孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア  収まらない感染拡大 進まないワクチン接種 国民の不信感 強硬措置に及び腰の政権

2021-10-17 22:34:21 | ロシア
(ロシアのコロナ新規感染者・死者の推移 【ロイター COVID-19 TRACKER】)

【進まないワクチン接種 根深い不信感】
ワクチンの接種拡大もあって、新型コロナ感染が一定の落ち着きを見せ、関心がワクチン接種証明書などを活用した「ウィズ・コロナ」の社会のあり方に移っているなかで、ロシアは依然として感染拡大を止めることができずにいます。

****ロシア、1日の死者が初めて1000人超える 不信感からワクチン接種進まず****
ロシアで16日、新型コロナウイルスによる1日あたりの死者数が、パンデミック開始以来初めて1000人を超えた。ロシア政府が発表した。新規感染者は約3万3000人だった。

ロシアの死者数はこの1週間、増加し続けた。ロシア大統領府は、国民が新型ウイルスワクチンを接種していないことを非難している。

ロシアではワクチンへの不信感が広がり、国民の約3割しか接種を受けていない。直近の世論調査では、接種を全く望まない人の割合が50%を超える可能性が示された。

ロシアの新型ウイルス感染症COVID-19による累計死者数は21万8362人と(米ジョンズ・ホプキンス大学の集計、日本時間17日午前時点)、欧州最多となっている。

また、現感染者数は約75万人で、2020年2月の統計開始以来最多となっている。累計感染者数は800万人に迫る勢いだ。

厳しい規制を導入せず
ロシア政府は経済活動を維持する必要があるとして、新型ウイルス対策の厳しい規制の導入を避けている。代わりに、ワクチン接種に対する国民の関心の低さに焦点を当てている。

ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は今週、「感染が拡大している状況下では、国民にワクチン接種の必要性を説明し続ける必要がある」と述べた。「接種を受けないのは実に無責任だ。(感染で)死んでしまうのに」

ロシア政府は、国内の医療機関はひっ迫しておらず、新型ウイルス患者の増加に対応できると主張している。
しかし、ミハイル・ムラシュコ保健相は、新型ウイルスを恐れて診療所を離れた医師たちに、ワクチンを接種して職場復帰するよう求めた。【10月17日 BBC】
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ロシアは昨年8月、世界で最初に新型コロナウイルスのワクチン「スプートニクV」を承認していますが、14日時点で2回の接種を終えた人は31・3%にすぎません。

国際的にはロシア製ワクチン「スプートニクV」の効果は高いとの評価もありますが、ロシア国民の「不信感」は相当に根深いようです。

****ロシアの感染、過去最悪 政治不信招き「国産ワクチン打ちたくない」****

(フードコートに設けられたワクチン接種会場で来場者を待つ医師=2021年10月14日、モスクワ)

(中略)人気レストランが数多く入居するモスクワ最大級のフードコートに併設された接種会場を14日に訪ねると、来場者の姿はほとんどなかった。職員は「1日に約500人を受け入れられるが、昨日は80人しか来なかった」と話した。
 
街中を歩くと、マスクを着けている人はまれで、地下鉄車内でも未着用が目立つ。まるでコロナ危機が終息したような雰囲気だ。
 
しかし、ロシア政府によると、16日は1日あたりの感染者数が3万3208人、死者数は1002人と、いずれも過去最悪になった。感染者数は昨年12月の約3万人をピークに一時は1万人以下に減ったが、感染力の強いデルタ株が広がり今年6月から急増している。
 
背景にあるのが、ワクチン接種率の低さだ。国内の関連データを集めているサイト「GOGOV」によると、14日時点で2回の接種を終えた人は31・3%。政府が目標とする接種率70%に届くまで1年以上かかるペースだという。
 
昨年、病床確保などに取り組んだ成果か、医療崩壊は伝えられていない。ただ、あまりに社会の緊張感が薄く、政府は危機感を強めている。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は14日、ロシアメディアにこう訴えた。「死亡率や感染率の拡大など最悪の事実も隠さず伝え、国民にワクチン接種を説かなければならない」

弱腰の対策 支持率の低下恐れ
ロシアは昨年8月、世界で最初に新型コロナウイルスのワクチン「スプートニクV」を承認。政権は世界初の「偉業」を誇り、12月に国民への接種を始めた。
 
