2020年の「ゆるーい天文趣味」を振り返る

 早くも2020年が暮れようとしております。当ブログのこの1年は昨年に引き続き反省ばかりですが、匍匐前進しつつ今年楽しめた天文現象や取り組みを振り返ってみたいと思います。
 私個人は昨年と比較して本業が忙しくなってしまい、特に夏以降は趣味に割ける時間が激減してしまって記事更新も滞り気味となり、ゲリラ的に観望するだけの2020年となってしまいました。

2020.12.21 の木星・土星超接近の様子
神秘的な組み合わせに、大いに盛り上がりました。

(20cmF5直焦点, SV305, 17:25頃撮影) 


■ 反省
① ヌンチャクアダプターの開発大遅延
 今年最大の失態はコレです。アイデアを募り、いただいた「スパイラルサーチ」の良さを頭に思い描いてワクワクしていたその頃、私の本業の繁忙感が急激に増してしまったのでした(言い訳ながら)。ソフトのソースの記憶が断片的となり、開発が中断したままになってしまい、本当に申し訳ない限りです。
 一方で、AZ-GTiヌンチャクの本家様からはよりエレガントな実装の改造ヌンチャクキットが提供され、世の中には 「AZ-GTi + ヌンチャク」が一つの形とはなったようです。

② 赤道儀の破損と修理断念

今の機材はこんな感じです
(2020.12.21撮影)
 実は春先に、虎の子のAdvanced GT赤道儀を破損させてしまっていたのでした。原因はケーブルの引っ掛かりで、赤緯モーターが微速で十分なトルクを発生しないのか、反応してくれなくなってしまったのでした(GOTO動作は問題ないのですが)。
 赤道儀の追尾精度についてはオートガイドで一定レベルに達してしまっていたので、これ以上の探求の意味を見いだせず、結局オークションに出ていたAZ-EQ6GTをポチってしまったのでありました・・・。
 AGT赤道儀の勇ましい「GTサウンド」がなくなるのは寂しいですが、ステッピングモーターのAZ-EQ6GTは静かな音がカッチョイイです。エコノミーを標榜する当ブログの趣旨からはやや外れますが、怠惰な私には安楽な機材となりました。

■ 2020年の観望&天文現象振り返り

相変わらずのお気楽庭撮りです
2020年は、前にも増して写真を撮る頻度が減り、観望ばかりの日々となってしまいました。観望では、春先にわざわざ遠征して系外銀河などを眺めたりしましたが、高倍率DSO観望の面白さを確認した年となりました。「星雲や銀河をよく見るためのファクターは何か」というところは依然として謎が多いですが、観望と考察を繰り返してみたいところです。

 また、火星に備えての主鏡セルの回折対策は大いに効いて、筒内気流対策と相俟って火星のみならずシリウス伴星観察でも強さを発揮してくれました。今年は、極悪シーイングでもないかぎりシリウス伴星チャレンジで敗退する気がしません。トラペジウム E,F星も断然見えやすくなりました。

天文現象は下記のようにけっこう濃厚なものがあり、楽しい一年となったと思います。

12月21日の木星・土星超接近

儚くもビルの陰に消えゆきました
NEWTONYファインダーにて

 実に397年ぶりだという木星と土星の会合が、天文界隈を大いに賑わせてくれました。TOE 3.3mmを使った300倍超の視野の中にこの2大惑星が収まっていたわけで、眼視では低空でゆらめく木星の縞模様と、視野の脇に見える土星の環の対比が大変神秘的な眺めでした。
 時間が経つにつれて土星の衛星や恒星がどんどん見えて賑やかになる一方で、シーイングは次第に厳しくなり、やがて建物の陰に沈んでいったのでした。
 ちなみに、7分角とはいえ木星と土星は肉眼で分離して見ることができました。視等級が明るいということは、有利に作用するのだと思います。
 前回接近のガリレオ・ケプラーの時代は土星の環も木星の縞も発見以前ということで、これが同一視野に見えることを観測した記録は目にしません。人類が望遠鏡を得て以来初めてのイベント、と言って良かったのではないでしょうか。

10月6日の火星の準大接近

2020年火星は準大接近でした
(2020.10.6)

 この2020年の火星準大接近は、大変見ごたえのあるものとなりました。私の人生で、こんなに火星表面が良く見えたのは初めてです。筒内気流対策、主鏡セルのマスク、アイピースの三拍子を揃えた甲斐があったというものです。
 運河がそれらしく見えたりはしませんでしたが、ソリス湖の濃淡や、その下あたりに見えるモジャモジャ(?)など、昔の人がいろいろ想像を掻き立てるだけの何かはあったかな、と感じられました。
 火星もそうですが、夏ごろから木星、土星の表面も良く見えました。

