孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ナイジェリア  アフリカ最大の人口・経済 その光と影

2023-01-29 22:32:56 | アフリカ

(水上スラム「マココ」の水路の始発・終点 【2022年12月18日 不破直伸氏 Foresight】)

【大統領選を前に偽情報が増加拡散】
アフリカの「大国」ナイジェリアで、よくわからないニュースが。

ナイジェリア中部ルクビで24日、大規模な爆発が起き、遊牧民ら56人が死亡したと国営ラジオが報じました。

地元ナサラワ州の知事はドローンによる攻撃だと説明した一方、誰の犯行なのかは触れていません。

一方、地元の畜産協会関係者は、爆発はジェット機による空爆だと主張しています。
「空爆能力を持っているのは軍だけだ」として、詳しい調査を求めたとのことですが、軍の広報官は取材にコメントしていません。

56人が死亡するというのは大きな事件ですが、上記情報以外に今のところ続報がなく、内容がわかりません。

イスラム過激派の襲撃とか、部族対立による衝突で数十名が死亡するという事件なら、ナイジェリアではしばしば耳にしますが、ドローンとか空爆とかいう話になると、そういった類でもないようにも。

それとも“ガセ”“フェイク”で、いつもの部族衝突の類でしょうか。

そうした“よくわからない状況”が関連しているのかどうかは知りませんが、ナイジェリアは大統領選挙を来月に控えて、偽情報が飛び交う状況にあるとのこと。

****アングル:ナイジェリア、広がる偽情報 大統領選前に攻防激化****
ハリウッドスターのイドリス・エルバさんとマシュー・マコノヒーさんが、来月のナイジェリア大統領選候補者の1人を支持する動画を「TikTok(ティックトック)」で目にした時、ファクトチェック(事実確認)の仕事に携わるケミ・ブサリ氏はすぐにフェイク動画だと分かった。

「ばればれだ。でも信じ込んでしまう人もいる」。ブサリ氏が編集長を務めるウェブサイト「ドゥバワ」は昨年11月にこの動画のファクトチェックを行い、すぐに幾つかのソーシャルメディア・プラットフォームから削除させた。

2月25日の大統領選を控えてインターネット上では偽情報が増えており、中には特定しにくいものもある。主要ニュースサイトで繰り返し流され、有権者の間に不信感を植え付けてしまうこともある。

政治に関する活動団体「センター・フォー・デモクラシー・アンド・デベロップメント」のディレクター、イダヤット・ハッサン氏は「従来型メディアがソーシャルメディア上の偽情報にひっかかってしまうとしたら、(真偽の)境界がぼやけていることを憂慮しなければならない」と語った。

11月には、ナイジェリア選挙委員会がある候補者の犯罪捜査に踏み出したとする偽の声明が拡散されて複数の主要メディアがそのまま報じ、同委員会が情報を否定する事態に発展した。

その2カ月前には、ガーナの大統領があるナイジェリア大統領候補者に政敵に道を譲るよう助言した、というフェイスブックの投稿があり、大統領が自身の投稿ではないと表明した。

ナイジェリアの学生、セグン・アデニランさん(24)は、州知事が難民キャンプで有権者の本人確認証を買っているというTikTok動画を見て絶対に本物だと思ったと言う。偽情報だと気付いたのは、1月に虚偽を暴く記事を読んだ時だ。

「ここまで来ると、もう何を信じて良いのか分からない」

<IT大手の対応>
ハッサン氏によると、フェイクニュースを流す人々は「より巧妙になり、組織化されてきている」。複数のソーシャルメディアに矢継ぎ早に情報を流すことで、なるべく多くの人の目に触れることを狙うようになったという。

「フェイスブック投稿のスクリーンショットを撮ってツイッターに載せ、それが何度も閲覧されて次はワッツアップで拡散される」といった具合で、有権者は不確かな情報に基づいて投票してしまう恐れがあるとハッサン氏は指摘した。

ナイジェリアでは人口2億1600万人の半分以上がネットを利用しており、アフリカで最もソーシャルメディアのユーザーが多い。データ分析会社データリポータルによると、動画投稿サイト「ユーチューブ」の利用者は約3300万人、フェイスブックは2600万人余りに上る。

フェイスブックやメッセージアプリのワッツアップを所有する米メタ・プラットフォームズ、ユーチューブを傘下に収めるグーグルなどのIT大手は、選挙絡みの偽情報を減らすための資源を追加投入すると約束している。

