海外旅行回想録(10) ー スウェーデン

はじめに

この記事のシリーズでは三十数年前に行った海外旅行を中心に特に思い出に残っている観光の回想録をご紹介しています。

この記事ではスウェーデン旅行の体験をご紹介したいと思います。

10.スウェーデン

三十数年前の夏に、デンマーク、フィンランド、スウェーデンそしてノルウェーの北欧4か国を巡る団体ツアーに参加しましたがフィンランドの次にこのスウェーデンを訪れました。

スウェーデンは以前から社会福祉が手厚い自由な国だという印象が漠然とありました。しかしその他には特にあまりこれといった強い印象があるわけではありませんでした。

多分多くの日本人にとっては「スウェーデンといえば?」と問われると思わず「何でしょう?」となるのではないでしょうか。

敢えて言えば、ダイナマイトを発明したアルフレッド・ノーベルの遺言により1901年に創設された「ノーベル賞」、世界的に有名な家具メーカーである「イケア」、安全第一に頑丈に作られた自動車である「ボルボ」などが思い浮かびます。

ところが「スウェーデンの観光」という観点からは全くこれといった観光スポットが思いつきません。

日本政府観光局(JNTO)がまとめた2017年のヨーロッパへの日本人訪問者数ランキングでは、スウェーデンは、比較的少ないとされるベルギー(18位 6.8万人)よりもさらに少ない19位の4.8万人でした。1位ドイツの58.5万人の1/10以下です。

今回の旅行ではいったいどのような観光場所があるかということが最大の関心事でした。

ヘルシンキからストックホルムへ

ヘルシンキの観光を終えた後夕方に、私たちの団体ツアーはフィンランドのヘルシンキの港からシリアラインという有名なフェリーへ乗り込みました。スウェーデンのストックホルムの港まで1泊の船旅です。

下の写真はその船の甲板の様子ですが、ヘリポートのようなマークが書かれているだけの広々とした少し殺風景な看板でした。

現在はもっと近代的でリゾート感たっぷりの新型船に変わっていると思います。

次の写真は船の甲板から撮影したヘルシンキの港を守ってきた「スオメンリンナの要塞」の姿です。

石垣で囲まれた頑強な要塞である「スオメンリンナの要塞」はフィンランドで最も人気のある名所の一つだそうです。1991年には世界遺産に指定され、ヘルシンキの中心部からフェリーで簡単に観光に行くことができるようです。

次の日の朝にスウェーデンのストックホルムの港へ到着しました。なおこの船での航行の様子は「海外旅行回想録(8) ー フィンランド」で詳しく紹介しています。

   

上の写真はストックホルムの港付近の様子です。

下の写真はジブリの「魔女の宅急便」のモデルとなったとも言われている旧市街ガムラスタンの遠景です。多分ストックホルムで最も有名な風景だと思います。

ちなみにクロアチアのドゥブロヴニク旧市街もジブリには公式には認められていませんがやはり「魔女の宅急便」のモデルだと噂されています。ドゥブロヴニク旧市街の観光についてはこのブログの「新緑の絶景を求めてクロアチア・スロベニアへ観光旅行(3)」でご紹介しています。

港に面した歴史的な建物群の姿がどっしりと落ち着いていてとても印象的です。

   

ガムラスタンは最も人気がある観光地ということで路地は観光客でかなり混み合っていました(左上)。また立派な建物の王宮にも立ち寄りました(右上)。

下の写真はノーベル賞の授賞式が執り行われるコンサートホールです。

当日コンサートホールの前の広場にはテントのお店がたくさん出ていました。

ドロットニングホルム宮殿

ウェーデン王室の居城であるドロットニングホルム宮殿は、ストックホルム郊外にあるメーラレン湖のローベン島にあります。

広大な庭園を有するクリーム色の宮殿はその優美さから「北欧のヴェルサイユ」とも呼ばれています。

18世紀の姿がほとんどそのまま残されており、1991年に「ドロットニングホルムの王領地」として王宮、宮廷劇場、中国離宮、庭園が世界遺産に登録されています。

ストックホルムの中心から陸上交通でも行けますが今回のツアーでは約50分かけて船で行きました。

上の写真のように「DROTTNINGHOLM(ドロットニングホルム)」と大きく書かれた船に乗りました。そこは大人気の観光地のようで小さな船ですが当日はほぼ満員でとても混み合っていました。