7月初旬~20日ごろのネオワイズ彗星 

市街地からも見えました
 今年の夏は、0~1等級にも達したC/2020 F3 NEOWISE彗星の来訪に沸きました。しかしながら今年の梅雨は長く、毎朝早朝に起きて確認するも雨音が聞こえるという状況で条件の良いタイミングで観察することはかないませんでした。
 7月の下旬に差し掛かってようやく晴れ間を見て、3等級になったネオワイズ彗星を拝むことができました。市街地からでも、7cm双眼鏡や15cm反射でその姿はハッキリと捉えられました。
 このネオワイズ彗星の前に、増光が予想されていたATLAS彗星は近日点通過後に分裂して消滅してしまったこともあり、このネオワイズ彗星は大いに盛り上がりました。


6月21日の部分日食
 望遠鏡架台の方位を昼間に合わせる方法まで編み出しましたが、大変残念なことに当日は曇りと相成りました。

■ アイピースの探求
 これまでに記事で取り上げて感想ポエムを綴ったアイピースも累計60種を超えました。この2020年にはラムスデンアイピースだけでも15種を試すことができ、接近していた火星ではかの TMB SuperMonocentric や Pentax XO5 にも迫るド級の惑星像を見せてくれたキングオブSR(Meade) にも出会えて、ついにラムスデン大全を編纂するに至りました。
 私もこれで、「ラムスデン・ジャンキーなアイピース詩人」を名乗れるのではないかとも思います。この年の瀬にはまた一つ落札してしまいましたが、最近はラムスデンでもオークションで競う相手がおられるので、張り合いがあります。ラムスデンの凄さも浸透しつつあり、この火星接近でその凄さを体感された方もおられたようです。
 高倍率アイピースはだいぶ色々試しましたが、惑星面の模様の見え方については特に射出瞳径と見え方との関係あたりに解かねばならない謎が残されているように思えたという課題の発見も、今年の収穫ではありました。
 広視界アイピースについては国際光器のレンタルで MAGELLAN100° だけでなく色々と借りて試用できましたが、記事化は新年になりそうです。星雲星団の眼視観望は思っていたよりも奥が深いようで眼視のためだけに遠征したりもしましたが、やはりナマで覗く天体は美しいと感じたのでした。

■ その他当ブログに絡むトピックス

金・銀巻き鏡筒の浸透
 2019年の夜露大惨敗に伴う結露対策に端を発した鏡筒の銀巻きチューンですが、2020年には実践される方をネットでお見かけするようになりました
 筒内気流に対する効果(原理はこちら)を確認された方々もおられた(※スタパオーナー氏のシュミカセ反射double_cluster氏の中村要鏡15cmF10)ようで、光学系の本来の性能を堪能された方々がおられたのは喜ばしい限りです。私自身も、火星準大接近や冬のシリウス伴星観察を通じて、この銀巻きの効果を感じざるを得ません。

 金銀のアルミシートで巻く対策は、おそらく反射望遠鏡に対しては結露・筒内気流の両面で大いに威力を発揮するものと思われますが、大きなレンズが前玉として嵌っている屈折望遠鏡やシュミカセでは結露対策として不十分であるようで、私もガイド鏡の結露を体験して結露対策二ノ段を投入したことが何度かありました。

 前玉レンズは可視光では透明でも遠赤外では放射率が高く、冷えてしまうようです。ガイド鏡を含む前玉レンズ向けの怠惰な結露対策としては、さらなる究極秘奥義を披露する必要があるようです。

(※よくよくネットを調べると、この方法は以前から知る人ぞ知る筒内気流対策だったようで、一部の惑星観測家や海外で実施されていた例があるようです。)

当ブログのリンク集
 当ブログの「密かな人気ページ」となっているのが「天文リンク集」です。個人的に訪れることがあるページや、メーカーのオフィシャルサイトなどをまとめてあるのですが、実は密かに更新を継続しています。
 これからも、(自分にとって)使いやすいリンク集をめざして更新していく予定です。

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こうして、以前にもまして「ゆるーい」天文趣味を継続している Lambda ですが、あまり進歩はなかったようです。来年こそは、と、おもいつつ、年を越そうかと思います。

※皆さま、良いお年をお迎えください。

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コメント

匿名 さんのコメント…
銀巻き鏡筒、私も実践しており、効果を実感しております。
私のはε130Dですが、接眼筒にいたるまでギンギンです。
たまにε鏡筒の写真を見て、εって黄色だったんだと思い出し笑い。

大変参考になる記事の数々、ありがたく拝読させていただいております。

@coo_xyz (くぅ)
Lambda さんの投稿…
くぅ(@coo_xyz)さん、コメントありがとうございます!
ε130D、使いこなしておられて凄いです。
接眼筒もギンギンですか!
ご指摘のように、接眼筒も結露したり、筒内気流の原因になったりしますね。

さながらハッブル宇宙望遠鏡のような望遠鏡で宇宙を写し取るのも、映える絵になると感じられるようになってきた(?)気もいたします。