孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

東アフリカ・ウガンダの性的少数者迫害 そうした状況を認めない日本政府

2023-03-23 22:49:44 | ジェンダー

(ウガンダの国会議事堂で同性愛を批判する衣装を着てアピールする国会議員=首都カンパラで21日、ロイター【3月22日 毎日】)

【性的少数者の権利をより規制・制約する方向への動きも】
LGBTQなど性的少数者の権利、同性愛や同性婚の問題は近年日本でも意識されるようになっており、世の中の流れはそうした性的少数者の権利を擁護する方向にある・・・とのイメージがあります。

確かに欧米社会などではそうした流れにあるのでしょうが、一方で、そうした流れへのアンチ的な、性的少数者の権利をより規制・制約する方向への動きもあります。

ウクライナをめぐり欧米と対立し、プーチン体制のもとでロシア固有の価値観・文化を強調するロシアもそのひとつ。

****ロシア 同性愛の情報など規制する改正法成立 欧米の影響排除か****
ロシアで5日、同性愛に関する情報の拡散などを規制する改正法が成立し、プーチン大統領としては、欧米の影響力の排除や伝統的な価値観を一層強く打ち出すねらいがあるとみられます。
この改正法は5日、プーチン大統領の署名で成立しました。

法律は、ロシアが「非伝統的」と位置づける同性愛などについて関心を持たせるなどの目的で、出版やインターネットなどで情報を発信したり、公共の場で活動したりといった行為を「プロパガンダ」として規制するものです。

改正により規制範囲が拡大され、違反した場合の罰金も引き上げられました。

プーチン大統領は、ことし10月に行った演説の中で性的指向などをめぐり、「西側のエリートが、はやりの傾向を自国の国民や社会に根づかせるのはかまわないが、同調することを他人に要求する権利はない」と述べています。

プーチン大統領としては今回の法改正をとおして、欧米の影響力の排除や伝統的な価値観を一層強く打ち出すねらいがあるとみられます。

一方、独立系メディアは、ロシアで性的マイノリティーの人たちへの抑圧がさらに強まることが懸念されると伝えています。【2022年12月6日 NHK】
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【東アフリカ・ウガンダで死刑の可能性も含む「世界で最も過激な」反LGBTQ法案制定の動き】
アフリカでは54カ国中30カ国以上で同性愛が犯罪とされているとのことで、ケニアとコンゴにはさまれた位置にあるウガンダでも、同性愛者同士の性交渉は違法行為とされています。

そのウガンダでは更に規制が強化され、同性愛者だと自認しただけで「犯罪者」になり、性交渉をした場合には死刑になるおそれもある法案が国会で可決され、大統領署名を待つ段階にあります。

****ウガンダで反LGBTQ法案可決 禁錮刑も可 大統領判断が焦点****
アフリカ東部ウガンダの国会は21日、LGBTQなど性的少数者を取り締まり、禁錮刑を科すこともできる法案を賛成多数で可決した。ロイター通信などが報じた。

同国には同性間の性行為を禁止する法律があったが、今回は性行為の有無にかかわらず同性愛者そのものを取り締まる厳しい内容だ。

ウガンダでは伝統的な価値観が根強く、世論では性的少数者の権利擁護に批判的な意見が優勢とされる。ただ法案には国内外から批判の声が上がっており、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は「もし成立すればいくつもの基本的な権利の侵害につながる」と指摘していた。

法案の成立には大統領の署名が必要で、今後はムセベニ大統領の判断が焦点となる。【3月22日 毎日】
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国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」HRWによると、同性愛者が性交渉をくり返したり、同性の障害者と性交渉を持ったりした場合には、「加重罪」が適用され、死刑になることも。

また、「助長罪」は20年以下の禁錮刑で、当事者だけでなく、記者や人権団体関係者、支援者や宿泊施設の管理者も、長期の服役となるおそれがあります。

同性愛者だと自認するだけでも、10年以下の禁錮刑。

トゥルク国連人権高等弁務官は声明で「これは『価値観』の問題ではない。その人が何者か、誰を愛しているかを理由に、暴力や差別を助長することは間違っている」と非難し、ムセベニ大統領に対して署名しないよう呼びかけています。

【2014年にも同様な動き 大統領署名後に最高裁が無効判決 同性愛者リスト公開や女性同性愛者レイプも】
ウガンダのこの種の問題が国際的に注目されるのは今回が初めてではありません。2013~2014年にも反同性愛法案が国会で可決され、欧米からの批判に抗して大統領署名もなされましたが、最高裁で議会での採決に不備があったとして無効にする判断が下されたことがあります。

