イニストラード:マウアーの太祖、ストレイファン

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マウアーの太祖、ストレイファン(Strefan, Maurer Progenitor)はカードセット「イニストラード:真紅の契り」統率者デッキ収録の伝説のクリーチャー・カードである。

今夜あたりストレイファン・マウアー主役の短編が更新されるのではないか?と見込んで、事前に情報をまとめておくことにした。

※ 本記事は短編公開前の時点での情報まとめとなっており、正規設定とは食い違っている可能性があることにご注意を。

※ 予想通りにストレイファン・マウアー主役の短編「貪る家(The Devouring House)」(原文和訳版が更新された。

追記(2021年11月26日):短編の内容を記事内に追記した。

マウアーの太祖、ストレイファンの解説

マウアーの太祖、ストレイファン(Strefan, Maurer Progenitor)

データベースGathererより引用

マウアーの太祖、ストレイファン(Strefan, Maurer Progenitor)はイニストラード次元の吸血鬼の小規模血統マウアー家の始祖1である。イニストラード史上初の吸血鬼となった人間の1人であり、齢7000歳以上を誇る古き存在である。

ストレイファンはステンシア州のマウアー地所(Maurer Estate)を支配する領主である。

「マウアー」と和訳された「Maurer」はドイツ語で「石工」「レンガ積み職人」「左官」といった意味で、「マウアー」よりも「マウラー」に近い発音の言葉だ。ステンシア州は山がちな土地なので、ストレイファンの祖先は元々は石材業に携わった一族だったのかもしれない。

まだ人間であった頃、ストレイファンには父親以上に尊敬に足る人物はいなかった。その父親を不慮の事故で喪うと、不老不死の秘密解明に執着するようになった。魔術を研究する過程で、悪魔シルゲンガー(Shilgengar)と繋がりを持ち、不老不死を約束させる見返りとしてこの悪魔と契約を結んだ。その後、兄弟のセルゲイを殺害しその血を飲むと、ストレイファンはマルコフ荘園に赴きエドガー・マルコフ(Edgar Markov)と協議を持った。

こうしてストレイファンはエドガーやオリヴィア・ヴォルダーレン(Olivia Voldaren)ら、イニストラード次元の吸血鬼の始祖となる人間たちと協力関係を結び、悪魔シルゲンガーの助力の下で不浄の儀式を行って吸血鬼となった。

現在、ストレイファンは小規模血統マウアー家の始祖であり、マウアー地所の領主として健在である。しかし、その権力と地位は限られたものでしかないことに不満を抱いており、領地を比類なき残酷さで統治している。

ストレイファンの配下には、小規模血統のダスケン家の残党や、放浪の苦心の民に縁のある者たちも含まれている。



マウアーの太祖、ストレイファンというキャラクターの経緯

ストレイファンの初出はカード化の5年前、2016年に遡る。

出自はかなり変わっており、元々はイニストラードの世界をD&D第5版で遊ぶためのルール「Plane Shift: Innistrad」で登場したキャラクターであった。

D&Dにはホラー特化な世界レイヴンロフト2があり、「Curse of Strahd(ストラードの呪い)」はそのレイヴンロフトを舞台にしたホラー・アドベンチャーである。「Plane Shift: Innistrad」には、この「Curse of Strahd」を流用してイニストラード次元に変換する遊び方が紹介されている。レイヴンロフト特有の人物や地名、モンスター、設定をイニストラードに適したものに上書き修正するものだ。

ストレイファン・マウアーもこうしてD&Dのキャラクターを上書きされて誕生したキャラクターであった。元となったのはD&Dでも最も有名な吸血鬼といえるレイヴンロフト城主、ストラード・フォン・ザロヴィッチ伯爵(Count Strahd von Zarovich)その人である。

データ的な流用は当然多くあるのだが、ストラード伯爵からストレイファン・マウアーに単に名前を挿げ替えたわけではなく、新規に作り込まれた設定を持たされて創作された別個のキャラクターとなっている。

このように、ストレイファンにまつわる諸々は、D&Dを遊ぶために製品を流用して作られたキャラクターであり設定であったわけで、これらが正規の設定に組み込まれ、なおかつカード化までされるとは私は心底驚かされた。

追記:本記事投稿後の深夜に、ストレイファン・マウアー主役の短編「貪る家(The Devouring House)」(原文和訳版が更新された。ストレイファンや亡くなった両親、見捨てられた一族の邸宅、そしてそこに住まうようになった怪物フラドヴォア(Hladvora)などが描かれた。しかし、ストレイファンの既存設定の内でも元々がD&Dであるため正規設定として残るか微妙な諸々については、短編作中では一切触れられなかった。追記ここまで

