でも活躍していた787系での運転です。

特急リレーかもめ号は787系のほか885系で運転される便もありますが、787系で運転される特急リレーかもめ号の普通車指定席を利用する際は、ビュッフェ車両として登場した出自を持つ4号車が、他の車両よりシートピッチが広くおすすめです。(写真は4号車車内)

上記のような格安の企画切符でもネットでの予約時に車両や座席を選択することができます。

定刻に博多駅を発車した特急リレーかもめ号は途中の鳥栖まで鹿児島本線を南下します。

路線名としては鹿児島本線ですが、2011年の九州新幹線全線開通以後、博多から鹿児島本線を下る特急列車は由布院方面へ向かう数本を除いて佐世保 長崎方面ばかりで、最近では長崎本線の一部のような印象もあります。

鳥栖で鹿児島本線と別れ、長崎本線最初の停車駅となる新鳥栖は九州新幹線との乗り換え駅でもあります。

博多から長崎方面へ向かう西九州新幹線の列車は、元々ここまで鹿児島方面へ向かう九州新幹線を走行し、新幹線よりレール間の幅が狭い在来線に合わせるため車輪の幅を変えたうえで在来線に直通。

佐賀駅などを通ったのち、武雄温泉駅で再び車輪間の幅を広げて、今回開通した西九州新幹線区間に直通することにより、博多〜長崎だけでなく、山陽新幹線にも乗り入れ新大阪〜長崎などを直通することが想定されていました。

しかしレールの幅に合わせて車輪の幅を変える技術と新幹線区間での高速運転を両立させることは容易ではなく、車両の開発を断念せざるを得なくなってしまいました。

新鳥栖から新幹線車両が直通する予定だった在来線の長崎本線を走行すること12分。16:33佐賀駅に到着。ここまで博多から約40分。

車輪間の幅を変える車両の開発断念後、新鳥栖〜武雄温泉間に現在の在来線とは別の新幹線規格の路線を新たに建設することも検討されていますが、

人の流れが長崎ではなく博多方向にむいている佐賀県からみれば、現在の在来線特急でも佐賀から40分程度の博多までの所要時間が、新幹線によって20分から25分程度に短縮されるメリットは大きくはなく、

それよりも新幹線規格の新線の建設費負担や、現在の長崎本線がその新たな新幹線の並行路線としてJRから経営分離される恐れがあることなど、デメリットのほうが大きいという見地から、新幹線建設には反対の立場をとり、佐賀県内(新鳥栖〜武雄温泉間)の西九州新幹線開通は現状では見通しが立っていません。

佐賀を出た列車は佐賀平野を快走。

16:44。永年親しまれた肥前山口から駅名が変更になった江北駅に到着。

江北駅を発車した列車は武雄温泉駅へ向かうため、西九州新幹線開通まで長崎行の在来線特急かもめ号が走行していた長崎本線と別れ佐世保線に入ります。

江北から先諫早までの区間、今回開通した西九州新幹線と、長崎本線とはかなり離れたところを通りますが、

博多と長崎を結ぶという機能の共通面から、長崎本線の江北〜諫早間については西九州新幹線の並行在来線とされ、新幹線開通後の扱いが問題となりました。

ここでは議論の末、一部を非電化化してランニングコストを下げたうえで、当面はJRがこの区間に残るローカル列車の運行をすることで決着したようですが、

全国に目をやると北陸新幹線が2024年に敦賀まで南進したのち小浜経由で京都、新大阪方面へ建設されることが決定したことに伴い、この新幹線経路にかからない滋賀県を通る湖西線が関西と北陸を結ぶという機能の共通面から北陸新幹線の並行在来線とする見解が示され、新幹線開通後の扱いが議論を呼んでいるようです。

さて江北を発車した列車は佐世保線を西進。江北から武雄温泉までは距離にして13.7km。特急リレーかもめ号は10分で走行します。

従来の佐世保方面への特急に加えて、長崎方面へ向かう客を乗せた特急リレーかもめ号が乗り入れるようになったこの区間は運行本数の増加に備え、西九州新幹線開業に合わせて複線化されました。

