孤帆の遠影碧空に尽き

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アメリカ  バイデン、ハリス両氏不人気で“ヒラリー待望論”も出る民主党の苦境

2022-01-18 22:57:04 | アメリカ
(【1月18日 日テレNEWS24】)

【支持率低下が止まらないバイデン大統領】
アメリカ・バイデン大統領は79歳という高齢ながら、2024年の大統領選挙での再選を目指すことを明言しています。いろいろ思惑はあると思いますが、そう言わないと“死に体”になってしまうということが大きいでしょう。

****79歳のバイデン氏、再選出馬を明言…トランプ氏との「再戦」に意欲****
米国のバイデン大統領は22日、ABCニュースのインタビューで、2024年の次期大統領選に再選出馬するかどうかを問われ、「出馬する」と明言した。ただし「私は運命を重んじる。運命は私の人生に何度も介入してきた。今のように健康状態が良ければ、再選を目指すだろう」とも付け加えた。
 
バイデン氏は、トランプ前大統領と再び対決する可能性についても質問を受け、「トランプ氏が相手となれば、私が出る見通しも高まるだろう」と応じ、「再戦」への意欲を強調した。
 
史上最高齢で米大統領に就任したバイデン氏は先月、79歳の誕生日を迎えた。高齢を理由に再出馬を疑問視する声もある。支持率も低下傾向にある中、求心力を保つために再出馬の意思を明確にした形だが、自ら健康問題に触れたこともあり、出馬を巡る臆測はやみそうにない。【12月23日 読売】
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そのバイデン大統領の支持率が低下しているのは昨年のアフガニスタン撤退あたりからの話ですが、加えて、オミクロン株による新型コロナの再拡大、原油価格高騰を受けたインフレの進行などもあって、最近その低迷ぶりが一段と目立つようになっています。

***危険水域に達したバイデン政権の支持率とヒラリー待望論のなぜ****
バイデン大統領の支持率低下が止まらない。
保守系調査会社ラスムッセンの調査を見ると、支持が40%を割り込む38%、不支持も60%、そして両者の差は22ポイントに達しており、次の選挙を考えた場合の危険水域とされるレベルに突入している。

支持と不支持が同数だったのは8月9日が最後。8月15日のアフガニスタン撤退の頃を境に悪化を続けており、止まる気配が感じられない。
 
なお、リアル・クリア・ポリティクスで全ての世論調査を見ても、悪化傾向に変わりはない。

(中略)足元の新型コロナの感染拡大や景気の先行きなどを考えると、「挽回は無理」との見方が民主党陣営内で拡がっている。中間選挙を戦うため、2024年の大統領候補をすげ替え、巻き返しに出ようとする動きも出始めている
 
そういった動きの一つが、噂の域を出なかったヒラリー・クリントン元副大統領(74歳)を担ぎ出そうとする動きの本格化だ。FOXニュースなど大手メディアが伝え始めた。

バイデン大統領の支持率が急降下している4つの理由
バイデン大統領の支持率低下の背景は、主として4つある。
 
第一に、タリバンが8月15日にアフガニスタンの首都カブールを制圧して以降の混乱だ。米軍の拙速な撤退に伴う混乱で、米国人の犠牲者も出た。この時、バイデン大統領は進歩派(プログレッシブと呼ばれる民主党左派)の軍事費削減支持を背景にして「間違いはない」と言い切っている。
 
第二に、米国の2021年度(2020年10月〜2021年9月)の違法移民が約173万人と例年の3倍に増加したこと。これは、バイデン政権が、進歩派が主張する人種差別の徹底的な排除と弱者救済の思想を受け入れた結果だ。(中略)

第三に、消費者物価が上がって国民の生活が厳しくなっていること。バイデン大統領は1月12日のブリーフィングで、「大手企業が価格を支配しているからだ」という従来の民主党進歩派の主張を繰り返した。「ソ連のお店のようだ」と揶揄されるスーパーの品不足もやり玉の対象だ。これを受け、2020年の大統領選にも出馬したブティジェッジ運輸長官は、港湾を回って荷卸しの状況をチェックし始めた。
 
第四に、これまでバイデン政権の担当者が「うまく対処してきた」と自慢していたコロナ対応だ。オミクロン株の影響で、昨年6月に1日当たり5000人を切っていた新規感染者は1月10日に140万人を超えた。死者数も1700人を数える。
 