マウアー地所

マウアー地所(Maurer Estate)はステンシア州のガイアー・リーチ3山地帯でも辺境の谷にある見捨てられた土地だ。

ステンシア州の遠隔地である辺境の谷は8つの地域に分けられるが、特筆すべき地域はその内の3つのみとされ、ストレイファン・マウアーの領地であるマウアー地所もそこに含まれる。

マウアー地所は最初のイニストラード・ブロックの解説記事A Planeswalker’s Guide to Innistrad: Stensia and Vampiresでたった一言だけだが存在を言及されていた地名である。

Plane Shift: Innistradでは、マウアー地所の細かい地理・歴史情報が解説されている。それによれば、マウアー湖(Maurer Lake)があり、領内にはソンバー街道(Somber Road)が通っている。ソンバー街道はステンシアでもよく使われるホフスアデル(Hofsaddel)の山道と通じているが、長く遠回りである。

ソンバーワルド(Somberwald)はステンシア州の谷や峰の間に生い茂る松の森林地帯だが、マウアー地所の領内にもこのソンバーワルドの一部が広がっている。ソンバー街道はこの森に由来する名称と考えられる。

マウアー家の古の荘園邸宅

マウアー家の古の荘園邸宅は、ストレイファンの父が亡くなった後に放棄された廃墟である。

ここは短編「貪る家(The Devouring House)」(原文和訳版で物語の舞台となり、ストレイファン・マウアーの設定解説内で言及されている場所だ。

ストレイファンが吸血鬼となる以前から7000年以上も見捨てられたままだったが、恐怖を餌として貪る怪物フラドヴォラ(Hladvora)が館に住み着いた。ストレイファンをこの地に誘き寄せて喰らおうとしたが、返り討ちにされた。

「Hladvora」はおそらく「飢餓」を意味する「hlad」と、「貪る」を意味する接尾辞の変形「vora」から成る合成語だ。

マウアー地所の双子

“Children, where are your parents?”
–Reig, wandering monk, last words
「お嬢ちゃんたち、ご両親はどちらかな?」
–放浪のモンク、レイグの最後の言葉
引用:マウアー地所の双子(Twins of Maurer Estate)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

マウアー地所の双子(Twins of Maurer Estate)

マウアー地所の双子(Twins of Maurer Estate)
データベースGathererより引用

マウアー地所の双子(Twins of Maurer Estate)はカードセット「イニストラードを覆う影」収録のクリーチャー・カードである。

マウアー家に関して言及したカードはこれまで、このカードしか存在していなかった。マウアー地所に住む双子の少女(の姿をした)吸血鬼である。イラストでは口元を血塗れにした双子が描かれているが、画面の右下には犠牲者となった人物の手足が見えている。これがおそらくフレイバー・テキストで双子に声をかけた放浪する修道士のレイグ(Reig)なのであろう。

カード紹介:歴代の「最期の言葉」
マジック・ザ・ギャザリング(MTG)の歴代フレイバー・テキストで語られる「最期の言葉」について調べ、一覧化した。もっとも有名なルアゴイフを初めとして、最古のカードからモダン・ホライゾンまで網羅した。

Plane Shift: Innistradでは、双子の名前と簡単な設定が公開されている。名前はルビー(Ruby)カーマイン(Carmine)で、迷子になった無力な幼い少女を装って獲物に近付くのを好むという。

短編「貪る家(The Devouring House)」(原文和訳版においては、ストレイファンは見捨てられた古の荘園邸宅の守衛の役目を双子に課していた。しかし、作中では双子の姿は見えず、あるいは怪物フラドヴォラによって排除されたのかもしれなかった。

セルゲイ・マウアー

セルゲイ(Sergei)はストレイファン・マウアーの兄弟とされる人物だ。ただし、正規設定として採用されるキャラクターかは疑わしい存在だ。

セルゲイに言及があるのはPlane Shift: Innistradである。それによると、ストレイファンは父親の死後、魔術を学び、不老不死を約束する見返りに悪魔シルゲンガーと契約を結んだ。そして、ストレイファンは兄弟であるセルゲイを殺害して血を飲んだ後に、マルコフ荘園に足を運びエドガー・マルコフと協議した。2人は協力し合い、シルゲンガーと共にイニストラード次元の吸血鬼12血統を生み出した。

このような件でセルゲイの存在が一言触れられている(記述はこれっきり)。実はこのセルゲイという人物は元々はD&Dのレイヴンロフトのキャラクターのセルゲイ・フォン・ザロヴィッチ(Sergei von Zarovich)であり、兄弟であるストラード伯爵によって殺されたという設定があるのだ。

したがって、流用して無理なく遊ぶためにそのまま組み込まれた人物にすぎないため、正規設定になるかは怪しい存在となるのだ。また、同じ流れで語られてるストレイファンと悪魔シルゲンガーとの関係性も同様にこのまま採用されているのか疑わしくある。

ダスケン家

近野の忍び寄り(Nearheath Stalker)

