孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  中国独自の人権意識のもと、北京五輪にも厳しい「管理・統制」

2022-01-20 23:05:26 | 中国
新型コロナ感染者が立ち寄ったということで突然封鎖されたデパートで、孫と離れ離れになった女性「早く扉を開けて!私の孫が・・・」 SNS映像


一方、政府側は、閉鎖を終えて出てくるにこやかな客に花や記念品を配る関係者の様子を「心温まる55時間」として紹介

【中国メディアは「党の喉と舌」 報道管理の実態】
2月の北京オリンピック、更には習近平体制継続を決める秋の党大会を控えて、中国がなりふり構わぬ姿勢で「ゼロコロナ」を死守し、それに伴って多くの「弊害」も出ていることが連日報道されています。

下記もそうした報道の一つですが、報道管理という中國政治の「怖い面」がうかがえる内容にも思われます。

****上海ユニクロで客がいるのに“封鎖”北京五輪“一般チケ”販売中止で国内から不満も****
開幕まで3週間を切った北京オリンピック。コロナを巡る情勢が厳しいとしてチケットの一般販売はしないことを発表しましたが、国内からは不満の声も上がっています。  

上海のユニクロで撮影された、まさかの映像。  
買い物客:「まさか!おしまいだ!ちょっと、ついでにユニクロに寄っただけなのに…。店内に入って2分も経たないうちに、もう出られなくなった!」  
入り口は閉められ、テーブルの上には食料も。床を見ると、寝袋で睡眠を取っている人も。  

一体、何が起こっているのか。  ゼロコロナ政策を行う中国。13日、店内で陽性の疑いのある人物が発見されたとして、店舗ごとおよそ20時間閉鎖し、店内にいた買い物客、全員のPCR検査を行いました。  

このところ、各地のデパートや商業施設などで同じような事態が起こっているそうです。  閉鎖されたデパートの中には離れ離れになった小さな子どもの姿も。  

一方、同じデパートの話ですが、政府側は「心温まる55時間」として全く違う世界観でこのニュースを紹介。  閉じ込めから解放された人々がデパートの出口付近で盛大に出迎えられ、記念品や花束を渡されている様子も。(中略)

また、開幕まで3週間を切った北京オリンピックの大会組織委員会は「新型コロナを巡る情勢が厳しい」として、観戦チケットの一般販売は行わないことを発表しました。  しかし…。  

チケットの販売は中止されましたが、「無観客」ではありません。ある中国の国有企業に配られた「招待状」です。実は水面下では、こうした企業などへの観戦枠の割り当てが進められています。  

「特定の人だけ」に観戦を認める方針に当然、国内からは不満の声も。  中国のネットの声:「自分の国で開催されるのに観られない。スタジアムに行けるのは政府と関係のある人だけだ」「政府とパイプのある人だけオリンピックを見られるのか?」  

政府批判にもつながりかねない状況ですが、一体なぜ、観戦枠の特例を認めるのでしょうか。  

中国総局長・千々岩森生記者:「『国民の不満』というリスクはありつつも、中国政府には、事前に選んだ観客だけを入れることで、『オリンピック全体をコントロールしたい』『管理しやすくしたい』という狙いも見え隠れします」【1月18日 テレ朝news】
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冒頭2枚の画像  有無を言わせず突然閉鎖し、家族が離れ離れになるのも厭わない・・・というだけで、十二分に衝撃的ですが、同じデパートの出来事が政府にによって「心温まる55時間」として紹介される怖さ。

中国の政府系メディアは共産党のプロパガンダを担う「党の喉と舌」ですから当然と言えば当然ですが、国家権力による「管理」の実態、「中国独自の民主」の実態、報道の自由の重要さを教えてくれるます。

国民の生活すべて、政治はもちろん社会・経済の全てを、国家・党がその価値観に沿って「管理・統制」するというのが中国政治の基本であり、上記のような出来事も、五輪観客を「招待者」に限るという発想も、あるいは最近話題になっている文革を連想させるようなもろもろの社会・経済統制の強化も、すべてその基本の延長上にあるものでしょう。

そしてそうした「管理・統制」に異を唱える者、国家・党の価値観に沿わない者は排除・拘束され、場合によっては収容施設や精神科病棟に送られる。そうした「管理・統制」に従う限りにおいて個人の豊かさの追及が認められるというのが「中国独自の人権」でもあります。