しかし人権団体やファクトチェック組織は、こうした企業の取り組みが不十分だと言う。

ブサリ氏は、フェイスブックは問題提起されたコンテンツを速やかに調査してくれることが多いと説明。しかし選挙期間中にファクトチェック組織が政治家の怪しい投稿に対処することは同社の規約によって阻まれているため、フェイクニュースを撲滅できないと話す。(後略)【1月22日 ロイター】
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【ブハリ現大統領の評価と選挙見通し】
大統領選挙は2月25日に予定されています。2期8年間、大統領を務めたムハンマド・ブハリ氏は任期を終え、次期大統領は誰になるのか・・・・・有力視されているのが、現与党・全進歩会議(APC)のボラ・ティヌブ氏、現最大野党・人民民主党(PDP)のアティク・アブバカル氏、第3党の労働党(LP)のピーター・オビ氏の3氏とのこと。

元軍人のブハリ現大統領の評価については、堅物との評価もある同氏の性格を反映してか、汚職は少なかったようです。一方で、強権的な側面も。

****有識者に聞く、2023年ナイジェリア総選挙の見通し****
(中略)
ブハリ政権に対する評価は。
答え:(ナイジェリア地域研究者で名古屋外国語大学教授の島田周平氏)
あくまでこれまでの他政権との比較においてだが、汚職は少なかった。前任のグッドラック・ジョナサン政権の汚職を追及して勝利したこととも関連しているが、特に第1期は汚職に対して強硬な姿勢を見せていた。

また、軍政下で最高軍事評議会議長を務めた人物であり、軍内部に対するコントロールが良く働いていた。手ぬるいという批判もあったが、北東部におけるボコ・ハラムの掃討作戦は一定の成果を上げている。

逆に、彼の軍政的統治手法が時に国民の強い批判を浴びた。ブハリ政権は軍・情報局・警察などの要職を北部で固めているとの批判が強く、南西部諸州の知事らが要求した州管理の自警団組織(通称「アモテクン」)の設置を正式には認めなかった。

南東部州の自警団組織に対しては軍を派遣して徹底的に阻止した。さらに、住民運動、例えば、秘密警察の横暴なやり方に対する反対運動などには徹底的に弾圧を加えた。あたかも軍政下にあるかのごとき印象を国民に与えた。【1月5日 JETRO】
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選挙見通しに関しては、与党の元来の票田である北西部地域の有力政治家たちがいまだ誰を支持するか分からないといった情勢にあって、流動的な状況とのこと。

ナイジェリアは民政移管して既に四半世紀になろうとしていますが、来月の選挙は元軍人ではない候補者だけによる初めての大統領選挙ということになります。有力候補者らの軍に対する統率力は未知数です。

【アフリカのスタートアップの中心】
一般にアフリカについては、紛争・武装勢力の跋扈・貧困・格差といった負のイメージと、今後の大きな可能性、実際、現段階で急速に経済成長しているというポジティブなイメージの両側面があります。

特に、アフリカにあって最大の人口と経済規模を誇るナイジェリアには、その両側面が凝集しています。

ボコ・ハラムなどイスラム過激派の問題はしばしば取り上げていますが、下記はポジティブな側面・大きな可能性に関するもの。

****2050年人口4億人ナイジェリア、起業家集う新たな聖地****
アフリカの大国、ナイジェリアの最大都市ラゴスはどこもあふれかえる人の波で大混雑していた。本土と潟湖を取り囲む複数の島からラゴスは形成されている。ラゴス島と本土を結ぶ12キロメートルに及ぶ巨大な橋を通り抜けた先で記者が訪れたのは、ブライアン・メズエさんの会社が運営する薬局だ。

店内には米国や韓国、中国などの医薬品が整然と並ぶ。偽造品も一切見当たらない。日本では一見何の変哲もない薬局の光景だが、ラゴスでは貴重だ。

ナイジェリアは医療保険への加入率が5%ほどにすぎない。薬局は国民の健康を守るライフラインだが、大量に流通する偽造品が社会課題になっている。世界保健機関(WHO)によると、サハラ以南のアフリカだけでも偽造や粗悪な抗マラリア薬によって毎年多ければ11万人以上が命を落とす。

