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「令和4年日本国国防方針」批判(第六回) -国防権のない日本の危険な外交と国防-

2023-01-25 | 小日向白朗学会 情報
 8、仮想敵国ロシアと北方領土問題
平成30(2018)年6月12日、シンガポールでアメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長及び国務委員会委員長による史上初の首脳会談が行われ共同声明が出されたことで、自民党と外務省が大混乱になったことを前回記載した。それに相応じるように三か月後の同年 9 月11日、ウラジオストクで開催された東方経済フォームではプーチン大統領が突如として「年内にいかなる前提条件も設けずに平和条約を結ぼう」と日本政府に提案した。この提案を受けて同年11月、シンガポールで日ロ首脳会談をおこなった。会談後、安倍首相は「日ソ共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させることでプーチン大統領と合意した」ことを明らかにしている。これで原則的に日ロ平和交条約締結が前進したことになる。日本とロシアの関係は、平成5(1993)年10月13日、総理大臣細川護煕とロシア連邦大統領エリツィンが、北方四島全てに関して帰属を確定することを「前提条件」として交渉を行うことを宣言し署名していた。いわゆる東京宣言です。これは、二国間のその後の方向性を定めた最初の包括的な文書であった。ところで東京宣言前文に「令和4年日本国国防方針」にしばしば登場する文言が存在する。
『……
日本国及びロシア連邦が、自由、民主主義、法の支配及び基本的人権の尊重という普遍的価値を共有することを宣言し、
市場経済及び自由貿易の促進が両国経済の繁栄及び世界経済全体の健全な発展に寄与するものであることを想起し、
ロシア連邦において推進されている改革の成功が、新しい世界の政治経済秩序の構築にとって決定的な重要性を有するものであることを確信し、
国連憲章の目的及び原則の尊重の上に両国関係を築くことの重奏性を確認し、
両国が、全体主義の遺産を克服し、新たな国際秩序の構築のために及び二国間関係の完全な正常化のために国際協力の精神に基づき協力していくべきことを決意して、
以下を宣言する。
……』
 その後、日本とロシアで合意したいくつかの声明や協定には「自由、民主主義、法の支配及び基本的人権の尊重という普遍的価値」という文言は再び登場することはない。日本外交に於いて、この文言が頻繁に使われるようになったのは安倍晋三が日本の防衛範囲を「インド太平洋」を言いだした頃からと記憶している。そして最近ではRUSIが主導してまとめた「令和4年日本国国防方針」の中に頻繁に登場する慣用句である。それが20年以上も前に出現しているということは「自由、民主主義、法の支配及び基本的人権の尊重という普遍的価値」という用法は、重要な意味を持っているに違いない。ならばウクライナ問題から吟味しておく必要がありそうだ。
 既に、述べたことであるが、令和4年3月17日、『朝雲』に衛研究所政策研究部長兵頭慎次がウクライナ問題の根本原因が「ブタペスト覚書」に違反したことが「自由、民主主義、法の支配及び基本的人権の尊重という普遍的価値」に相いれないのでロシアの蛮行だと非難の根拠に利用していることを吐露した。
 つまり、兵頭は、ロシアの核の下にあったウクライナを非核化したのでNATO(北大西洋条約機構:North Atlantic Treaty Organization)はウクライナに対して核を使わないということを大前提にしていたにも拘わらず、クーデターで政権を握った新政府が自由で民主的であれば、たとえロシアの安全保障上の大問題である「ロシアの腹部に核配備をするという」密約をNATOと結んでいたとしても、条文の解釈を優先する、つまり法の支配が優先するという論理であった。そしてクーデターで政権を握った政府が反撃を受けた場合に、基本的人権を守るためと称して「ウクライナ難民受け入れ」と「ウクライナかわいそうキャンペイン」を流布し、ウクライナに対する武器支援を正当化する根拠としてきた。