【広がりを書く「外交的ボイコット」 欧米企業に対する五輪スポンサー撤回の説得も失敗】
北京オリンピックに関しては、そうした中国の人権の在り様に対する抗議から「政治的ボイコット」の動きもあります。しかし、アメリカ、イギリス、カナダなどが表明済みで、日本も政府代表団の派遣見送りを決めているものの、中国との関係を重視する立場もあって、そう大きな広がりにはならないようです。

****デンマーク、オランダも北京五輪を外交ボイコット****
2月に行われる北京冬季五輪について14日、デンマーク、オランダ両政府がそれぞれ、外交団を派遣しない方針を発表した。ロイター通信が伝えた。

デンマークのコフォズ外相は「われわれは、中国の人権状況を懸念している。政府として五輪に出席しないことを決めた」と述べた。オランダでは、外務省報道官が「中国の新型コロナウイルス対策で、現地での行動が極めて制限される」ことが理由だとしたうえで、中国の人権状況に対する政府の懸念を示した。

北京五輪への対応をめぐり、欧州連合(EU)は13、14日の非公式外相会合で一致した立場をとることができなかった。このため、オランダ、デンマーク各政府は、単独で方針発表を決めたとみられる。【1月15日 産経】
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「外交的ボイコット」が広がりを欠くなか、人権活動家による欧米企業に対するスポンサー撤回の働きかけも失敗しています。

****人権派の「説得」失敗か、世界の有名企業が北京五輪のスポンサー撤回を拒否―米華字メディア****
2022年1月19日、米華字メディア・多維新聞は、北京五輪・パラリンピックのスポンサー企業に対する人権派の「説得」が失敗に終わりそうだと報じた。

記事は、米紙ワシントン・ポストの19日付報道を引用。2月4日に始まる北京五輪、3月4日に始まる北京パラリンピックに向けて、一部の人権活動家がこの2年ほどの間、米国をはじめとする西側企業に対して大会スポンサーからの降板や中継取りやめを呼びかけるとともに、香港、新疆、チベットで弾圧を行っているとして中国当局を非難してきたと紹介する一方で、人権活動家が「欧米企業は北京五輪との取引履行をやめようとせず、中国による人権侵害に対して沈黙している」と語り、スポンサー企業への説得が奏功していないとの見解を示したことを伝えた。

その上で、多くのスポンサーにとって中国は非常に大きな市場の一つで、コカ・コーラ、P&G、Visa、ブリヂストンなどのスポンサーは中国の人権問題を回避しようとしており、1932年以降五輪の公式タイマーであり続けているオメガは「われわれのスポーツ事業の促進を妨げるため、一部の政治問題には干渉しない」というポリシーを定めているという同紙の報道を紹介した。

また、北京五輪に米国の外交官は出席しないものの米国選手は参加することから、米放送局NBCは北京五輪の放送権を放棄していないことにも言及。NBCが「北京五輪放送期間の広告販売は好調で、ほぼ売り切れ状態だ」とコメントしたことを伝えている。【1月20日 レコードチャイナ】
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このあたりが「現実」です。

【五輪での選手の発言への厳しい「統制・管理」も 「沈黙は共謀」ではあるものの、身の安全優先】
一方、開幕間近になって新型コロナ以外で表面化している問題は、参加選手らによる中国の人権状況への発言を抑え込もうとする動きです。

中国当局は外国人選手に対しても「管理・統制」に従うように求めており、国際人権団体も不用意な発言は重大な危険を伴うことを警告しています。

****【北京冬季五輪】 選手が人権問題で発言なら処罰も 組織委が警告****
北京冬季オリンピックの大会組織委員会は19日、オリンピック精神や中国のルールに反する言動をした選手について、処罰する方針を明らかにした。

大会組織委員会の国際関係部局の副責任者ヤン・シュウ氏は、「オリンピック精神に沿った表現は、いかなるものも間違いなく保護される。オリンピック精神に反した行動や発言、特に中国の法律や規制に違反するものは、いかなるものも特定の処罰の対象となる」と述べた。

処罰としては、選手の参加資格の剥奪が考えうるとした。

中国は、少数民族ウイグル族など主にイスラム教徒らを集団虐殺していると非難されている。中国はこの疑惑を繰り返し否定している。

香港の民主化運動や反体制的な言論への弾圧を強めているとの批判も出ている。中国は内政問題だと反発している。
イギリス、アメリカ、オーストラリア、カナダ、日本などは、中国での人権侵害が疑われることから、北京冬季大会に政府関係者を派遣しない外交ボイコットを表明している。