感染者数自体は曜日などの要因で大きく増減しているが、過去の平均値も過去最多を更新している。しかも、昨年暮れからウォーレン上院議員やオカシオ・コルテス下院議員など、ワクチンを2回接種した民主党議員が相次いで感染していることもあって、米国民の間で「結局は失敗だった」との不満に繋がっている。(後略)【1月17日 小川 博司氏 JBpress】
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バイデン大統領は、トランプ前大統領の支持者らによる連邦議会襲撃から1年を迎えて議会で演説し、トランプ前大統領を厳しく批判し、反転攻勢の糸口をつかみたい構えですが、今のところ反転の兆しは見えていません。

****バイデン米大統領、トランプ氏を痛烈批判=議会襲撃1年「戦い継続」****
バイデン米大統領は6日、トランプ前大統領の支持者らによる連邦議会襲撃から1年を迎え、議会で演説した。事件を「武装蜂起」と断罪。トランプ氏が「(2020年大統領選の)敗北を受け入れず、うそをまき散らした」ことが引き金になったと指摘し、徹頭徹尾トランプ氏の責任を厳しく追及した。
 
バイデン氏は、トランプ氏の敗北こそ「真実だ」と明言。一部の国民が「大統領選は不正だった」とするトランプ氏の主張をいまだ信じていることを踏まえ、「前進する道は真実と向き合い、それに従って生きることだ」と語り掛けた。
 
また、「人々を襲撃に駆り立てたうそは衰えていない」と陰謀論の渦巻く現状に危機感を表明。「米国の魂を賭した戦いは続いている」と訴え、民主主義を守る姿勢を鮮明にした。「大統領の力は国を結束させることであり、分断することではない」とも述べた。
 
ハリス副大統領も議会で演説し、「正義のために団結しなければならない」と強調した。

一方、トランプ氏は6日、声明で「バイデン氏は私の名前を使って、さらに米国の分断を深めようとした」と反論した。予定していた記者会見は中止した。【1月7日 時事】
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【バイデン大統領の足を引っ張る民主党内の確執】
支持率低迷するバイデン大統領を支えるべき与党・民主党内では、かねてより大統領予備選で争ったサンダース上院議員などの進歩派とペロシ下院議長などの穏健派との対立が根深く、その間で揺れるバイデン大統領は双方からの不満に直面する形にもなっています。

また、1兆7500億ドル規模の気候変動・社会保障関連歳出法案や選挙改革法案といった反転攻勢の足がかりとなるべき重要法案で、民主党内有力議員をまとめきれず、法案の成立が見通せないという“指導力不足”を露呈しています。

****米民主有力議員、大型歳出法案に不支持表明 バイデン氏看板政策に痛手****
米民主党穏健派のジョー・マンチン上院議員は19日、1兆7500億ドル規模の気候変動・社会保障関連歳出法案「ビルド・バック・ベター(よりよき再建)」を支持しないと表明した。

マンチン氏は法案可決の鍵を握っており、バイデン大統領の看板政策にとって痛手となるとみられる。

マンチン氏は「フォックス・ニュース・サンデー」のインタビューで、インフレへの懸念に言及し「この法案を支持することはできない」と述べた。

その後、声明を発表し、民主党が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)や地政学的脅威への米国の対応能力を「大きく阻害する」債務負担の増加を推し進めていると非難した。

これを受けてホワイトハウスは、マンチン氏が妥協点を見つけ、法案を通過させるという約束を破ったと非難した。
ホワイトハウスのサキ報道官は、マンチン氏の発言は「突然の不可解な立場の転換だ」とし、バイデン政権は2022年に法案を前進させる方法を見つけるだろうと述べた。

同氏の発言は党内リベラル派からも怒りを買った。イルハン・オマル下院議員(ミネソタ州)はツイッターへの投稿で「はっきり言って、マンチン氏の言い訳はでたらめだ」と述べた。
法案の策定に関与したバーニー・サンダース上院議員は、いずれにしても採決を行うよう呼び掛けた。

この法案は富裕層・法人増税で、気候変動対策や医療費補助拡大、保育無償化など一連のプログラムの財源を賄う。
バイデン氏はインフレが進行し、パンデミックから経済が回復する中、こうしたコストを押し下げることが重要だと訴えている。【12月20日 ロイター】
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****米選挙改革法案、上院の可決不透明 民主2名が議会規則変更に反対****
 バイデン米大統領は13日、選挙改革法案の推進を民主党上院議員に訴えた。ただ、民主党の議員2名が可決に向けた議会運営の規則変更に反対する意向を示し、法案が成立するかどうか不透明となっている。