ナイジェリア、アフリカのスタートアップの中心
メズエさんはそんな社会課題の解決を目指し、病院や薬局向けに医薬品をオンライン販売するスタートアップを立ち上げた起業家だ。病院や薬局の需要を取りまとめて供給元から大量調達し、正規価格よりも10~15%安く提供できる。今では国内の700を超える薬局や病院がシステムを利用し、在庫や顧客管理といった店舗のIT(情報技術)化を後押しする。

「ナイジェリアは経済的に自分の足で立っていける」。メズエさんは真剣なまなざしで志を立てる。

メズエさんの志はあながち夢物語とは言えない。ナイジェリアは2050年に人口4億人に迫り、世界4位になるとみられている。台頭する「第三世界」の一角として世界が注目し、新世代の起業が相次ぐアフリカのスタートアップの拠点としても変貌を遂げている。

米パーテック・パートナーズの調査では21年にアフリカ全体の資金調達額が20年比3.6倍超の52億ドル(約6800億円)を超え、うち3割以上をナイジェリアが占めた。国際協力機構(JICA)によると、ラゴスを中心に100近いインキュベーター(起業支援会社)が集まる。

新世代の起業家、投資マネー呼ぶ
投資マネーを引き寄せる磁力となっているのが、海外から母国に舞い戻った新世代の起業家たちだ。メズエさんもその1人。ナイジェリアで医者の一家に生まれた。10代を英国で過ごし、大学卒業後は米ハーバード大で経営学修士号(MBA)を取得した。大手コンサルティング会社で活躍していたが、ナイジェリアに戻って17年に起業した。

なぜ、輝かしいキャリアをリセットしてまで母国に帰ったのか。記者が疑問をぶつけると、メズエさんはアフリカへの思いを打ち明けてくれた。「私にはアフリカの苦難の『物語』を変える夢がある。自立した尊厳のあるアフリカに、私が変えたい」。世界を渡り歩いてきたメズエさんには、「気の毒だ」「助けたい」といった感情でいつまでも語られるアフリカのイメージに対する反発があった。

奴隷貿易によって16~19世紀にかけてアフリカの人口増加がなかったに等しいとする説を考えれば、その後の経済発展に与えた影響は大きい。ナイジェリアは1960年の独立後も内戦などで長らく政情不安が続き、エリート層が相次いで国を離れていった経緯がある。

「もうアフリカは慈善事業の対象ではない」
メズエさんのような国外にいるナイジェリア人は、奴隷として移り住んだ子孫なども合わせると1700万人以上いるとされる。在外ナイジェリア人による国内への送金額が年間195億ドルとGDPの4.5%を占めるというから、その影響力は大きい。

アグリテック企業を立ち上げたウゾマ・アヨグさんも、米マイクロソフトの内定を蹴り母国への思いと野心を持って米国から帰国した1人だ。「もうアフリカは慈善事業の対象じゃない」。数々の苦難を越え、世界から対等にビジネス相手として受け入れられ始めたと感じている。同情やあわれみをかけられるのではなく、世界と対等になる。アヨグさんは反骨心を奮い立たせている。

とはいえ、ナイジェリア社会の現実はまだまだ苦しい。世界銀行によると18年のナイジェリアの貧困率は約4割だった。21年にはインフレ率が17%に達し、20~22年にかけて続く物価高がさらに800万人のナイジェリア人を貧困に追いやったとしている。

脆弱な社会基盤、スタートアップの飛躍に影
脆弱な社会基盤はスタートアップの飛躍も阻みかねない。人口における電気の普及率は20年で約55%で、都市部でも約84%と近年は伸びていない。それでもナイジェリアの起業家たちはへこたれていない。「必要は発明の母」を地で行く会社も取材した。

2022年12月初旬の正午、医師の資格を持つイブクン・ツンデオニさんのオフィスでは、頻発する停電に備えて大型の発電機が大きな音を鳴らして稼働していた。ツンデオニさんは電話1本で酸素ボンベや注射器などの装備とともに駆けつける救急医療サービスで起業した。

イブクン・ツンデオニさんは悔しさをバネに、医者をやめて起業した
渋滞がひどいラゴスでもいち早い救命につなげるため、フル稼働するのがバイクだ。ツンデオニさん自身も救急治療を受けられなかったことでおじを亡くした経験がある。医療体制が整わずインフラの脆弱なナイジェリアでは、命の危機はすぐそばにある。

