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特に何も感動してないし、すごく悲しい事が起こったわけでもないのに、急に涙が止まらない。そんな経験ありませんか?

私はうつ病の時に、子供のように泣きじゃくった事があります。本当に子供のように「わーわー!」泣いていました。きっと精神的に限界を感じていたのだと思いますが、泣く事でその後、気持ちが少し晴れていったのを今も覚えています。


「泣く」「涙を流す」という行為は一見ネガティブに見えがちですが、実は身体にとって良い効果をもたらす物でもあるのです。

今回はそんな「無意識の涙」について紹介していきたいと思います。
人体って本当にスゴイ!

なぜ涙が出てくるのか?

原因①ホルモンバランス
ホルモンバランスが乱れると、情緒不安定になりやすく、怒り・悲しみなどのネガティブな感情が強まります。特に女性は生理前にホルモンバランスが乱れやすい為、毎月同じ時期に涙が止まらない・気分の落ち込みが激しいなどの症状が出る場合があります。

ちなみに、うつ病とホルモンバランスの乱れによる症状は別のものですが症状が似ている為、「産後うつ」「更年期うつ」のようにホルモンバランスの乱れから、うつ症状が出始めて、そのままうつ病になってしまう場合もあります。

原因②自律神経失調症
「自律神経失調症」になると感情の起伏が激しくなったり、ひどく落ち込んだりする場合があります。そのせいで、意味もわからず涙が出る場合があります。「自律神経失調症」自体は、ストレスの蓄積・生活習慣の乱れ・女性ホルモンの乱れなどが原因だと言われています。

原因③うつ病
うつ病の場合は、うつ病になると顔つきが変わる??~「うつ病のサイン」を見逃さない為に~
でも紹介しましたが、
感情がうまくコントロールできなくなり、なんの前触れもなく涙がこぼれます。

さらに「1週間毎日泣いている」「涙が止まらなくて眠れない」など日常生活に支障をきたす場合もあるのがうつ病の特徴です。

通常のうつ病は午前中、非定型うつ病の場合は夕方~夜に落ち込みが激しくなるので、涙が止まらなくなる事が多いです。

涙は身体からのSOS

「無意識の涙」はストレスやホルモンバランスの乱れ、セロトニン不足(うつ病の原因)などにより、精神状態が良くない状態であることを身体が教えてくれているのです。「このままでは危ない!なんとかして!」と身体があなたや周囲の人にSOSを出している状態なのです。

理由もなく涙が止まらないというのは、精神状態が不安定であることを示しています。なので、仮に現時点ではうつ病ではなくとも、長く放置すると高い確率で何らかの心の病気を患ってしまう可能性があります。

その危険性をが教えてくれている」のです。

もし、涙を無理やり封印し続けたり、何の対応もせずいた場合、病状は悪化し、無気力になり、涙が流れなくなる事があります。

その場合は、治ったわけではなく心がSOSすら出せなくなっている状態で、自力での回復は難しい程、心に傷を負った状態です。その状態が続けば、自殺を考えるようになる可能性も高いです。

つまり、涙は命を守る救命医でもあるのです。

涙はいけないものという先入観

「男の子なら泣くな!」
「大人が人前で泣くなんてみっともない。」

という認識の方もいると思いますが、それは「無意識の涙を経験したことのない人」だと思います。いじめられた事の無い人はいじめられっ子を見て、「やり返せばいいのに」と考えるのと同じです。
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「ストレスにより疲弊している事を涙で教えてくれる」というのは、
「肩の筋肉が固まっているのを肩こりの痛みで気付かせてくれている」のと同じ事です。

自分は弱い人間だと責めたり、情緒不安定だと思われたくない、などと恥じる必要はありません。むしろ、身体がキチンと作用しているからSOSを出してくれているので、「優秀な身体」だと褒めてあげましょう。

世間一般の声というのは、大抵その人にとって有利な考えであることが多いので、周囲の考えを尊重するよりも、自分の身体を大事にしてあげましょう。世間一般の人達はあなたが身体を壊しても責任はとってくれません。

科学的な涙の効果

うつ病にはセロトニン不足が原因として考えられていますが、実は涙を流すことでセロトニンが増えると言われています。

自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があります。交感神経は主に活動している時に働く神経で、副交感神経は寝ている時に働きリラックス効果をもたらします。

涙を流すと交感神経から副交感神経に切り替わり、その際にセロトニンを分泌する神経が活性化され、セロトニンが増加します。

つまり、涙を流す事で、自律神経(交感神経と副交感神経)が安定し、セロトニンが増えうつ病も改善されるという事です。


勘の良い方は「あれ???」と感じたかもしれません。そうです、一番最初に紹介した「なぜ涙が出てくるのか?」で原因として、
原因②自律神経失調症
原因③うつ病

を挙げました。これらが原因で無意識の涙が出るのですが、この2つは涙が出る事で改善されるのです。涙はSOSだけではなく、治療薬としての効果もあるということです。

心理学的な涙の効果

心理学的に見ると、涙は感受性の強さを示しています。ストレスやあふれ出た感情から、あなたを守るための反応であり、精神状態のバランスを整えるために必要なことです。

そして、心理学で一番注目するポイントは涙を流すと言う行為についてあなたがどう感じているかです

①自己否定
涙を流すことに対して嫌悪感があったり、自分を弱い人間だと感じているのなら、今のあなたは自己否定によって苦しんでいるいます。あなたの気持ちをあなた自身が拒んでいるのです。周囲から否定され続けると誰でもこの状態になりますので気をつけましょう。