16:55。高架駅の武雄温泉駅に到着。

武雄温泉駅は西九州新幹線との乗り換えの利便のため、同じホームに在来線と新幹線が停車する構造になっています。

乗り換え時間は3分ですが、博多からの特急リレーかもめ号が定刻に到着すれば余裕を持って乗り換えることができます。

武雄温泉駅に到着した特急リレーかもめ41号(左)と長崎行西九州新幹線かもめ41号(右)。

西九州新幹線の車両は東海道新幹線などで活躍しているN700S系をベースとした車両6両編成での運転に統一されています。

運転本数が1時間に1〜2本、走行時間も途中駅に全て停車するものでも30分程度のため、4編成計24両のみで全運用が賄われるようです。

西九州新幹線かもめ号指定席車内。横4列の幅の広いシートで全席にコンセントが備わっています。

16:58。特急リレーかもめ41号からの乗り換えが終わり武雄温泉駅を発車した、西九州新幹線かもめ41号は淀みのない加速で短時間のうちに最高時速260kmに迫る速度に達しました。

西九州新幹線の長崎までの途中駅は嬉野温泉、新大村、諫早の3駅のみ。

全駅に停車する便、諫早と新大村に停車する便、諫早のみに停車する便がありますが、愛称はかもめ号に統一されています。

乗車中のかもめ41号は諫早のみ停車の速達便で武雄温泉から終点長崎まで69.6kmをわずか24分で走行します。

嬉野温泉駅付近を通過。嬉野温泉は今回の開通区間では唯一在来線接続のない駅です。

新大村駅を通過。西九州新幹線は在来線の佐世保線と大村線を短絡するような経路で武雄温泉から新大村に達したのち、大村線に沿うルートで諫早へ向かいますが、

西九州新幹線が佐世保から離れた経路で建設されたことから、佐世保と長崎を結ぶ機能を有する大村線は並行在来線の議論を免れたようてす。

17:13。武雄温泉から15分で長崎県第2の都市諫早に到着。在来線駅に併設される形で新幹線ホームが建設されました。

17:14諫早発車。次は終点の長崎です。

諫早〜長崎間の鉄道については長らく現在長与経由と呼ばれている非電化単線の路線が担っていましたが、昭和47年に長崎市街地に直結するトンネルを経由する市布経由の短絡ルートが開通。西九州新幹線開通前日まで長崎行の特急列車はそちらを走行していました。

そして今回新たに長崎まで西九州新幹線が開通したことで諫早〜長崎間には3本のJR九州の路線が並行して存在することになっています。

単線非電化の長与経由の旧線沿いは長崎のベッドタウンとして沿線開発が進み、長崎近郊では廃線議論の対象とならないレベルの利用があり、

後年に開通した市布経由の新ルートは博多〜長崎を結ぶ特急列車が新幹線開通で廃止になっても、佐世保〜長崎を結ぶ快速列車が大村線から乗り入れるなど幹線的機能が残っており、それらの列車を時間のかかる旧線へ迂回させることもできなかったということでしようか。

隣の佐賀県が新幹線が開通することで在来線がJRから切り離されてしまうという懸念に振り回されているという印象さえあることを思えば、

新規開通の新幹線と2本の在来線がJRの路線として共存しているのは皮肉にも思えます。

諫早から長崎までの所要時間は旧線経由の普通列車が50分程度、新線経由の快速列車が25分程度となっていますが、新幹線ではわずか8分。

長いトンネルを抜けると、そこはすでに斜面まで広がる長崎の市街地でした。

17:22。長崎駅新幹線ホームに到着。

博多〜長崎間は新幹線開通まで長崎本線経由の在来線特急かもめ号で約2時間でしたが、今回は博多を特急リレーかもめ号で発車してから1時間28分での到着。新幹線開通により約30分短縮された計算です。

ただ新たに武雄温泉での乗り換えが生じたことや料金値上げにより、かえって博多•福岡〜長崎を2時間〜2時間半程度で結ぶ高速バスに客が流れるのではないか。という見方もされているようです。

また広域的には、例えば関西方面から長崎へ向かう場合、これまで博多1回だった乗り換えが博多と武雄温泉の2回となり、30分の短縮も全体の所要時間を考えればインパクトは小さいと言わざるを得ず、場合によっては航空利用の増加に繋がるとも考えられます。

当初の計画とは違った形での開通となったことで様々な懸念材料に目が向きがちな西九州新幹線ですが、

博多から鹿児島中央までの全線開通から11年を迎えた九州新幹線も、当初は西九州新幹線と同じく博多に繋がらない新八代〜鹿児島中央間が先行開通し、新八代での在来線と新幹線のリレーが数年間続いていました。

しかしその間にも新幹線の一部開通による所要時間短縮の効果で博多〜鹿児島間の鉄道需要は増加していたようですし、

西九州新幹線も未開通の佐賀県内区間の動向に関わらず、当面は沿線を巻き込んだ積極策で開通区間の存在価値を高めていってほしい。というのが初乗りに訪れた一鉄道ファンとしての感想です。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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