ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
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劔岳リベンジ「今年の夏は長梅雨」

2020年11月21日 22時16分45秒 | Weblog
毎年7月の最終週に出かけている劔岳方面への登山。
今年も連年通りの梅雨明けを期待していたのだが、7月末になってもほぼ毎日のように空は泣いていた。
「行くだけは行ってみよう」と思い車を走らせたが、初日からかなりの雨脚の中をテントを背負って歩くことになった。
劔沢テン場に着き、雨の中でのテント設営は何かと動きに制約があり、いくら気をつけてはいてもテントの中は濡れてしまった。
設営後も雨は止むことはなく、トイレ以外はテントから出る気も失せた。
「明日はやっぱり無理だろうなぁ・・・」
呟く言葉にも力強さは無い。

フライシートに当たる雨粒の音は一晩中響き渡り、目が覚めるとその音は昨日よりも大きくなってしまっているようだった。
気持ちを切り換えるのに時間はかからなかった。
強い雨脚の中さっさとテントを撤収し下山開始。
寒い・・・
これが7月末の夏なのかと思える程肌寒かった。
動き出せばなんとか体は温まっては来たが、指先はかじかみ標高2700m近くになると息は白くなっていた。

室堂まで戻ってきた。
衣服の内側は汗で、外は雨で濡れ、できれば着替えをしたかったが、「まぁいつものことか」と思いそのまま2時間を掛け駐車場まで戻った。

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8月は大した山にも登らず、日帰りのごく軽い登山だけだった。
「9月にもう一度登ろう。あの山だけは外すことはできない」
そう思いながらコロナの夏が過ぎていった。

そして9月15日、文句なしの快晴の中、劔岳・北方稜線を目指した。

14日、仕事を終え食事と風呂を済ませそのまま出発。
単独での劔岳は3年ぶりの事になる。
本来の自分の登山スタイルであり、カッコつけて言うなら「孤高と孤独の劔岳」だろうか(笑)。

深夜、信濃大町駅付近へと来た。
自分の好きな通りを走る。


上手く言い表せないが、何故か深夜帯のこの通りが好きでならない。
「あぁ今回も来たんだなぁ・・・。また劔に登れるんだ。」
と、いつしかこの通りに来ると毎回思うようになった。

扇沢駐車場で車中泊(仮眠)をし、朝一の黒部アルペンルートで室堂へ向かった。


扇沢駅前。
つい二ヶ月前の大雨が嘘のような快晴に心が躍った。
夏程ではないだろうがそれなりに汗をかきそうな予感がした。


室堂ターミナルで登山届けを提出し、水を汲みいざスタート。
あの立山連峰の向こうに劔が、そして北方稜線がある。
今回の北方稜線はごく一部だけの縦走で、劔のてっぺんを越え「長治郎の頭」までを往復する予定だ。
そして宿は「劔沢小屋」。
山小屋を利用する事への不安はあった。
過去に例のない外出自粛や密を避けることへの不安だった。
もちろん小屋自体で様々な対策をしてはいるし、自分自身も同じだ。
それでも一抹の不安は拭いきれないが、それはどこへ行っても同じだろう。


室堂ターミナルから日本海(富山湾)が見えた。
空の青と海の青のコントラストが美しい。
それを標高2500mの地点から見ていることになる。
あまりにも当たり前すぎることだが、これってすごく贅沢なことだと改めて思った。

ミクリガ池を過ぎ、「雷鳥荘」を過ぎ、石段への下りに差しかかるポイントで一人の登山者とすれ違った。
目立つカラーのTシャツを着ていただけにちょっと目に留まった。
だが目に留まった理由はそれだけではない。
そのTシャツは、色こそ違え自分も何着が持っている物だった。
そう、劔沢小屋オリジナルのTシャツだったのだ。
そしてもう一つの理由は、その人はサングラスこそしてはいるものの明らかに「あの人だ」と分かった。
間違いない「多賀谷治さん」である。
劔・立山方面の山岳ガイドの第一人者であり、日本を代表する山岳ガイドの重鎮であると言っても過言ではない。
自分が最も憧れ、尊敬して止まない人なのだ。
つい3年前の夏の劔でもお会いすることができ、劔沢小屋で一緒となった。
これでお会いできたのは4度目となる。

声を掛けてみた。
自分の名前を言い、以前何度かお会いしたことを伝えた。
すると「2・3年前に劔沢小屋で会いましたよね。確かあの時は仲間の方と一緒だったような・・・」
覚えていてくれたことは正直意外だった。
こんな箸にも棒にもかからないような登山者の一人を覚えていてくれた事が不思議な程だった。


多賀谷さんとのツーショット。
この上ない光栄と感謝だ。

「そうですか、毎年劔に来ているんですね。素晴らしいことだと思います。」
自分にとって雲の上の存在であるにも関わらず、常に低姿勢で謙虚。
自分もこうでなければと願う。

握手をして別れた。
いい歳をしてテンションが上がってしまった(笑)。


これから登る雷鳥坂でさへ楽しみでならない程にやる気十分だ(笑)。


思い出の一枚。
2017年の7月、劔沢小屋にて。

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