組織委が処罰方針を示す前には、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が記者会見を開き、北京冬季大会で選手が意見表明をすることの危険性について注意を呼びかけた。(中略)

東京五輪では緩和
国際オリンピック委員会(IOC)は、組織委の処罰の方針について問われると、五輪憲章第50条の2について説明した。同項目は、競技や大会の中立性の保護について規定している。

IOCは、「大会は五輪憲章に基づいて運営される。北京2022大会でも、過去のどの大会とも同様に、五輪憲章が適用される」とした。

昨夏の東京オリンピックでは、IOCは抗議活動の禁止を緩和。記者会見で「自分の意見を表明」することを認めた。だが、表彰台の上で政治的デモ行為をすることは引き続き禁止した。

「沈黙は共謀」
世界中のスポーツで「前向きな変化」が起こることを目指す選手中心の団体「グローバル・アスリート」は、自国に戻るまで抗議をがまんするよう求められるのは「ばかげている」と主張。

ロブ・キーラー事務局長は、「IOCは、声を上げると決心した選手全員を守ると表明していない。沈黙は共謀であり、だからこそ私たちは懸念している」と述べた。

英オリンピック委員会のアンディ・アンソン最高経営責任者は先週、選手たちが「分別をもつ」必要があるとBBCスポーツに話した。そして、個人の意見表明を止めることはないが、発言について相談してほしいと述べた。

北京冬季オリンピックは来月4日、パラリンピックは3月4日に開幕する。【1月20日 BBC】
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国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の選手へ向けた注意喚起については、以下のようにも。

****北京五輪で人権問題巡る発言自粛を、選手に専門家が警告****
人権団体の専門家らは18日、来月の北京冬季五輪に参加する選手に対し、身の安全のために中国国内にいる間は人権問題について語らないよう警告した。非営利の国際人権組織であるヒューマン・ライツ・ウォッチが主催したセミナーで語った。

人権団体はかねてから、中国政府によるウイグル族などイスラム系少数民族の扱いを問題視し、国際オリンピック委員会(IOC)が中国を五輪開催地に選定したことを批判してきた。米国は中国のウイグル族への弾圧をジェノサイド(民族大量虐殺)と見なして非難しているが、中国は人権侵害を否定している。

国際的なアスリートらによる団体「グローバル・アスリート」の代表であるロブ・ケーラー氏はセミナーで、「選手はほとんど守られないだろう。沈黙は共犯にもなるが、参加選手には何も語らないことを勧める。彼らには五輪で競技をし、帰国した際に発言してほしい」と語った。

オリンピック憲章第50条は、競技会場などでの政治的、宗教的、人種的な宣伝活動を禁じている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの研究員、Yaqiu Wang氏は「中国の犯罪法は極めて曖昧で、人々の自由な言論を取り締まるために使えてしまう。けんかを売ったり、トラブルを招いただけで起訴されることがある。平和的で批判的な意見と見なせるあらゆるものが犯罪とされている」と述べた。

クロスカントリースキーの元米国代表選手、ノア・ホフマン氏は、米国の五輪代表チームは安全のため人権関連の質問を受けないことになっていると指摘。本来、選手が極めて重要だと考える問題について発言を控えさせる必要はないべきだとした上で、「中国当局から起訴されるだけでなくIOCからも処分される恐れがあるため、北京五輪の参加選手は沈黙を守ってほしい」と語った。【1月19日 ロイター】
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“ディレクターのミンキー・ワーデン氏は、「歴史を通して、アスリートは強力に変化を推し進めてきた。しかし中国では、アスリートは監視され、発言と抗議の権利は奪い取られる」と説明。選手が自らの安全を考慮しなくてはならない状況は、現代のオリンピックでは前例がないと述べた。”【1月20日 BBC】とも。

アメリカ選手の人種差別への抗議など、選手の政治的意思表示がいろいろな問題を惹起した“前例”がない訳ではありませんが、中国政府によって厳しく「管理・統制」される北京オリンピックにあっては、格段に状況が厳しくなりますし、場合によっては選手の安全が保証できないことも・・・。
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