つまり「自由、民主主義、法の支配、基本的人権」を「普遍的な価値」(絶対は神を表すことから、普遍的と表現をやわらげたのであろうが)として、ウクライナで「侵略、破壊、殺戮、略奪」という悪巧みを正当化する鍵となる言葉なのだ。ウクライナで残虐行為を積極的に行ったのが2014年にウクライナで起きたクーデターの際に、反対する親ロシア派を殲滅するため発足した「アゾフ大隊」であった。このアゾフ大隊は、日本の公安調査庁が纏めた「国際テロリズム要覧2021」に「ウクライナの国家組織「アゾフ大隊」をネオナチとし認定していたが、ロシアがウクライナに侵攻後、2022年4月8日に「アゾフ大隊」を削除してしまった。さすがに日本政府も公安調査庁がアゾフ大隊をテロ組織としたままで「ウクライナかわいそうキャンペイン」を行うことができなかったからである。
 話を戻そう。
 「自由、民主主義、法の支配、基本的人権」と「普遍的な価値」という慣用句を含んだ平成5(1993)年10月13日の東京宣言は、ブダペスト覚書と同様に何らかの悪巧みを考えていたとみる以外ない。実は、昭和27(1952)年4月15日、日米安全保障条約(旧日米安全保障条約)及び行政協定締結の時から悪巧みは始まっていて、ウクライナ侵攻の原因と同質の罠を仕掛けてあった。これに付いては昭和29(1954)年12月03日参議院「電気通信委員会」で山田節男委員の質問が参考になる[1]。少々長いが確認していただきたい。
『……
036 山田節男
……
 私は、ここで何故正力君のテレビ免許申請の経過を殊更詳しく述べるかと申しますと、只今当委員会で問題となつているマイクロ・ウエーブ中継所設置問題と非常に関係が深いと申しますか、不即不離の関係にあるからです。ユニテル社の機関誌テレ・テツクの一九五二年二月号五十七頁を見ますと、この正力氏の計画し政府へ申請したテレビの東京放送局(NTV)は、ユニテル社が企画しているグロバール・マイクロウエーブ・システムのアジアの第一ステーシヨンであることか明記してあります。換言すれば、NTVは、テレビでもつて、自由諸国家をつなぐ、即ち前述のヴオイス・オブ・アメリカと並行してヴユー・オブ・アメリカの一環であると思われるのであります。私は、NTVが何故マイクロ・ウエーブ中継施設を電電公社や防衛庁へ手を代ヘ品を変へて話を持ちかけるか、その背景を知る必要があると存じます。(地球)をテレビで巻く計画をしているのがいわゆるユニテル社であります。同社はハルステツド、クロスビーの両企画者、中継所設計者であるダシスンキー博士及び弁護士のホルシユーセンが中心であります。この連中は日本へ何遍も来ています。ユニテル社は、日本の地理的状勢を詳細に調査して、東京を中心に二十二個の山上マイクロ・ウエーブ中継所で北海道から九州南端まで結び、このマイクロ・ウエーブ中継を利用して、テレビはもとより電話、印刷電信、レーダー、航空通信、ラジオ等いろいろなものに利用する設計になつていて、五年にしてこの全工事を完成するプランを立てています。このユニテル社の計画書を見ますと、正力氏が実現せんとするマイクロ・ウエーブ中継は、その間のユニテル社との交渉を見ますと、ユニテル社計画の世界を囲むテレビ網の一環であると判ぜざるを得ないのであります。  ついでに申しますが、このユニテル社のグローバル、マイクロウエーブ・システムは、アメリカ、アジア、アフリカ、地中海、ナルコム、(北大西洋)スカンジナビヤの六つのネツト・ワークのブロツクに区分し、北大西洋はグリーンランド、アイスランドを経て英国へつなぐのであり、マイクロ・ウエーブのほかに超過電力のVHFを利用し、又はコアキシヤル・ケーブルを利用して長距離の海上中継をやるのです。この方面は技術的にも可能なことは確かですが、アメリカからマイクロ・ウエーブはアリユーシヤン群島から、千島列島がソ連領である今日、如何にして北海道の北端を中継するか、この海上距離の長大なることから、末だ結論的なものはないやうです。このユニテル社の地球を廻るママイクロ・ウエーブ継は、マウンテン・トツプ(山頂設置)式マルテ・チヤンネル・マイクロウエーブとFMタイプの超高電力のVHFの無線中継でやろうとする共通の方式を採用するようにしています、更にそれでも中継のむずかしい場合は定時に高空に飛行機を飛ばし、又は気象観測船を海上に配置して電波を中継せんと計画しています。又最近では、電波を月に反射せしめて長距離到達も可能であるといわれるようになつたので、或いはこの方面から電波の長距離中継が実現するかも知れません。