****ウガンダ議会、反同性愛法案を圧倒的多数で可決****
ウガンダ議会は20日、反同性愛法案を圧倒的多数で可決した。同性愛への関与を繰り返した者に終身刑を科す内容で、国際的に激しい抗議の声にさらされている。しかし同国の議員らは、「悪」に対する勝利だとして可決を歓迎している。
ウガンダ議会が可決した反同性愛法案は、人権団体や各国の指導者たちから強く批判されており、バラク・オバマ米大統領はこの法案を「おぞましい」と表現したほか、南アフリカのデズモンド・ツツ元大主教はアパルトヘイト(人種隔離政策)になぞらえている。
法案は今後、キリスト教福音派の敬虔(けいけん)な信者であるヨウェリ・カグタ・ムセベニ大統領の承認を経て発効する。法案を推進したウガンダのデービッド・バハティ議員は、最終的な法案からは死刑を定めた条項が削除された点を強調している。
バハティ議員はAFPに対し、「これはウガンダの勝利です。議会が『悪』に対抗する投票をしたことを嬉しく思います」と述べ、さらに、「ウガンダは神を恐れる国であり、われわれは全体論的な考え方で生命を重視しています。国外の世界の考えにかかわらず、議会はこうした価値観に基づいてこの法案を可決しました」と語った。
なお、ウガンダではこの前日、ポルノおよび性的に挑発的だと見なされるあらゆる服装を禁止する法案が可決されていた。この法案では、テレビで露出度の高い衣装を着た人のパフォーマンスを放送することが禁止されるほか、個人によるインターネットの閲覧も厳しく監視される。【2013年12月21日 AFP】
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2014年2月にはムセベニ大統領が署名して法案が成立
“ウガンダ大統領、反同性愛法案に署名 欧米の批判顧みず”【2014年02月25日 AFP】

福音主義キリスト教の敬虔な信者であるムセベニ大統領は、“同性愛の男性がなぜ「美しい女性らには目もくれず、男に引かれる」のかが理解できないとして、「これは本当に深刻な問題だ。(同性愛者には)何か非常におかしいところがあるのだ」と語った。また、「同性愛者は実際のところ、金銭を目当てに働く者たちだ。異性愛者なのに、金のために同性愛者を名乗っている。金のために売春をする者たちだ」と断じた。”【同上】

法案成立後、大衆紙に同性愛者とされる200人の氏名が一部顔写真付きで掲載されるという事態にも。

****タブロイド紙が「同性愛者リスト」掲載 ウガンダ****
世界的にも極めて厳しい反同性愛法が成立したばかりのウガンダで25日、大衆紙が同性愛者とされる国民200人のリストを掲載した。ヨウェリ・カグタ・ムセベニ大統領は同法案への署名に際し、同性愛は「金目当ての売春行為」だと述べていた。
タブロイド紙レッドペッパー(Red Pepper)には、「発覚!ウガンダの同性愛者トップ200」との見出しが躍り、同紙が同性愛者とみなす人々の写真に加え、それぞれが及んだとされる同性愛行為が生々しく記述されている。
同国では2011年にも、別の新聞が同性愛者らの写真と名前、住所、さらに、「こいつらをつるし上げろ」という文言を加えた記事を一面に掲載し、同性愛者の人権活動家デービッド・カト氏が撲殺される事件が発生している。(中略)

同法案の署名に先立ち、欧米諸国や主要な援助国からは強い批判が集まっており、中でも米国のバラク・オバマ大統領はウガンダと米国の2国間関係が損なわれる恐れもあると警告していた。
米国式の福音主義キリスト教の信者が増加傾向にあるウガンダでは、同性愛嫌悪の風潮が広がっている。同国在住の同性愛者らは、嫌がらせや暴力行為の脅迫を頻繁に受けている。

また、人権活動家らは、同性愛の女性に対する「(同性愛の)矯正目的」と称するレイプの事例も複数報告している。【2014年02月25日 AFP】
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その後、ウガンダの憲法裁判所は8月、反同性愛法について、議会での採決に不備があったとして無効にする判断を下しました。

ただ、“反同性愛法は無効となったが、植民地時代の法を土台とする刑法が施行されるウガンダでは今後も、理論的には、外国籍の人や観光客を含む誰もが「自然の摂理に反した性行為」をした場合、投獄される可能性がある。

