タオル補正
2022年7月18日、公式ブログで樋口日奈さんが卒業を発表しました。

私は以前にそれを「ストレートを磨いた」と表現しましたが、11年間まっすぐで優しい乃木坂人生を送ったメンバーでした。

ひなちまってる


まずはその経歴を簡単に振り返ります。

通った鼻筋と大きな目に黒髪ロング。
中学生なのにどこか艶っぽさのようなものをたたえた顔立ちで穏やかな笑顔。

加入当初の雰囲気は「和風美少女」
特技として披露した歌舞伎もその印象を強めました。

東京出身なのにキャッチコピーで「おいでやんす」と言っていたので川後陽菜に「ニセ京都人」なんてあだ名をつけられたこともありました笑

齋藤飛鳥、和田まあやと共に「年少組」のイメージがある彼女ですが、実際にはふたりより1学年上の97年組。
川後陽菜、相楽伊織、佐藤楓、星野みなみ、山崎怜奈というなかなかクセの強いメンバー揃いですね。

8th『気づいたら片想い』で初選抜。

しかしそれ以降は選抜の厚い壁に跳ね返され続けます。

「(齋藤飛鳥や星野みなみといった)同世代のメンバーに対し遅れをとっている」という思いから高校卒業後は進学せずに芸能活動に専念。
その夏に15th『裸足でSummer』のアンダー曲『シークレットグラフィティー』で初のアンダーセンターを務めます。

18th期間のアンダラ九州シリーズ(『アンダー』の時です)では座長である中元日芽香と北野日奈子が共に不安定な体調を抱え欠場を続ける中、その代役を果たし続けます。
続く19thのアンダー曲『My rule』では再びセンターに。

末っ子キャラからアンダーの柱へと成長した彼女。
同時期に台頭してきた寺田蘭世、渡辺みり愛、鈴木絢音ら2期生たちと共にアンダーライブを盛り上げ、選抜の座を争うようになります。

この15thからのアンダーを私は「樋口日奈と2期生の時代」と認識しています。ちなみにその前は「温泉トリオ時代」でブリッジとなるのが「サンダル脱ぎ捨て隊時代」かと。

若干話が前後しますが、待望の選抜入りは約3年ぶりの17th『インフルエンサー』そしてその1年後の『シンクロニシティ』でした。

2018年4月には『JJ』の専属モデルになります。

3期生合流以降のグループにおける立ち位置は「安定勢力」「中堅メンバー」という感じ。
握手人気は斉藤優里や中田花奈といったかつての選抜常連組や寺田蘭世、渡辺みり愛ら2期生たちと比べて突出するところまではいかず「アンダー最上位」というところでした。

1期生全員集合の25th『しあわせの保護色』で選抜復帰。
26thは選抜落ちしたものの27thから卒業する30thまで4作連続選抜入りしました。

2022年4月には写真集『恋人のように』発売。推定売上部数5万7千部強となかなかの数字を叩き出します。

舞台メンのひとりでもありました。

井上小百合とWキャストでヒロイン白鳥美美子役を務めた『帝一の國』シリーズに始まり、グループ内舞台でも『じょしらく弐』『墓場、女子高生』『セーラームーン』と中核を担います。
2019年にはいわゆる外部の舞台に4本も出演。2021年の『フラガール』では自身初の主演も経験しています。


アンバランスなバランス


変な人でした。

メンバーが彼女を評する言葉でよく聞くのは「とにかく優しい」
ただ苦楽を共にしてきた1期生からは「ノリで生きている」とも言われていますね笑

もの凄く真面目で自分を律するしっかり者なのは先日の久保史緒里とのラジオでもわかるのですが、やっぱり私の印象は真面目さとクレイジーさが同居したような「変な人」です。

中高一貫の有名校出身と言われており、学業との両立に励んでいるエピソードが多かったことから初期は「生真面目な優等生」だと思っていました。

しかしその印象もいつしか薄れていきます。

初選抜の時に冠番組で披露した「恐竜の真似をする坂之上くんの真似」や後に見せた「ダイナミックすぎて怖い鉄棒」など、徐々に「ブレーキが壊れてる感」溢れる言動が目立ち始めます。
(逆に言えば、当時の乃木坂はアンダーメンバーの露出が少なく初選抜までなかなかキャラクターがわからなかったのです)

天真爛漫で世間知らずなお嬢さん。
そんなどこか危なっかしい雰囲気もありました。

『乃木坂工事中』のメンバー投票企画で「将来お金に困りそう選挙」堂々の2位。
理由も「悪い男に貢ぎそう」「ダメな男に尽くしそう」という危険極まりないものでした笑

そして初選抜からアンダーに落ちた頃からでしょうか。自身の「セクシーさ」を武器にしなければいけないと感じている節もありました。
『のぎ天』での「布は少ない方がいいかと思って」という発言や「憧れの女性は壇蜜さん」など、なかなか上がらない人気に焦りを感じていたのではないでしょうか。

写真集以外は露出度が低いという暗黙のルールがある乃木坂において、真面目で幸薄そうなビジュアルの年少メンバーがセクシーさを武器にするというのはあまり得策ではなかったように思います。

そんなどこか危ういアンバランスさのある彼女には、たぶん時間が必要だったのでしょう。

アンダーライブや外舞台の出演を積み重ね磨かれたパフォーマンス。

髪をバッサリ切って明るめのショートカットにしてからのビジュアル、特に2021年の9thバスラ前後の充実ぶりには目を見張るものがありました。

グループ加入10年を目前にし自身も「年少メン」から「お姉さん」へと成長する中で、色々なものがやっとかみ合ってきたという印象です。

この頃から顕著に見えてきた「優しくてとぼけた無自覚におもろい姉さん」というキャラがきっと彼女の本質に近いのでしょう。


最後にこれからの彼女について。

ほぼ間違いなく演技の道へ進むでしょう。

『乃木坂工事中』の「キメ顔グランプリ」を観てわかるように彼女は映像に強い。
ただあの度胸は舞台向きだし、舞台上での華やかさも兼ね備えています。

ヒロイン役というよりも女性キャストの3番手4番手で登場し、「あの人綺麗だったな、何て名前だろ?」と視聴者がエンドロールで確認するような俳優さんになりそうな気がします。

上で書いたアンバランスさゆえに、エキセントリックな役もひたすら優しい聖母キャラもどちらも素で行けそうな彼女。

役柄に振り幅のあるバイプレイヤーとして息の長い活躍を見せてくれるかもしれません。

樋口日奈さん、11年間お疲れさまでした。



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