時間が短いので系統的に評しく説明して、塚田郵政大臣並びに木村防衛庁長官に、マイクロ・ウエーブ問題の中核を納得して頂けるようにできないことは大変残念であります。いずれ、木村長官が御要求されるように、機を見て、資料を示してくわしくお話したいと存じます。 以上簡単に述べましたが、NTVがマイクロ・ウエーブ施設を、アメリカからの借款で建設せんとして、電電公社に貸与せんとする申入れが拒絶されるや、今度は手を変えて、防衛庁へ、そのマイクロ・ウエーブ施設の管理を一部委ねる形においてこれを建設せんとする意図を持つていることは明らかであります。
……』
山田節男は、日本のマイクロ・ウエーブ網はVOAと同様にアメリカが全世界的な軍事設備の一環として建設を進めているのではないかと質問したのだ。これに対して久保等理事は妄動と拒否している。
山田によれば、世界規模のマイクロ・ウエーブは「……アリユーシヤン群島から、千島列島がソ連領である今日、如何にして北海道の北端を中継するか……」が問題で完成の目途が立っていないと睨んでいた。つまり千島列島はソ連が占拠していて竣工の目途が立たない時期であった。しかし、莫大な費用を掛けた軍事施設であることはわかるが、その全体像はみえてこない。このことを理解するのは、いわゆる地政学では、ロシアは広大な領土を持つものの、実際に地球儀をみればわかるように、外洋に出ようとする場合に利用できる海域は3海域しかない。一つはバルト海、二つ目は黒海、三つめは日本海だけである。リムランドからすると、この三地区の港湾を抑えることでリムランドはハートランドに勝敗できると考えているのだ。軍艦の力で世界を制覇したイギリスらしいドグマである。実際は、ロシアはこれに対応するため船を利用せずに鉄道を敷設し対抗していることから、イギリスが考えるほどに海洋方面からの締め付けに効果があるとは限らない。むしろ、食料や燃料など自らの首を絞める結果になっている。
 ところで問題の千島列島部分が完成した暁には、冷戦の包囲網が完全に閉じる時であるとともに、イギリスのドグマである地政学で云うリムランドがハートランドを閉じ込めるときなのだ。その実態は、マイクロ・ウエーブの大西洋側最先端に位置するグリーンランドにチューレ空軍基地(Thule Air Base)の存在していることが好例であろう。同基地は、1953(昭和27)年からは戦略航空軍団のB-36、B-47爆撃機が配備されていたとされている。また、1961(昭和36)年には弾道ミサイル早期警戒システム(BMEWS)のレーダーが設置されていることが知られている。同基地はICBMなどの弾道ミサイル警戒任務にあたっている。したがって、北方領土が返還となったら国後、択捉両島は面積も広く航空機が発着する基地を建設できる広さもあることからチューレ空軍基地と同等のものとなったはずである。そして北方領土が返還となった場合に、そこにアメリカ軍の施設が作られるであろうことは疑うべき余地もないことを外務省が作成した日米地位協定に関する機密文書『日米地位協定の考え方』[2]で認めている。

 つまり、昭和27年に日米安全保障条約(旧日米安全保障条約)及び行政協定締結の時から、アメリカは北方領土が日本に返還された場合にアメリカ軍の基地を設置してソ連を締め上げる心算でいた。平成3(1991)年、絶好のチャンスがソビエト崩壊とともに訪れた。平成5(1993)年10月13日、「自由、民主主義、法の支配、基本的人権」と「普遍的な価値」という慣用句を含んだ東京宣言が出された。これでロシアは、日本に北方領土を主権とともに返還したならば、エリツィンの知らない日米の秘密協定により、旧北方領土にアメリカ軍基地が設置されてしまい自国の安全保障を窮地に陥らせることになったのだ。
 その後のロシアであるが、1999年12月31日, エリツィン前大統領の辞任に伴い、プーチンが大統領代行となった。 2000年3月26日, 大統領選挙でプーチンが当選し同年5月7日に大統領に就任した。プーチンは、東京宣言の「自由、民主主義、法の支配、基本的人権」と「普遍的な価値」という慣用句のレトリックに気付き、大幅な方針変更を行った。それが2000(平成12)年9月5日、プーチンと森喜朗が「……択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島の帰属に関する問、題を解決することにより平和条約を策定するための交渉を継続すること」に合意し署名した「平和条約問題に関する日本国総理大臣及びロシア連邦大統領の声明」であった。
