孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ベラルーシ・ルカシェンコ大統領に再び重病説 ウクライナ情勢への影響

2023-05-29 22:25:16 | 欧州情勢

(【5月28日 日テレNEWS】にこやかな表情のベラルーシ・ルカシェンコ大統領(左)とプーチン大統領ですが、実際のところはルカシェンコ氏はプーチン氏にとっては“目障りな存在”)

【ルカシェンコ大統領 「ロシア核兵器の配備がすでに始まった」】
ウクライナ情勢がロシア・プーチン大統領の思惑と異なる展開となっており、今後、ウクライナ側の大規模な反転攻勢も予想されているなか、追い詰められたプーチン大統領が核兵器使用に至るのではないか・・・という懸念があります。

そうした情勢で、ロシアと隣国ベラルーシは、ロシアの戦術核兵器をベラルーシに配備する協定に調印し、ルカシェンコ大統領は配備がすでに始まったと語っています。

ベラルーシ国防省は、ロシアの核弾頭搭載可能な超長距離地対空ミサイルシステム「S-400」が到着した映像も公開しています。

****ロシアの戦術核兵器 ベラルーシに配備する協定に調印****
ロシアと隣国ベラルーシは、ロシアの戦術核兵器をベラルーシに配備する協定に調印しました。ルカシェンコ大統領は配備がすでに始まったとしています。

協定では、核弾頭を搭載できる「S-400」と「イスカンデルM」ミサイルシステムを、ベラルーシに配備するとしています。さらに、攻撃機「スホイ25」を、核兵器搭載型に改造し、ロシアによるパイロットの訓練を認めることも盛り込まれています。

調印式に出席したロシアのショイグ国防相は、「NATOの動きが、両国に行動を強いている」と説明していて、ウクライナへの武器支援を続ける西側への対抗措置とみられます。

ベラルーシへの戦術核兵器の配備をめぐっては、3月にプーチン大統領が表明し、ルカシェンコ大統領が追認しました。

ルカシェンコ大統領は25日、ロシアからの核弾頭の移動がすでに始まったと述べています。【5月26日 日テレNEWS】
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****ベラルーシに露の核弾頭搭載可能ミサイルシステム「S-400」到着****
ベラルーシ国防省は28日、ロシアの核弾頭搭載可能な超長距離地対空ミサイルシステム「S-400」が到着したと発表し、映像を公開しました。

ベラルーシ国防省はSNSに貨物列車で運びこまれる、核弾頭が搭載可能なロシアの超長距離地対空ミサイルシステム「S-400」の映像を公開しました。ベラルーシ空軍のルキアノビッチ司令官は、「S-400はわが国の安全のために重要だ」とのコメントを発表しました。(後略)【5月29日 日テレNEWS】
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こうした動きをアメリカは批判していますが、ロシアは「米国は何十年もの間、欧州に大規模な核兵器庫を維持してきた」と、アメリカに批判する資格はないと一蹴しています。

ウクライナをめぐる危険な状況が強まるという現実的不安はあるものの、確かに、理屈の上ではロシアの言うとおりかも。

アメリカには、自国の核は正しく、イラン・北朝鮮などの核は悪であるという、理屈の上ではいささか理解に苦しむ対応を当たり前のこととして行う独善的傾向があります。

****ベラルーシへの戦術核配備、米は批判する資格ないとロシア一蹴****
戦術核兵器をベラルーシに配備するロシアの計画をバイデン米大統領が批判したことについて、ロシアは27日、米国は長年にわたって欧州にそうした核兵器を展開してきたと指摘し、バイデン氏の批判を退けた。

ロシアとベラルーシは25日、ロシアの戦術核ミサイルをベラルーシ領内に配備することを正式決定する協定に調印した。

バイデン氏は26日、ロシアがベラルーシに戦術核兵器を配備する計画を進めていることを「極めて否定的」にとらえていると述べた。米国務省もロシアの核配備計画を非難している。

米国の反応に対して在米ロシア大使館は「米国がわれわれに仕掛けた大規模なハイブリッド戦争の中、必要と考える手段で安全を確保することはロシアとベラルーシの主権的な権利」と強調。「われわれが取った措置は、国際的な法的義務に完全に合致するするものだ」とした。

