~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

今日の一冊「おによりつよいおれまーい(サトワヌ島民話)」 マウイ伝説に似た、超自然的な子供のパワーを感じさせる絵本

今日、ご紹介するのは絵本です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

おによりつよいおれまーい(サトワヌ島民話)
(「こどものとも」人気作家のかくれた名作10選)
土方 久功 (著, イラスト)

サトワヌ島は南太平洋のミクロネシア諸島の中の小さい島です。おれまーいは島の男の子。ものすごく強い子で、誰もかないません。あんまり乱暴なので、こらしめに他の島へやってしまいますが……。

 

絶版本ですので、紹介もちょっとどうしようかな、と思いましたが、1993年にいちど復刊もされているようです。
古本もけっこう出回っているようですし、紹介しちゃいます。

 

かなり強烈なインパクトを残す絵本です。

わたしの持っている本、ヤケ、シミはたくさんありますが、これでも状態がいい方です。
他のはすごいことになってます。
表紙が外れて、バラバラになっても、しつこく捨てずに持っています。

 

やはりここまでしても生き残っている本というのは、何か縁があるものなのですよね。
そんな中でも、紹介したい!と強く思う本です。

 

復刊時には、「かくれた名本」という副題もついていたようです。
まさにかくれた名本です。

 

パプアニューギニアのお話をもとにした再話。
説明には、ミクロネシア諸島のサトワヌ島と書かれています。

 

表紙に
「サトワヌ島民話 土方久功 再話/画」
と書かれています。

 

お話としては、怪力の小さな男の子という、南洋に見かけるモチーフのお話です。

 

ハワイのマウイ伝説をご存じでしょうか?
最近、「モアナと伝説の海」で、マウイが出て来たので、名前に聞き覚えのある方も多いと思われます。

 

モアナで、若干ふくよか(婉曲表現)なデザインになっていましたが、マウイはもともと、赤ちゃんのように小さい頃から異常な怪力という伝説でした。
よく宣伝している、山室静さん(ムーミンの訳で有名な方です)の、「新編 世界むかし話集(10)アメリカ・オセアニア編」に収録されていますが、わりと長く、詳細に紹介しています。
マウイはポリネシア神話からハワイ神話まで、ずいぶん遠いのに、これらの南洋の島々にひろく分布しているお話です。

マウイ (ハワイ神話) - Wikipedia

マウイ (ポリネシア神話) - Wikipedia

 

おれまーいも、どことなくマウイを思わせるお話です。
「まーい」、の部分がマウイと似ているな、と思ったことがあります。

 

話がズレてしまいましたが、本当に力強い絵と、お話です。

 

 

さとわぬ島に、ひとりの男の子が生まれます。

うまれるとすぐにはいはい、四日たつともう歩き、8日たつと、「やしのはで あんだ とを やぶりちらすようになりました」
クソガキに育つのが早すぎる。

 

海の絵がすごくきれいです。
魅せられて、ずっと絵を眺めて過ごしました。

 

兄助がやってきたので、「覚えてる?」と聞くと、「覚えてる。強いこども」と、記憶に残っているようでした。

 

幼年期に読ませた本なんて忘れちゃってるんじゃないだろうかと思っていましたが、消えない記憶もあるのだなと思いました。

 

なんて、しみじみとしたことを言ってる場合ではなく、おれまーいはとんでもないことをやらかします。

 

「いちばん小さい魚を食べるから、とっておいて」
→そばにいた人たちは、うっかり食べてしまった。
→「さかなは?」と聞かれたので、大きい魚を出してやった
→怒り出して、「うちをひっくりかえしてしまった」

 

うーん。

・怪力だけど、小さいさかながいい。(謙虚?食欲は普通?)
・間違えて食べてしまった人は不注意だけど、大きい魚を上げようとして、一応反省の色は見える。
・でも、おれまーいは許さない。

 

ドラゴンボールで、小さい頃の悟空がよくマッパになってましたが、このうちをひっくりかえすおれまーいも、相撲におけるどすこいポーズで、まる出しのまっぱだかです。

 

それで家をひっくり返してしまうという、おそろしい怪力のおかしみと、おそろしさが同居しています。

 

 

すっかり恐怖を覚えた村の人たちは、集まってあれこれと、おれまーいを殺す相談するのですが、この絵がまたすごくシュールです。
「海で」「山で」「困ったな」「だから俺は」
まるで国会のようにグダグダしてます。

 

そして、何とかしておれまーいを殺そうとするのですが、殺伐とした話なのに、あまりにもおれまーいがつよいので、恐怖を感じるヒマがありません。

 

純真なので、その殺そうとした手段のもの、大木や丈夫なあみなどを、みなさんに役立つものだと思って、無邪気に持って帰ります。

 

ニコニコした笑顔に恐れをなす島民にも、おれまーいにも、サイコパスを感じます。

 

 

この次が不思議で、(昔話にはよくあることですが)、その不思議さに何度も読み返したところです。

 

さて こんどは、みんなで ぴーくしままで かめを とりにいって、おれまーいを おいてきてしまおうと そうだんしました。

 

かめ。
かめって、亀のかめなんでしょうか?
一晩中こいで行くほどの遠いしまに、かめを獲りに行く。
かめって、さとわぬ島には来ないのだろうか?
たまご?かめ本体も、おいしいのかな?