 次に日本とロシアが領土問題に付いて話し合いを持つのは、冒頭で紹介した平成30(2018)年9月にプーチン大統領が平和条約締結を日本政府に提案したことを受けて同年11月14日に安倍晋三とプーチンの会談が実現した。その直後の様子は、平成30(2018)年11月15日付け朝日新聞記事に『首相「2島先行返還」軸に日ロ交渉へ』がある。
『……
安倍晋三首相は14日、訪問先のシンガポールでロシアのプーチン大統領と会談し、1956年の1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させることで合意した。56年宣言は平和上日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させることで合意した。56年宣言は平和上約締結後に歯舞(はぼまい)群島、色丹(しこたん)島の2島を引き渡すと明記している。日本政府は従来、国後(くなしり)、択捉(えとろふ)の2島も含めた北方四島の一括返還を求めていたが、首相は今後の交渉で2島の先行返還を軸に進める方針に転換した。
……』
 つまり、アメリカ軍基地建設に最適な国後、択捉両島を含む4島返還を目標に国民運動まで行ってきた自民党の思惑は肩透かしを食らったのである。まさに柔道好きのプーチンに一本取られたのだ。
 このころプーチンは日本政府とどのように交渉を進めようとしていたのかを『ポスト・プーチンのロシアの展望』[3]とする報告書にまとめている。尚、この報告書をまとめたのは、有識者会議の座長である佐々江賢一郎が理事長であった公益財団法人日本国際問題研究所であることは注目に値する。
『……
1.日本テレビとの会見(2016 年 12 月)
  日本には(日米)同盟上の義務がある。しかし日本はどこまで自由で、どのくらいまで踏み出す用意があるのかを見極めなければならない。
2.東京における記者会見での発言(2016 年 12 月)
  ウラジオストクとその北には大規模な海軍基地があり、太平洋への出口である。日米の特別な関係と日米安保条約の枠内における条約上の義務を考慮すれば、この点について何が起こるかわからない。
3.サンクトペテルブルグにおけるマスコミ代表者との会見(2017 年 6 月)
  アラスカや韓国など、アジア太平洋地域で米国のミサイル防衛(MD)システム が強化されており、ロシアにとっての安全保障上の脅威である。
・我々は脅威を除去せねばならず、島(北方領土)はそのために好適な位置にある
・返還後の北方領土には米軍基地が設置される可能性が排除できない。これは日米間の合意の帰結であり、公開されていないが、我々はその内容を全て知っている。
4.モスクワにおけるマスコミ代表者との会見(2018 年 12 月)
  沖縄では米軍基地移設に対する反対運動が広がっているが、その声が日本の政策に反映されていない
・この問題について、日本にどこまで主権があるのかわからない
・日露が平和条約を締結した後に何が起こるかわからない。これに対する答えなくして具体的な解決策を取ることはできない
・米国の MD システムは戦略核戦力の一部であり、防衛的な性格であると理解することはできない。
……』
 等、プーチンは正直に自国の安全保障上の問題を述べるとともに日本の問題点を十分に認識していた。安倍晋三は、アメリカに日本の自衛隊を移譲した歴代内閣総理大臣の一人としては、日米安保を破棄する心算もないことから、そもそも交渉の成立はあり得なかったのである。「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の座長であった佐々江賢一郎は、安倍晋三とプーチンによる領土問題の裏には北方領土にアメリカ軍基地を設置することがあるのを見透かされて失敗したことを熟知していた。ならば、交渉による解決はできないことから「令和4年日本国国防方針」にロシアを仮想敵国とするように提言した。つまり佐々江は一貫してロシアを敵とするイギリスのドグマを信仰して活動していた中心人物ではないかと思わざるを得ない。日本の外務省は、日本の国益のために働いていないのだ。