下院はこの日、選挙改革法案を可決した。バイデン氏は、上院民主党の会合に出席し、法案の推進を訴えた。ただ、これに先立ち民主党のシネマ議員は上院議場で演説し、少数派が法案を阻止できる「議事進行の妨害(フィリバスター)」は、米国内の政治的分断を悪化させないために必要だと主張して、フィリバスターの規則変更に反対する意向を示した。

上院は少数派によるフィリバスターを認めており、妨害を終わらせて法案を採決するには上院100議席の単純過半数でなく60票の賛成が必要になる。民主党は50議席にとどまり、共和党全員が反対する中で法案の採決に持ち込めない。そのため、投票権保護に関わる法案についてフィリバスターのルールを変更し、民主党単独での可決を目指している。

シネマ議員はルール変更について、「米国の分断という問題を悪化させる行動を支持できない」と主張して反対を表明。マンチン議員も反対する姿勢を示した。

バイデン氏は上院民主党議員との会合後、「法案成立を望んでいるが、やり遂げられるかどうかは分からない」と記者団に語った。

ホワイトハウスによると、バイデン氏はこの日、シネマ、マンチン両議院と会談し、法案の推進を引き続き訴えた。ホワイトハウス当局者によると協議は1時間以上に及び、率直な意見が交わされたという。(後略)【1月14日 ロイター】
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【バイデン氏以上に不人気なハリス副大統領】
こうした状況で、冒頭記事における“中間選挙を戦うため、2024年の大統領候補をすげ替え、巻き返しに出ようとする動きも出始めている”という話にもなりますが、本来ならバイデン大統領に代わる候補としてはハリス副大統領ということになりますが(就任当時は、そうした期待もありました)、彼女の人気はバイデン大統領以上に悪いという状況で“アメリカ史上最も不人気な副大統領”とも。

****ハリス氏、しぼむ存在感 支持率低迷28%、側近相次ぎ退任****
米バイデン政権発足から1年近くが経つ中で、初の女性で非白人の副大統領として注目されたハリス副大統領が存在感を示せずにいる。ポストバイデンの呼び声も高かったハリス氏の低迷は、1年後の中間選挙、さらには2024年の大統領選挙の民主党の戦略にも影響しそうだ。

政権発足当初、50%台後半の支持を得ていたバイデン大統領だが、今年夏のアフガニスタンでの米軍撤退の際の混乱や最近の米国内のインフレなどが要因となり、USAトゥデーなどが11月に実施した世論調査では38%に落ち込む。ハリス氏の支持率はさらに低い28%となっている。
 
ハリス氏は政権内で移民問題や投票する権利を担当している。だが、移民問題ではメキシコ国境をすぐに訪問しなかったことを共和党から批判されただけでなく、グアテマラを訪問した際に「米国に来ないで」と発言したことが民主党内でも批判された。
 
ホワイトハウスは12月初旬、ハリス副大統領の上級顧問兼首席報道官を務めるシモーヌ・サンダース氏が年内で退任することを明らかにした。ホワイトハウスは11月、ハリス氏の広報部長が退任することも明らかにしており、就任1年足らずで側近が相次いで去る事態になっている。
 
複数の米メディアは、ホワイトハウス内でバイデン氏のチームとハリス氏のチームに確執が生じていると報じている。CNNは、バイデン氏のチームがハリス氏と側近の仕事ぶりを評価せず「お手上げの状態だ」と報道。

かたやハリス氏のチームも「副大統領が(重要な意思決定から)外されている」と不満を募らせ、ハリス氏本人も、自分の活動が制約されていると周辺に漏らしていると報じた。
 
ハリス氏への逆風が強まるなか、ホワイトハウスのサキ報道官はツイッターへの投稿で「副大統領は大統領の不可欠なパートナーだけでなく、勇敢なリーダーだ」と擁護した。しかし、上院議員1期目の途中で副大統領に転じたハリス氏の経験不足を指摘する声が増えているのが現状だ。
 