 

とりあえず、そこにはおそろしいおにがいるので、そのおにに、おれまーいを片付けてもらおうという魂胆です。
このおにの名前も不思議で、「やにゅう」と言います。

 

やにゅう。
なんだか日本にもありそうな語感です。
このやにゅうが、表紙にいる、頭から赤と青の羽が突き出ているこれです。

 

いかにも恐ろしげな外見!
でもちょっとユーモラスです。

 

 

やにゅう、おれまーいを見つけて、いろいろとたずねます。
ちっともこわがらないおれまーいに、やにゅうはこんなふうに言います。

 

「そうか そうか いいこだね。だけど おれは こどもの にくが だいすきでね。たべたくなってくるのだよ。たべてやるよね」

 

今まで、たくさんの童話やおとぎ話を読んできましたが、
「たべたくなってくるのだよ。たべてやるよね」
と、脅しなのか、お願いなのか、確認なのか、そのどれでもない、この微妙な宣言のパターンは、はじめて見ました。

 

(ここは、読んできかせるときに、薄気味悪い声で言うとすごくウケる箇所です)

 

おれまーいは、びくともせずに、ならば力比べをしようと自分から申し出て、やにゅうと勝負をすることになるわけですが…。

 

まあまあ、このあとはお約束の展開ではあるのですが、積み上げられたヤシの実、パパイヤ、バナナのおいしそうなこと!

 

爆発的な力を秘める、子どものパワーを、エキゾチックな絵と共に、十分に堪能できる絵本です。

 

 

作者の土方久功さん、「ミクロネシア研究の民族誌家」とのことで、なるほどとの思いです。

土方久功 - Wikipedia

 

昭和4年にパラオに渡られたとのことで、これは世界恐慌の年で、まだ第二次世界大戦が始まるよりも10年も前です。
昭和17年帰国…大戦の只中に、疎開する形で日本に帰られたんですね。

 

地図で見て、ミクロネシア諸島の中に「サタワル島」というのがあり、これが「さとわぬ島」かな?と思いました。

 

 

Wikipedia「1931年(昭和6年)、ヤップ諸島の最東端・サテワヌ島(現在のサタワル島)に渡り、7年間を同島で過ごす[2]。」と記述があるので、おそらく「さとわぬ島」はこのサタワル島で間違いないのでしょう。

 

ずっと、漠然とどこの島だろう…と空想していたので、場所を知ることができたのがとても嬉しいです。

 

ストリートビューもない、本当に小さな島です。
写真で見る限り、緑ゆたかな美しい海です。

 

 

 

 

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土方久功正伝 日本のゴーギャンと呼ばれた男 Kindle版 清水 久夫 (著)

彫刻家であり詩人でもある土方久功は、ミクロネシア研究の民族誌家としても評価が高い。しかし久功の最も貴重な遺産は関東大震災の前年から死の5日前まで55年に渡って書き続けられた日記であろう。残された膨大な日記を一字一句翻刻し、久功の喜び、苦しみ、悲しみを共にする中から立ち上がってくるのは、自己に忠実に生きようとした男の清々しさであり、読む者の知的好奇心を刺激してやまないその生き方である。

 

 

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命の女神テ・フィティの<心>が盗まれた時、この世に暗黒の闇が生まれた。だが、闇がすべてを覆い尽くす前に、サンゴ礁を越えて旅する者が女神に<心>を返し、世界を救うだろう---。伝説が息づく南の楽園モトゥヌイを治める村長の娘、モアナ。闇に飲み込まれる危機に瀕した島を救うために、彼女は村の掟を破って、禁じられた海へ漕ぎ出す決意をする。身勝手で自信満々な伝説の英雄マウイを道連れに、自分の心の声を信じて進む少女モアナの冒険に思わず心が熱くなる。圧巻の歌と映像で贈る感動のファンタジーアドベンチャー

 

 

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新編 世界むかし話集(10)アメリカ・オセアニア編 (現代教養文庫ライブラリー)
Kindle版 山室静 (編集) 形式: Kindle版

アメリカ・インディアンや大洋州原住民の民話。素朴なものが多いが、それだけに従来の昔話を読みなれた人にとっては、思いがけない発想や急展開があり、楽しいおどろきが多い。ヨーロッパ人による蒐集や研究の厚さにもおどろくほかない。
<北アメリカ> インディアン/エスキモー/白人系/黒人系/ハワイ
<南アメリカ> インディオ/ヨーロッパ系
<オーストラリア> 南太平洋諸島/オーストラリア

 

 

 

 

 

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