 この回の最期に、マイクロ・ウエーブ問題の国内での動きを掻い摘んで紹介しておく。
 アメリカに譲渡した「電波権」は、アメリカからすると安全保障上の問題であるが、日本では譲渡した「電波権」の褒美が電波利権となっていた。そんなマイクロ・ウエーブ利権を握ったのはCIAエージェント正力松太郎(コードネーム:PODAM)であった。マイクロ・ウエーブがミサイル防衛網に利用されていることを国民の目に触れないようにするため昭和27年に正力が日本テレビを設立し隠蔽工作を行った。その時の資金はアメリカ国務省及びアメリカ対日協議会が橋渡しを得て、合衆国輸出入銀行より1000万米ドルもの借款の斡旋をえて実施された「PODALTON」という「正力松太郎マイクロ波通信網建設支援工作」だったとされている。
 そして、日本の電波権がアメリカのミサイル防衛網に組み込まれていることを明らかにしたのは小日向白朗であった。その端緒は、小日向白朗がキッシンジャーの招きに応じて訪米してNSCと対中国問題について会議を行う中で明らかになったものである。小日向の説明によれば、アメリカはソ連が発射したICBMを空中で要撃するためにはABM(Anti-ballistic missile)網を必要としていて、そのABM網の電波探知機の触角に相当する部分をVOAが担っていた。このころのABMは弾道ミサイルに対して迎撃ミサイルを正確に誘導して命中させることは不可能であった。そのため、アメリカが考えた迎撃方法は、空中で核爆発を行い発生するX線で相手の核弾頭を破壊する方法を採用していた。その触角はアメリカ政府が運営し宣伝放送を行っていたVOAで、その基地局は日本国内に11ケ所存在していた。そしてVOAは当時アメリカが推し進めていた「VISIONS OF AMERICA」計画と密接につながっていて、それを実現するためにはマイクロ・ウエーブ網を整備することが不可欠であった。
(第6回終了)

P.S.
令和5年1月23日、首相官邸発表、「第二百十一回国会における岸田内閣総理大臣施政方針演説」の全文を読んで驚いたことがある。
『……
わが国外交の基軸は、日米関係です。先日の日米共同声明に基づき、引き続き、日米同盟の抑止力・対処力を一層強化し、地域の平和と安定および国際社会の繁栄に貢献していきます。また、経済版「2プラス2」を含む、さまざまなチャンネルを通じ、サプライチェーンの強靱化や半導体に関する協力など、経済安全保障分野における連携にも取り組みます。
日米同盟の強化と合わせて、基地負担軽減にも引き続き取り組みます。普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し、辺野古への移設工事を進めます。また、強い沖縄経済をつくります。
……
日露関係は、ロシアによるウクライナ侵略により厳しい状況にありますが、わが国としては、引き続き、領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持します。
……』
とある。
  岸田総理大臣は、日米安保を堅持、すなわち自衛隊指揮権は移譲したままで、日露交渉についてはプーチン大統領に日米安保条約を破棄しなければ北方領土の返還には応じないと云われているにも拘らず「領土問題を解決し、平和条約を締結する」と意気込んでいる。プーチン大統領は「日本に北方領土を返還したら日米安保条約の秘密協定によりアメリカ軍基地を作るのでだめだと云っている」にも拘らず、日本国民をまだ「北方四島返還運動」程度で、だまし続けることができると思い込んでいるようだ。これくらいの腹黒さでなければ日本の総理大臣は務まらないのかもしれない。
  すなわち、日本政府がロシアと北方領土返還交渉を行ったのは、アメリカ軍基地を作るためであった、ということだ。
以上
 

[1] 『第20回国会 参議院 電気通信委員会 第2号 昭和29年12月3日』。

[2] 琉球新報社編『日米地位協定の考え方』高文研(2004年12月8日)31頁。

[3] 小泉悠「軍事面から見た日露平和条約交渉」『ポスト・プーチンのロシアの展望』日本国際問題研究所(2019年 3月)。

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