だが、最終段階の大規模な臨床試験は省略。さらに3種類の国産ワクチンを承認したが、スピード優先の姿勢は効果や安全性に対する国民の不信を招いた。
 
しかも、ロシアで接種できるのは国産だけ。

英医学誌ランセットは今年2月、スプートニクVの感染予防効果が91・6%に上るとする論文を掲載したが、独立系世論調査機関「レバダセンター」の9月の調査によると、「国産ワクチンを打ちたくない」と答えた人は52%だった。ボルコフ所長は「ワクチンは開発より接種の方が難しいことが明らかになった」と指摘する。(後略)。【10月17日 朝日】
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ワクチンへの不信感もさることながら、1日の死者が1000人を超える状況でも“地下鉄車内でも(マスク)未着用が目立つ”という緊張感のなさは、感染者数などの動向に過敏ともとれるような日本とはまったく異なります。
国民性でしょうか。

【国民不満を警戒して強硬な措置に及び腰な政権側】
不思議なのは、こういう深刻な状況にあって、ロシア政府がロックダウンとかワクチン接種義務化といった強硬な措置をとっていないことです。

****新型コロナの死者数と症例数が過去最多に、ロックダウンは否定 ロシア****
(中略)それでも議会は全土のロックダウンには踏み切らない姿勢を変えていない。国営タス通信によると、ロシア連邦院(上院)のワレンチナ・マトビエンコ議長は「簡単な状況ではない。だが連邦ロックダウンを導入する根拠はない」と述べ、ロックダウンは理にかなわないとの見解を示した。(後略)【10月17日 CNN】
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個人の自由を重視する欧州各国は、ロックダウンを実施し、「ウィズ・コロナ」にあってはイタリアのように全労働者にワクチン接種を義務化する国もあります。

****イタリア、「ワクチン証明書」提示を全職場で義務化…各地で抗議デモも****
イタリアで15日、新型コロナウイルスのワクチン接種完了を示す「ワクチン証明書」などの提示を全職場で義務化する措置が始まった。違反者には最大1500ユーロ(約19万8000円)の罰金、出勤停止、給与差し止めなどが科される。
 
9月中旬に義務化が発表されて以降、駆け込みで接種する人が増え、イタリア全体の接種完了者は7割を超えた。
 
ただ、健康上の懸念などから接種を拒む人もいることから、各地で抗議デモが起きるなど、義務化には反発も広がっている。
 
伊ANSA通信によると、同国有数の港町北部トリエステでは、5000人以上の港湾労働者らが集まり、港の一部を封鎖した。北部トリノ近郊のフィアット製造工場付近などでも従業員らによるデモが起きた。
 
イタリアでは長距離列車、飛行機、船などの公共交通機関の利用や、美術館などの文化施設、ジムなどの運動施設の利用にも接種証明の提示が義務づけられている。【10月16日 読売】
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失礼ながら、イタリアなど欧州各国に比べ、ロシアで個人の自由がより重視されているとは思えませんが、ロシアはなぜ欧州各国のような強硬な措置をとらないのか?

もっとも、ロシアはこれまで、そうした措置をとってこなかった訳ではなく、とろうとしたけど国民の不満を恐れて撤回したというのが実際のところのようです。

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政府や自治体の感染対策も迷走する。モスクワで6月、飲食店の入店に接種証明の提示義務が導入されたが、経済界が激しく反発し約3週間で撤廃された。
 
モスクワの企業は従業員の60%以上が接種しないと罰則を受けることになったが、「事実上の強制接種だ」との批判を受け、市長が「実態調査はしない」と表明した。
 
対策が弱腰なのは、全国各地で昨年、罰金がある厳しい外出規制を導入した後、プーチン大統領の支持率が過去最低の59%に低下したことがあるとみられる。
 
政権は感染予防を理由に反政権デモを禁じる一方、戦勝記念日の軍事パレードや五輪選手の凱旋(がいせん)イベントなどの国威発揚行事を実施するなど姿勢が一貫していない。

地方では知事の判断で再び規制も強まりつつあるが全国統一の方針を打ち出せておらず、政権として国民に厳しい規制を強いるのは難しい状況だ。【前出 10月17日 朝日】
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【イメージよりは脆弱なプーチン体制?】
ロシアに関してはプーチン大統領の強固な支配体制・・・というイメージがありますが、国民不満の高まりを恐れ、支持率のつなぎ止めに汲々としている・・・そんな実態も浮かび上がってきます。

プーチン体制はイメージほど強固なものではないようにも見えます。

9月19日に行われた下院選ではプーチン政権与党の「統一ロシア」が、定数450の3分の2を超える324議席を獲得して圧勝しましたが、拘束されている反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏を支持する反政府勢力を事実上選挙戦から締め出すなどの、“あの手この手”を使って達成した数字でもあります。

その“数字”に関しても、野党・共産党は不正があったとして抗議しています。

****ロシア下院選、電子投票に不正疑惑 公表に14時間、形勢逆転も****
ロシアで9月中旬実施された下院選を巡り、一部地域で導入された電子投票で不正疑惑が浮上している。苦戦を伝えられた政権与党が目標議席に達したが、電子投票が実施された一部の選挙区では不可解な票の動きが判明しており、野党や支持者は抗議の声をあげている。
 