ハリス氏は初の女性副大統領であるだけでなく、初の黒人、アジア系の副大統領として注目された。米議会では上院、下院ともに与党の民主党と野党の共和党の議席数が拮抗(きっこう)し、来年11月に予定される中間選挙で新たな勢力図が決まる。ハリス氏の低迷はバイデン政権を支える民主党の支持をさらに押し下げる要因になりかねない。
 
バイデン政権の発足当初は高齢のバイデン氏が1期で退任すれば、24年の大統領選挙でハリス氏が最有力の民主党候補になるという見方があった。バイデン氏はすでに2期目をめざす意向を示しており、仮に1期で退任した場合も、候補者選びは混戦となりそうだ。【12月22日 朝日】
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ハリス副大統領に任された移民政策は、おそらく誰がやっても難しい問題、あるいは、初の女性、初の黒人、アジア系副大統領ということで、やはり厳しい視線が向けられている・・・といった面もありますが、パワハラ的な性格がスタッフとうまくいかないという彼女自身の性格が現在の低迷を呼んでいるとの指摘もあります。【1月18日号 Newsweek「ハリス副大統領、支持率急落の真相」】

【“ヒラリー氏待望論”が示す民主党の苦境】
そのような状況で、やや“苦し紛れ”的に出てきた感もあるのが“ヒラリー氏待望論”・・・ただ、「何を今更」と評判は良くないようです。

****突然取りざたされたヒラリー氏の名前が意味するのは…****
「ヒラリー・クリントンの2024年大統領選挙へのカムバック」有力紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」のオピニオン欄に、今月11日、こんな記事が掲載された。

元ニューヨーク市議会議長らが書いたこの記事では、バイデン政権と与党・民主党が、11月の中間選挙で負けて議会の主導権を失った場合、ヒラリー氏が「党のイメージを変える新たな顔」として、再び大統領候補に浮上すると指摘。

経験豊富で知名度が高い上、バイデン大統領より若く、現在の政権とは違う政策アプローチを示すことができるとして、「かつてはあり得なかったシナリオが、もっともらしくなってきている」としている。

もちろん、この論説を額面通りには受け止められない。そもそも、79歳の「バイデン氏より若い」と言っても、ヒラリー氏は現在74歳。記事の掲載以降、アメリカメディアはこぞってこの「仮説」に反論している。

「確かにクリントンは政治家として、間違いなく最も印象的な経歴を持つひとりだ。問題は、2016年の大統領選でも、2008年の大統領選の時でさえ、そうだったということだ。そして彼女は両方の選挙に負けた。当時と今の間で何が変わったのか?クリントンが『代わりの候補(change candidate)』になれるとは全く思えない」(CNN)

「この記事は、公開以降、批判と嘲笑を引き起こした」(news week)

ヒラリー氏自身、2017年に「現役の政治家としての活動は終わった」と発言している。ヒラリー氏の名前は、メディア各社の世論調査にもほとんど登場していない。唯一、マサチューセッツ大学とyougovが去年12月に行った「24年大統領選候補」調査で名前が挙がったが、支持する人はわずか6%で、民主党内の7番目となっている。

今回、ヒラリー氏の名前が取りざたされたのは、低支持率にあえぐバイデン政権の苦境、さらにはバイデン氏に代わる次期大統領候補が乏しい、民主党の現状の裏返しにほかならない。【1月18日 日テレNEWS24】
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“彼女であれば進歩派と中道派をまとめられるという見方も根強い。それは夫の元大統領が進歩派に信頼されているうえ、彼女自身が国務長官時代にパレスチナなどへの支援に注力していたという背景もあるようだ。”【1月17日 小川 博司氏 JBpress】との指摘もありますが・・・・。

まあ、「ヒラリーvs.トランプ」因縁の対決・・・という構図で盛り上げるというのは、民主党側が勝機を望めるか少ない道の一つかもしれませんが、いかにも“昔の名前”感が強すぎます。

なお、民主党内で待望論の強いミシェル・オバマ夫人は出馬を引き続き拒否しているとのこと。

また、“ハリス氏の評価が下がるにつれ、ブティジェッジ運輸長官の名前も取りざたされるようになったが、「2020年の大統領選挙で課題となった、黒人有権者の支持の低さに対処できていない」(ポリティコ)と指摘され、ハリス氏にも及んでいないという評価だ。”【1月18日 日テレNEWS24】

一方の共和党側も、トランプ前大統領をどのように位置づけて中間選挙を戦うのか・・・などの問題がありますが、また長くなったきたので、そのあたりは別機会に。
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