また、ウガンダの国会議員らは、一度は無効とされたより厳格な反同性愛法を再度成立させる方向で動いている。ここ18か月で、ウガンダ在住の英国人2人が同性愛行為に関連した「犯罪行為」を理由に国外追放された。”【2014年10月08日 AFP】という状況でもありました。

この2014年当時の動きと今回の反LGBTQ法案可決の間で、同性愛関連法案についてどのような動きがあったのかは知りません。

ただ、ウガンダでは今回の反LGBTQ法案は別にしても、同性婚を禁じる憲法があり、「自然の理に反する人間同士」の性行為をした人に終身刑を科す刑法もある状況です。

【そのウガンダから同性愛迫害を理由に日本へ逃れてきた女性に日本政府は「女性が同性愛者であることを理由に処罰されるおそれはない」と強制退去を命じる】
日本から遠く離れた東アフリカの性的少数者の権利・同性愛を規制する政治状況についてグダグダと書いてきたのは、このウガンダの状況が決して日本とも無関係でないからです。

****“同性愛者で迫害” ウガンダ人女性の難民認定命じる 大阪地裁****
同性愛者であることを理由に迫害を受けたと訴えて、日本に逃れてきたウガンダ国籍の女性が、難民認定を求めた裁判で、大阪地方裁判所は国に難民と認めるよう命じる判決を言い渡しました。

ウガンダ国籍で、現在、関西在住の30代の女性は、同性愛者であることを理由に現地の警察に逮捕され、暴行によって大けがをするなど迫害を受けたと訴え、3年前、日本に逃れてきました。

日本に入国後、難民として認められず、強制退去を命じられたことから、国に対して難民認定を求める裁判を起こしていました。

これに対して国は、ウガンダで同性愛者が拘束されたり処罰されたりしているという情報は信用性に欠けるとして、女性が同性愛者であることを理由に処罰されるおそれはなく、難民とは認められないなどと主張していました。

15日の判決で、大阪地方裁判所の森鍵一裁判長は「ウガンダでは同性愛者を処罰するに等しい刑法がある以上、処罰や身体拘束をされうると推認せざるをえない」などと指摘しました。

そのうえで「女性が帰国すれば同性愛者であることを理由に迫害を受けるおそれがある」として、国に難民と認めるよう命じました。

原告の女性「日本に住むことを受け入れてくれてありがとう」
判決を受けて原告の女性は弁護士とともに会見を開き、「日本に住むことを受け入れてくれてありがとうございます」と述べました。

そのうえで「これまではつらい状況でしたが、これからはすべてがうまくいくと期待しています。また、同じ境遇の人たちにも希望を失わないでと伝えたいです」と話していました。

川崎真陽弁護士は「同性愛を理由とする難民認定を裁判所が命じた判決は、私たちが認識する限りでは初めてです。彼女のような立場の人にとって光となる判決です」と話していました。

出入国在留管理庁「判決内容を精査し適切に対応」
 判決を受けて出入国在留管理庁は「判決の内容を十分に精査し、適切に対応したい」とコメントしました。【3月15日 NHK】
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今回の大阪地裁判断は、傷痕の写真などから、警察によって同性愛者であることを理由に暴行を受け、適切な治療を受けられないまま拘束されていたと認定し「同性愛者であることを理由に拷問を受ける恐れはない」などとする国側の主張を退けています。

また、近年の難民認定に際しての同性愛者の権利擁護に関しては、イギリスの場合、2015~20年、同性愛を理由にした難民申請は全体の5%前後を占めています。

難民認定率は22~48%で、不認定の場合も上訴の結果、半分近くが認められているとのことです。

ウガンダにおいて同性愛者が極めて厳しく危険な状況に置かれていることは、上記のように素人でもググればすぐにわかるところですが、膨大な情報を有する日本政府が“ウガンダで同性愛者が拘束されたり処罰されたりしているという情報は信用性に欠けるとして、女性が同性愛者であることを理由に処罰されるおそれはなく、難民とは認められない”というのはどういうことか?

日本が難民認定に関して異様に厳しいのは今更の話ですが、そこまで事実を捻じ曲げてでも難民を認めたくないのか?

あるいは、日本政府としてウガンダの人権侵害状況を認めると、同国との関係に支障をきたすと考えたのか?

こうした問題が一部報じられても、それ以上の動きには至らない日本社会の無関心も日本政府と同根でしょう。

いずれにしても、やれ“おもてなし”とか“絆”とかいった耳触りのいい言葉が飛び交う日本社会も、一皮むけば人権軽視(特に、ソトの人間の人権に関して)ではウガンダと五十歩百歩のように思えて残念です。

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