さらに「米国は何十年もの間、欧州に大規模な核兵器庫を維持してきた。他国を非難する前に、米国は内省する必要があるのではないか」とし、ロシアの配備計画に対する米国の批判を偽善的だと一蹴した。【5月29日 ロイター】
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【ロシアとベラルーシの「連合国家」】
ロシアとベラルーシは「連合国家」を形成しています。
しかし、ロシアに呑み込まれることを嫌うルカシェンコ大統領は、これまでこの「連合国家」が実体化するのを巧妙に避けてきました。

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経済的、民族的に結びつきの強いロシアとベラルーシは1999年に「連合国家」の創設条約に調印し、それぞれの国家主権を維持しながら両国間の関係を緊密にするため、最高国家評議会を開催してきた。

ロシアの完全な影響下に置かれることを懸念するルカシェンコ氏は政治、経済統合の具体化を巧妙に避けてきたが、2020年の大統領選での不正疑惑による抗議運動やウクライナ侵攻でのロシア支援に対する欧米諸国からの経済制裁などを受け、ロシアに再び接近せざるを得ない状況になっている。【4月7日 日経】
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ここにきて、ルカシェンコ大統領は旧ソ連カザフスタンに対して「連合国家」参加を呼びかけています。「そうすれば核兵器が用意される」とも。(後述するルカシェンコ大統領の体調悪化との前後関係ははっきりしませんが、おそらく体調悪化以前に収録されたものだと思いますが・・・)

カザフスタンは「冗談だろう」とまともにとりあっていませんが、この時期のルカシェンコ大統領の発言の真意は・・・わかりません。

****カザフに連合国家加盟を促す ルカシェンコ氏、核配備で****
ロシア戦術核の配備を正式に受け入れたベラルーシのルカシェンコ大統領はロシア国営テレビが28日夜に放映した番組で、旧ソ連カザフスタンに対し、将来ロシアとベラルーシの連合国家に入るべきだと促した。

タス通信によると、カザフのトカエフ大統領は29日、ルカシェンコ氏の発言について「冗談だと思う」と述べ、「カザフに核兵器は必要ない」と明言した。

ルカシェンコ氏は、政府間合意文書が署名され、ベラルーシ国内への戦術核配備の手続きが始まったことを念頭に「生き残りたいなら連合国家に入るべきだ。そうすれば核兵器がある」と述べ、トカエフ氏の名前を挙げて検討を求め、旧ソ連諸国にも加盟を呼びかけた。【5月29日 共同】
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【プーチン大統領にとっては意のままにできない“目障りな存在”】
これまでのルカシェンコ大統領の言動からして、ルカシェンコ大統領が本気でロシアとの「連合国家」の実体化に乗り出すつもりだとも思えません。

ロシア・プーチン大統領からすれば、のらりくらりと「連合国家」の話を避けてきた張本人がルカシェンコ大統領であり、また、ウクライナに関してもロシア寄りの“リップサービス”はして“協力”を装いながらも、実質的にロシアとともに参戦することを拒んできたのもルカシェンコ大統領です。

ルカシェンコ大統領としては、“プーチンの泥船”に乗せられるのは御免被るといったところでしょう。

その意味で、プーチン大統領にとってルカシェンコ大統領は、自分の思いどおりにならない非常に“目障りな存在”です。

ベラルーシ国内で反政府運動が燃え上がった契機となった先の大統領選挙でも、プーチン大統領としてはルカシェンコ氏の対立候補を推して、ルカシェンコ大統領の“首のすげ替え”を図る動きもありました。

【プーチン大統領との会談直後に救急搬送? ウクライナ情勢への影響】
そのルカシェンコ大統領については健康不安が以前からありましたが、また、プーチン大統領との会談直後に病院に救急搬送される事態になったとか。

****ベラルーシ大統領に再び重病説 ウクライナ情勢に影響の可能性も****
旧ソ連ベラルーシのルカシェンコ大統領(68)を巡り、27日に再び重病説が流れるなど、健康を不安視する見方が消えていない。

ルカシェンコ氏はロシアがウクライナで続ける「特別軍事作戦」に協力してきたことから、国政に携われないような体調の場合、ウクライナ情勢に影響する可能性も出てきそうだ。