船から見た途中の風景です(上)。周辺は小高い丘ばかりのようで緑に囲まれてとても爽快なクルージングでした。

   

左上の写真は船から下りたところです。写真に写っている人たちは私たちのツアーに参加した総勢十数名の人たちです。右上はドロットニングホルム宮殿です。クリーム色の壁と緑色の屋根が特徴的な優雅な建物です。

窓から見たドロットニングホルム宮殿の広大な庭です(上)。フランス式庭園のように左右対称に配置されていてベルサイユ宮殿の庭と類似していると思います。

当日はドロットニングホルム宮殿の部屋の一部(王室の居住区以外)や庭をゆっくりと観光しました。

ミレスゴーデン

次に向かったのはミレスゴーデンという芸術的な観光スポットです。これはスウェーデンの代表的な彫刻家カール・ミレス (1875~1955年)の彫刻庭園です。

ストックホルムの北東リディンゴー島にあり、ミレスの邸宅と庭園に彼の彫刻作品などがたくさん展示されています。ミレスの作品はギリシアや北欧神話をテーマにしたものが多く、明るく伸びやかで生き生きとした躍動感に溢れています。

上の写真はミレスの最も有名な作品だと思いますが「神の手」です。美術の教科書で一度見た記憶があります。また箱根の彫刻の森美術館の屋外展示でも見ました。人は所詮は神の手の中で踊っているだけだということでしょうか。

上の作品ではイルカの上を人が走っています。人の体の重心が後ろへもっていかれているということはイルカの速度が速過ぎるという状況でしょうか。バランス的にはとても不安定ですが、非常にリズミカルな動きを感じる面白い作品です。

  

左上は「神の手」の遠景です。また右上の写真の一番右には有名な作品「人とペガサス」が見えています。「人とペガサス」も箱根の彫刻の森美術館に展示されています。

   

海に面した彫刻の庭はテラス式になっていてとてもおしゃれな雰囲気の中で作品をじっくりと鑑賞することができました。散策するだけでもとても気持ちが良い場所だと思います。

ヴァーサ号博物館

1628年処女航海に出たヴァーサ号はストックホルム港で転覆し沈没したそうです。その333年後にこの軍艦は引き上げられました。現在この船は世界で最も美しく保存されている17世紀の船と言われています。

上の写真は訪れた時に博物館の入り口付近に展示されていた大砲です。表面に銅独特の錆である緑青が見えているので典型的な青銅製の大砲だと思われます。館内ではほぼ原形を留めた昔の軍艦の姿を見ることができました。この博物館は現在ではもっと立派な建物になっているようです。

下の写真は観光の途中で立ち寄った公園の中で人々が巨大なチェスを楽しんでいるところです。このような風景は世界でも珍しいのではないかと思います。

また写真を見て分かるように公園は人々でとても混雑していました。ほとんど地元の人だと思われますが日本とは違い公園がとても有効に活用されていると感心しました。

スウェーデンは夏が短いので、できるだけ野外で過ごして最大限日光に当たるようにする習慣が身についているというのがその理由なのでしょうか。

ところで今回のストックホルム観光では、半日の自由行動の時間がありました。

特にこれといった観光スポットが思いつかなかったので噂で聞いていた「地下鉄駅のアート」を見に行くことにしました。たくさんの駅(地下鉄のトンネルの壁や天井)で絵画を中心としたそれぞれ独特なアートが展開されていてとても珍しい風景に驚かされました。