このイラストがダスケン家の挿絵に流用されている
近野の忍び寄り(Nearheath Stalker)
データベースGathererより引用

ダスケン(Dusken)はイニストラードの吸血鬼の小規模血統の1つである。

ダスケンの始祖、イルスカ・ダスケン(Irska Dusken)は何世紀も前にストレイファン・マウアーの手で殺害されており、その時に一族は離散してしまった。しかし、ダスケンの一部はストレイファン・マウアーの配下として仕えている。

ダスケンは元はD&Dのダスク・エルフ(Dusk Elf)だ。これに相当するエルフ種族がイニストラードには存在しないので、吸血鬼の血統へと変換された。名前にその名残がある。

Plane Shift: Innistradではストレイファン・マウアーに長年使えるラハディン(Rahadin)が解説されている。赤い上等な衣服に身を包むダスケン血統の吸血鬼の男性だ。しかし、これも元はD&Dのキャラクターで、ストラード伯爵の下僕にして腹心のダスク・エルフのラハディンをそのまま流用したものである。したがって、ラハディンも正規設定として存在しているとは限らない(彼に相当する別名の人物がいる可能性の方が見込みがある)。

苦心の魔女

苦心の魔女(Bitterheart Witch)

苦心の魔女(Bitterheart Witch)
データベースGathererより引用

苦心の魔女(Bitterheart Witch)はカードセット「イニストラード」収録のクリーチャー・カードである。

苦心(Bitterheart)」と呼ばれる民はステンシア州の灰口(Ashmouth)に呑み込まれた村落の末裔である。生き延びるために悪魔と契約を結び、放浪の民となった。

苦心の中にはストレイファン・マウアー直参の配下となる者もいる。

マウアーの太祖、ストレイファンの設定解説記事

ストレイファン・マウアーの設定はカード化した際に設定解説記事The Legends of Innistrad: Crimson Vowで改めてまとめられている。

記事原文から該当部を引用し、本サイトで独自に訳した文章を添えてみた。

Strefan Maurer is the progenitor of the Maurer lineage of vampires and the lord of a remote part of Stensia’s outland valleys. As a human, millennia ago, Strefan admired no one more than his father. When his father met his end in an untimely accident, Strefan became obsessed with uncovering the secret to immortality. This obsession eventually led to a partnership with Edgar Markov, Olivia Voldaren, and the other humans who eventually became Innistrad’s first vampires.
Frustrated with his limited power and status as a “minor” vampire lord, Strefan treats his people with an incomparable cruelty. Sigarda attempted to intervene in the past, but Strefan was able to repel her forces. Angels have not set foot nor wing in his territory ever since. Strefan fears only one thing: his ancient familial estate. Abandoned when his father died, twisted and terrible things haunt its halls.
Strefan’s story coming soon.

ストレイファン・マウアーは吸血鬼の血統であるマウアー家の始祖であり、ステンシア州の辺境の谷の領主である。数千年前、人間時代のストレイファンには、父親以上に尊敬に足る人物はいなかった。父親を不慮の事故で喪うと、ストレイファンは不老不死の秘密解明に執着するようになった。その結果がエドガー・マルコフやオリヴィア・ヴォルダーレンら、イニストラード史上初の吸血鬼となった人間たちとの協力関係だ。
ストレイファンは、吸血鬼の「小規模」領主としての限定的な権力と地位に不満を抱きつつ、比類のない残酷さで人々に接している。過去にはシガルダが干渉を試みたこともあったが、ストレイファンは彼女の軍勢を撃退した。それ以来、天使は彼の領土に足も翼も踏み入れてはいない。ストレイファンが恐れるものはただ一つ、古代より相続した一族の荘園である。父親が亡くなったときに放棄されているが、その邸宅にはねじれた恐ろしいものが取り憑いているのだ。
ストレイファンの物語は近日公開予定。
引用:公式記事The Legends of Innistrad: Crimson Vow
上が英語原文。下が私家訳



さいごに

ストレイファンの物語が語られる前に取り急ぎ、既存情報をまとめてみた。

MTGの正史となるストーリー作品でストレイファンが登場するのは今回が初めてである。そこで明かされる内容は、あるいはPlane Shift: Innistradとは全く別のものになるかもしれない。どれだけ設定が残されることになったのか、はたまた完全に刷新されてしまったのか、期待に胸を膨らませながら短編の更新を待ち受けることにしようか……。

では今回はここまで。

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  1. イニストラードの吸血鬼の「Progenitor」はこのカードで「太祖」と訳されたが、これまで10年来ずっと「始祖」が定訳であった
  2. より正確にはバロヴィアにあるストラード伯爵の城がレイヴンロフト
  3. 原語は「Geier Reach」で「禿鷲地方」という意味を持つステンシア州に広がる大山地帯。公式和訳は「ガイアー岬」だが、どう考えても「岬」とは訳せない。イニストラードでは度々目にする不可解な和訳の固有名詞の1つ