ベラルーシの元外交官が27日、ツイッターに、ロシアでプーチン大統領と会談したルカシェンコ氏の体調が悪化し、モスクワの病院に搬送されたと投稿した。

一方、ベラルーシ国営のベルタ通信は28日、ルカシェンコ氏がトルコ大統領選でのエルドアン氏の再選を歓迎する声明を出したなどと報道したが、体調には触れなかった。

ルカシェンコ氏の健康状態が疑われ始めたのは、今月9日にモスクワで開かれた第二次大戦の勝利を記念する式典の時だった。具合が悪そうな様子を見せ、一部の行事を欠席。帰国後も一定期間、公の場に姿を現さず、病院で治療を受けているとの情報も流れた。

それでも今月半ばに国内の空軍施設を視察する姿が公開され、下旬には再度モスクワを訪れたこともあり、健在ぶりが確認されたと見られていた。だが再び重病説が浮上し、新たな情報が待たれている。

ルカシェンコ氏は1994年に大統領に初当選して以来、30年近くにわたり、ベラルーシで独裁を敷いてきた。2020年の大統領選の際には不正疑惑が持ち上がったが、ロシアに支援を仰いで反対運動を弾圧した。

ロシアが22年2月にウクライナへの攻撃を始めると、ルカシェンコ氏はロシア軍がベラルーシ領からウクライナ北部に攻め込むことを認めた。一方で、ロシアからの圧力にもかかわらず、攻撃への参加は避けている。【5月29日 毎日】
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「救急搬送」の信ぴょう性も定かではありません。

ルカシェンコ大統領の立ち位置は、“ロシアがウクライナで続ける「特別軍事作戦」に協力してきた”と言うよりは、前述のように、“ロシア寄りの“リップサービス”はして“協力”を装いながらも、実質的にロシアとともに参戦することを拒んできた”と言うべきで、上記記事最後にもあるように“ロシアからの圧力にもかかわらず、攻撃への参加は避けている”というところが重要なポイントでしょう。

そうしたプーチン大統領にとって“目障りな存在”であることから、ロシアによる「毒殺説」もあるぐらいです。

****ロシアによる「毒殺説」浮上 ベラルーシの大統領・ルカシェンコ氏危篤か プーチン氏と〝密談〟後…モスクワで救急搬送****
(中略)
ベラルーシは、昨年2月に始まったウクライナ侵略で、ロシア軍の進撃拠点の一つとなったものの、ルカシェンコ氏は「挑発」を受けない限り参戦しないと主張した。ロシアとの関係についても「ベラルーシの主権は維持する」としており、プーチン氏にとってルカシェンコ氏は決して、都合のいいリーダーではなかった。

英紙デイリー・メール(電子版)は28日、「より従順な指導者を求めているロシアの特務機関によって毒殺されたとの憶測がある」と伝えた。【5月29日 夕刊フジ】
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ただ、いくら“目障り”でも、会談直後に救急搬送されるといった、世界に「私が殺しました」と宣言するような形で「毒殺」はしないでしょう。 世界に冠たるロシア特務機関にすれば、やるなら他にいくらでも方法はあるでしょうから。・・・と考えるのが常識的。

いずれにしても、「欧州最後の独裁者」と評されるルカシェンコ大統領が反政府運動を弾圧する強権支配者であることは間違いないですが、いわゆる「煮ても焼いても食えない」人物で、プーチン大統領も苛立っていたのも間違いないところ。

そして、プーチン大統領相手に独自路線を維持できる数少ない指導者でもありました。
「毒殺」はともかく、持病悪化で代わりの者がベラルーシを率いるとなった場合、これまでのように“のらりくらり”とプーチン大統領の要請・圧力をかわすことは困難かも。

ロシアの意向に沿って本格的にベラルーシがロシアに協調して参戦するという可能性も・・・そういう意味で、非常に気がかりなルカシェンコ大統領の体調です。

【追伸】
ルカシェンコ大統領は健在との情報が。

****ベラルーシ大統領、健在確認 ロシア要人と首都で会談****
ベラルーシのルカシェンコ大統領は29日、首都ミンスクでロシア中央銀行のナビウリナ総裁と会談し、通貨問題を協議した。国営ベルタ通信が伝えた。

ベラルーシ大統領府に近いメディアも同日、ナビウリナ氏と笑顔で会談するルカシェンコ氏の動画を通信アプリに投稿。健在が確認された。

ベラルーシ反政権派は今月27日、ルカシェンコ氏がロシアのプーチン大統領との会談後にモスクワの病院に救急搬送されたと投稿し、健康悪化の可能性を指摘していた。【2023/05/29 22:17 共同】
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