どちらかというととても派手で奇抜な作品が多かったように記憶しています。

スウェーデン人と英語

今回のストックホルム観光の自由行動の時には地下鉄アートを見たり、デパートを覗いたりしました。その間現地の人に何度か道を尋ねたりしました。

すると驚いたことにどの人もとても流暢な英語で答えてくれました。イタリアなどヨーロッパの他の国ではホテルや駅などごく限られた場所以外では英語はなかなかうまく通じません。

スウェーデンでは公用語としてはスウェーデン語が話されているそうですが、なぜか公用語に指定されてもいない英語も大丈夫だということになります。

スウェーデンでは子供の学校での英語教育は日本より低学年で始めるものの大差はないように思います。ただし根本的に違うのは、スウェーデンでは幼いころから勉強以外で自然に英語に慣れ親しんでいるということと仕事に就いてから英語が大変重要であるという意識が非常に強いということだと思われます。

子供は英語の音楽を聴いたり、TVドラマや映画を英語で聞いたり、雑誌や本を英語で読む機会がとても多いようです。TVドラマや映画は英語圏のものが多く、字幕はスウェーデン語でも音声は英語のままで聞くそうです。子供は小さいころから英語で色々なメディアを楽しむことを覚えるのだと思います。

また大人になってから会社に就職すると英語圏に支店があったり、英語圏の会社と取引があることも多く、必然的に会社では英語を使うことが多くなるそうです。そのため仕事では英語がほぼ必須になるという強い認識があるようです。

このような環境は、ほとんどすべての英語メディアを日本語で翻訳して楽しんだり、またほとんど英語を使わずに定年まで勤められる会社が多い日本とはかなり違います。

日本では極端なことを言うと英語は入試のために勉強する人が大勢います。一方スウェーデンでは日常生活をより楽しむため、さらに仕事をうまくこなすために英語に慣れ親しみ勉強するという基本的なスタンスの違いが大きいのでしょう。

スウェーデンの主要産業は機械工業、化学工業、ITなどだそうですが、国民が英語をちゃんと話せるということが大いに国の産業を盛り上げるのに役立っていると思います。

私の経験では、香港やシンガポールでも都市部の人はかなり英語を流暢に話せます。日本でも子供のころから楽しみで英語の音楽や映画に慣れ親しんだ人は結果としてかなりの英語力を身に着けることになるということも事実だと思います。

終わりに

今回の夏の団体ツアーではストックホルム中心の観光をゆったりと楽しみました。

「観光地としてのスウェーデン」はどうだったかというとやはり強く印象に残る場所は少なかったと感じています。

スウェーデンには15カ所の世界遺産があり、そのうち13カ所が文化遺産、1カ所が自然遺産、1カ所が複合遺産だということです。文化遺産は製鉄所、墓地、銅鉱山、無線局、軍港などであり現地は訪れてはいませんが資料で見る限りどちらかというと少しマニアックな感じがしています。

今回訪問したドロットニングホルム王領地は1991年に登録されたスウェーデンで最初の世界文化遺産だそうです。ここではもちろん豪華な宮殿やお庭を十分に楽しむことができました。

他のヨーロッパ諸国にあるような大自然の絶景の場所、世界史を飾るような古代の遺跡、きわめて価値が高い芸術性のある建物や装飾などの観点からは少し物足りないイメージがあります。

今回の観光旅行で結果として最も強く印象に残ったのは「地下鉄アート」と驚くことに市民がみな英語を流暢に話すということでした。

スウェーデンはフィンランド同様に福祉が行き届いていて、産業も勢いがあり、個人が自由で尊重され、森や湖も多く、街並みや商品がお洒落でとても住みやすいというイメージがあります。個人的にはとても印象が良い国の一つです。

今回は2~3日程度の滞在でしたが次回チャンスがあれば是非少し長めに滞在してスウェーデンの良さをもっと実感したいと思っています。

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