自分の本当の気持ちや考えを尊重し、自分の弱い部分も受け入れましょう。人間誰しも弱い部分を持っているものです。弱い自分がいたって良いんだと思えるようになると、心が癒され、涙を流さなくても心のバランスがとれるようになります。

②トラウマ
過去にショックな出来事があり、トラウマとなって残っていると、それが原因で涙が止まらなくなることがあります。本人は記憶にフタをしてしまい思い出せない状態でも、フラッシュバックしたり悪夢を見たり涙を流したりして、トラウマを克服しようとする場合があるからです。この場合は、今の幸せや喜びを感じる経験を少しずつ積み重ねていくことで、トラウマとなった出来事の解釈を変えていく事が大事です。カウンセリングや催眠療法など専門的な治療もできます。

③悲観的
将来に対する不安や現在の不満などが溜まった結果、悲観的な考えになり絶望を感じている状態です。これはほとんどうつ状態だと思います。過去に嫌な事があったトラウマに比べて、未来への悲観が多く起きてもいない事に不安を感じています。

④我慢の限界
自分のやりたい事、言いたい事、周囲に理解してもらいたい事、やりたくない事、これらを言わずに自分の中に溜めておくと、いずれ限界が訪れ、涙が止まらなくなる事があります。私はこれと③の両方でしたが、自分でも我慢している事に気付いてませんでした。泣いて初めて「あ、我慢してたんだなぁ。」と気付かされたのです。それぐらい無意識の場合もあります。


これら以外にも、「別の感じ方」があるかもしれません。原因は人それぞれなのですから。

あなたにとって涙の意味は何でしょうか?

私の体験談

私は2度目のうつ病になり、会社を休み自宅療養していたのですが、考え方や過ごし方の違いで妻と衝突するようになりました。その為、私の病状は少しずつ回復して、妻とケンカして悪化して、回復して、悪化してを繰り返していました。それを毎月のように繰り返している内に、病状はどんどん悪化していき、このままでは自殺してしまう可能性があると自分で感じ、何も考えず、その日の内に家族を連れて自分の実家へ行きました。

着いた時、両親は共に出かけていて誰もいませんでしたが、私は限界を感じていたのか、台所に座りこんだまま、動けなくなりました。妻に何を話しかけらても反応できず、ただ台所で一点を見つめながらボーとしていました。脳が考える事を嫌がってる状態でした。

そうこうしてる内に父が帰ってきました。私の様子を見て心配そうに『どうしたんだ?』と聞かれた時、自分でも気づかない内に滝のような涙が溢れていました。普通に感動した時の涙は『あ、そろそろ泣きそう』と涙が出る予兆がありますが、この時はそれが全く無く、涙が下に溢れてから、初めて自分が泣いている事に気付くというぐらい無意識の涙でした。

最初は自分でも急に涙が出てきた事に驚きました。しかし、一旦涙が出るとダムのようにせき止めていた感情が一気に溢れ出し、泣きながら必死に今どういう気持ちかを訴えました。ものすごく、幼稚でわがままな意見を『ワーワー!ギャーギャー!』言いながら泣く姿は、本当に駄々をこねる子供そのものだったと思います。妻子がいる状態で、自分を一生懸命育ててくれた父に向かって『もう死にたい』と何度も言いました。そんな私の話を父は黙って聞いてくれました。きっと父なりに言いたい事もあったとは思いますが、とりあえず私の話を聞いてくれました。

その時初めて自分が本当はどう思っていたか、それを誰にも言わずに我慢していたかを知る事ができました。『大人とはこうあるべき』と自分で自分を縛り上げていたのです。自分の中に少しづつ溜めていた我慢がそろそろ限界を感じていると、涙が教えてくれたのです。
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一通り泣き終えて、放心状態になった時、頭がスッキリしたのを覚えています。さっきまで取り乱していたのが嘘のように冷静になり、呼吸を整えながら、徐々に気分が晴れていくのです。数日の間ずっとあった、頭の中のモヤモヤがサーっとひいていくような感覚でした。

「今まで自殺したくなる程悩んでいたのが、こんな事で改善されるなんて・・・」
素直にそう感じました。「え?こんな事で解決するならすぐ泣けば良かった」とも思いました。

・安心できる場所
・安心して話せる相手
・周囲を気にせず思い切り泣ける

という状況が大切だったのでしょうが、この状況を作る事は意外と難しくありません。私のように親だけじゃなく、友人や恋人、職場や学校などでも信頼のできる方がいれば可能です。
そして、私にとって1番大事だったのは、

「自分の本当の気持ちをただ聞いてもらえる」

それだけのことで良かったのです。

まとめ

・無意識の涙は、ホルモンバランス・自律神経・うつ病が原因
・涙は身体からのSOS
・泣いてはいけない先入観を無くそう
・涙は治療薬でもある(セロトニン)
・涙の意味を考えよう
・自分の本当の気持ちを聞いてもらうのが大事



自分の心や脳が疲弊している事にいち早く気付き、SOSを出した後、さらに治療までしてくれる「涙」。ものすごく優秀な機能だという事がわかりますよね。私がもし、あの時涙を流さず、我慢して「本当の気持ち」を誰にも言わずにいたら、私は今頃この世にいなかったかもしれません。大げさではなく、「涙に命を助けられた」と思っています。