石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

SF小説:「新・ナクバの東」(17)

2022-05-09 | 荒葉一也SF小説

(英語版)

(アラビア語版)

 

2022年5月

Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」

 

17. 「国境の南」作戦(4)

 サウジアラビア空軍のF16戦闘機9機はアラビア半島付け根のほぼ中間地点でイスラエルの給油機と護衛の2機に遭遇した。と言っても正面から対峙した訳ではなく、かなり手前から高度を下げて上空のイスラエルの3機をやり過ごすや直ちに反転し後方に回り込んだのである。

 

勿論イスラエル機のレーダーはサウジアラビア方面からこちらに向かってくる機影を捉えている。それがレーダーの端に現れた時はまだ機種も機数も確認できなかったが、双方の距離が次第に狭まり漸く9機の編隊であることがわかった。

 

レーダーは9機の編隊が彼らよりはるかに低い高度を飛行していると教えている。真正面から直接攻撃してくる気配はなさそうだ。イスラエルのパイロット達は編隊が自分たちの眼下を通り過ぎるのを目にした。サウジアラビア空軍の飛行訓練だと思った。

 

しかし上下ですれ違うと同時に9機は急上昇に転じ、イスラエル機の高度に達するや猛烈な追撃を開始した。トップスピードにあげると9機はたちまち給油機と護衛の2機に追いついた。イスラエル側もサウジアラビア側も戦闘機は全く同じF16である。しかし一方は足の遅い給油機と一緒のため追い付くのにさほど時間はかからなかった。

レーダーは9機が刻々と猛追してくる状況を示しているが、イスラエル側にはなすすべがない。後方からの接近のため自らの目で確認することは困難だ。戦闘機のコックピットは前方の視界に対しては上下左右ともかなり広い。しかし後方となると自らの機体に遮られほとんど視界が利かない。ましてヘルメットと酸素マスクが邪魔をしてわずかに首を真横に振ることができるだけである。イスラエル機のパイロット達はただ相手の出方を見る他なかった。

 

9機はイスラエル機の背後に接近すると、そのうち2機が左右の護衛機の頭上に張り付き護衛機と給油機の間に強引に割り込み始めた。小鳥たちは必死になって割り込みを防ごうとしたが、ついにイスラエルの3機とサウジアラビアの2機はほぼ横一直線に並んだ。そしてサウジアラビア機は機体を小刻みに振り護衛機を給油機から遠ざけようとした。それはまるで親鳥とそれにぴったり寄り添う2匹の小鳥の仲良し親子を引き裂こうとするようであった。

 

給油機と護衛機の間隔が次第に広がるのを見て後方の7機も前方に移動し、結局イスラエルの3機それぞれをサウジアラビアの戦闘機3機ずつが左右と後方から取り囲む形となった。

 

(続く)

 

荒葉一也

 


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