石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

敵の敵は味方かそれとも別の敵か? 複雑な中東の合従連衡と離合集散(上)

2020-09-17 | その他
(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。 http://mylibrary.maeda1.jp/0515AllyOrEnemyInME.pdf

1. 問題ごとに敵と味方が錯綜する現代中東
 今も昔も中東は紛争が絶えない。イスラエルとアラブの第一次~第四次中東戦争はその典型的なものである。最近のイスラエル-UAE/バハレーンの和平締結により新たな段階を迎えたが、その他にも多くの問題が発生している。ざっと上げただけでも、シーア派イランとスンニ派アラブの対立、ムスリム同胞団の対応をめぐるカタールとサウジアラビアとの断交などイスラムに根差す問題、リビア及びイエメンにおける「アラブの春」以降の国内覇権争いはイラン、サウジアラビア、トルコ、エジプトなど地域の大国の代理戦争の様相を呈している。また最近では天然ガスをめぐる東地中海の大陸棚あるいはガスパイプラインがホットな話題となっている。その他にも長い歴史的経緯のあるクルド民族独立問題、シリア内戦とそれによる難民のEUへの殺到など人道的な問題がある。そして第二次大戦後の西欧と中東関係の軍事面の中核をなすNATOあるいは政治・経済面でのEUをめぐりトルコが揺さぶりをかけるなど地域の安定を脅かす問題が頻発している。

 これら個々の問題では当事者が敵と味方に分かれて争っている。そして対立する当事国を支援しあるいは同調する国がある。当事者にとって「敵の味方は敵」である。ところが支援国が別の問題では敵の支援に回ることも珍しくない。こうなると「敵の味方は敵」なのか、それとも「敵の敵は別の敵」なのか、敵と味方の区別が判然としなくなる。現代中東を外部から見ると、同盟関係と敵対関係が一体どうなっているのか極めて分かりにくいのである。

 本稿は個々の問題点について敵味方で対立する当事国及び支援あるいは同調する国家の関係を大まかに俯瞰し、その中で主要なゲームプレーヤーを演ずるトルコなどいくつかの国を取り上げて、その国が各問題に関与する事情を概観する。これにより複雑な現代中東の合従連衡あるいは離合集散を解読しようとするものである。

2.紛争の諸様相とその関係国
(1)国家の独立・承認に関する紛争
(1-1)イスラエル・パレスチナ問題

【問題点】イスラエル国家の承認及びパレスチナ国家の独立。
【当事者】イスラエルとパレスチナ(PLO)。
【支援または同調する外国】イスラエル側:米国、パレスチナ側:アラブ諸国及びOIC(イスラム協力機構)
加盟国。

(1-2)クルド民族独立問題
【問題点】トルコ、シリア、イラク及びイラン4カ国にまたがって居住するクルド族と各国政府との独立あるいは自治権をめぐる紛争。
【当事者】クルド族:PKK(トルコ)、YPG(シリア)、クルド愛国同盟(イラク) 対 トルコ、シリア、イラク各国政府。
【支援または同調する外国】(特になし)

(1-3)北キプロス独立問題
【問題点】トルコ系住民が居住するキプロス島北部の分離独立問題
【当事者】キプロス 対 トルコ
【支援または同調する外国】キプロス側:ギリシャ。北キプロス・トルコ共和国承認はトルコのみ。

(続く)

本件に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
荒葉一也
Arehakazuya1@gmail.com


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