「我々の勝利は電子投票のおかげで盗まれた」
投票締め切りから6日後の9月25日、モスクワ中心部で野党・共産党が開催した抗議集会。小選挙区で落選した議員らが電子投票による不正を訴えると、1000人を超えるとみられる支持者らが「我々は選挙結果を認めない」とシュプレヒコールを上げた。
 
集会に参加した会社員のアレクセイさん(48)は「電子投票は完全ないかさまだ。透明性がなく、開票は監視されていないし、当局に票が操作されていてもおかしくない」と憤りを語った。
 
ロシアでは2019年の統一地方選から、インターネットを通した電子投票が試験的に導入され、今回の下院選では七つの地方で実施された。希望者が国や市のポータルサイトやアプリで事前に登録すれば、投票期間中にどこからでもパソコンやスマートフォンを使って投票できる。今回はプーチン大統領も電子投票を行うなど、政権側がシステムの安全性や便利さを強調して、利用を呼びかけてきた。
 
だが、ロシアメディアによると、モスクワ以外の地方では投票終了後、1時間程度で電子投票の結果が明らかになったのに対し、モスクワでは公表まで約14時間かかった。

開票終盤に投票所での集計結果に電子投票の結果が加えられると、それまで共産党などの野党候補がリードしていた八つの小選挙区で形勢が逆転し、モスクワ市内の15選挙区全てで政権が推す候補が勝利する結果になった。
 
選挙前は過去最低の支持率に苦しんだ与党・統一ロシアだが、324議席を獲得。前回よりも19議席減らしたが、目標とした300議席をクリアした。
 
選管当局は開票の遅れについて、モスクワで電子投票の利用者が約200万人に上ったことや、モスクワだけ投票先を後で変更できる機能を導入したことにより、「暗号化された票の解読作業に時間がかかった」と説明。不正の可能性を否定している。

プーチン氏も25日、不正の指摘が出ていることについて「誰かが選挙結果を気に入っていないからだ」と述べ、「技術の進歩は止められない」と今後も電子投票を推進する考えを示した。
 
だが、開票時に監視員が電子投票用のサーバーに接続できなくなり、解読作業の監視が十分にできなかった問題が報じられたほか、電子投票のデータを解析した専門家が一部の票が解読されていない可能性を指摘するなど、データの不自然さを訴える声も相次ぐ。
 
電子投票の不正を訴える抗議の動きに対しては、治安当局が無許可の抗議活動を呼びかけたとして共産党の活動家らを相次いで拘束するなど圧力をかけている。
 
モスクワの小選挙区で敗北した共産党のパルフョノフ下院議員は毎日新聞の取材に「選挙結果が奪われたのは明らかだ。清廉な選挙のために闘う」と電子投票に反対し続ける考えを強調。選挙結果の無効を求める訴訟の動きも出ており、電子投票に反対する動きが続く見通しだ。【9月30日 毎日】
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真相はわかりませんが、上記記事を読む限り、不正の臭いも・・・という感が。

ただ、政権側は共産党がこれまでの「体制内野党」から変質しないように気を使い、共産党側は見返りポストを要求する・・・といった水面下の現実政治の交渉があるようです。

****露下院選不正疑惑、共産党が抗議集会強行…事態収拾の見返りに要職ポスト求める?****
ロシアの最大野党・共産党は、19日に実施された下院選で不正があったとして、モスクワ中心部で25日、抗議集会を開いた。独立系ニュースサイト「メドゥーザ」によると、約1000人が参加した。検察当局は参加者を拘束すると事前に警告したが、共産党は集会を強行した。
 
共産党は、電子投票の開票作業が不正に行われたと主張し、20日に初めて抗議集会を開いた。共産党によると、集会後、治安当局は下院選候補者や現職市議らを拘束した。
 
プーチン政権は、政権との共存を前提としてきた「体制内野党」の共産党が変質し、全国規模の反政権運動を起こすことがないよう、抗議行動の収束に躍起となっている。
 
メドゥーザは25日、共産党のゲンナジー・ジュガーノフ議長がプーチン大統領の側近と頻繁に接触していると伝えた。事態収拾の見返りに、下院の重要ポストを求めているという。ジュガーノフ氏はプーチン氏や各党党首とのテレビ会議を理由に25日の抗議集会を欠席した。
 
下院選ではプーチン政権与党の「統一ロシア」が、定数450の3分の2を超える324議席を獲得して圧勝した。共産党は14議席増の57議席だった。【9月25日 読売】
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話がコロナからあらぬ方向にそれてしまったので、今日はここまで。

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