新たな医療インフラを築ければ、医師として働くよりも多くの人の命を救える。ツンデオニさんは悔しさをバネに道を切り開く。

起業家たちが胸に抱く「沈まぬ太陽」
起業家らの話を聞いた帰り道、ラゴスの街をつなぐ近代的な橋からは、川沿い一面に低所得者らが住む居住地が見えた。ナイジェリアはアフリカ最大の石油産出を誇る経済大国である半面、世界最大規模の貧困街を抱える国でもある。

記者はナイジェリアの起業家たちの不屈の精神を取材し、アフリカなどを舞台にした小説「沈まぬ太陽」を思い起こした。

作家の山崎豊子はタイトルについて「どんな逆境にも『明日を約束する心の中の沈まぬ太陽』を信じて生きていくという願いを込めた」と自らのエッセーで明かしている。アフリカの新世代が抱く沈まぬ太陽はどこから昇ってきたのか。

「ナイジェリアはこんなものじゃない」。アヨグさんがもどかしそうに何度もつぶやいた言葉が胸に迫る。ナイジェリアの起業家たちのプライドに沈まぬ太陽を見た。【1月5日 日経】
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【一方で、世界最大規模の貧困街を抱える国】
一方で、上記記事にもあるように、ナイジェリアは“世界最大規模の貧困街を抱える国”でもあります。
そうした貧困・格差を象徴するのが水上スラム「マココ」

****ナイジェリア水上スラム「マココ」が映し出す光と影****
ナイジェリアで急速に発展している商業都市ラゴスでは、地価の上昇に伴い、「マココ」と呼ばれる水上スラムへの立ち退き圧力が高まっている。しかしそれは25万人もの人々が住居を失うことを意味する。行政サービスが行き届かず、水道や電気のインフラも脆弱で、長らく地図上にさえ存在していなかったマココは、ラゴスの光と影を映し出す存在だ。

ナイジェリア最大の商業都市ラゴスには、「マココ(英語表記:Makoko)」というスラムがある。アフリカで最もユニークな都心部のスラム街の1つで、水上に約25万人が住んでいると推定されているが、誰も正確な数値は把握していない。彼らの住居はラゴス潟湖沿いに張り巡らされた水路の上に立っており、 住民はカヌーのようなボートでゴミだらけの真っ黒な水の上を移動する。

この世界最大規模の水上スラムには、幾度となく立ち退き話が出てきた。2000万人超が暮らすラゴスの急速な発展に伴う地価の上昇などにより、ラゴス州政府からは都市再開発計画も発表されている。

しかし、漁師として生計を立てている住民が多い中、マココ再開発・住居移転は彼らにとって死活問題だ。
今回はそんなマココの現状をお届けしたい。

漁業集落として始まったマココ
マココは19世紀ごろに漁業集落として始まったコミュニティーだ。漁師のほとんどは、ナイジェリア南部や、隣国のベナン共和国からこの地域に移り住んだ。そのため、現在のマココのコミュニティーは複数の言語と文化が混ざり合っている。

中でも話者が多いのが、ベナン共和国の公用語であるフランス語だ。彼ら漁師は現在もエビ、カニやサバなどの魚介類を獲ってラゴスの街中で売りさばくことで収入を得ている。

しかしながら、地価の上昇などに伴い、住人には政府からの退去圧力がかかっている。2012年7月にはラゴス州政府がマココ地域の一部の取り壊しを命じ、実際に住民への通知から72時間以内に取り壊され、多くの住民が住居を失った。

マココ地域の酋長の息子であるシェメデ・サンデー氏は「ラゴス政府は我々を追い出そうとしている」という。
マココはインフォーマルなコミュニティーであり、存在が「公」に認知されていない。それゆえに、行政サービスが届かず、水道・電気などのインフラも脆弱であり、土地所有権も曖昧だ。

ドローンを使った地図作成
マココへの行政サービス、支援サービス提供が行き届かず、また住民の土地所有権なども不明瞭であることの1つの原因が、マココが地図上に存在しないことだ。正確には、以前は存在しなかった。そのため、マココ地域の構造、密集度合い、道路・水路に関する情報がほぼなかった。 

このような状況を改善するため、2019年9月に南アフリカに拠点を置くNGO「コード・フォー・アフリカ」は、米国を拠点とするジャーナリズム団体「ピューリッツァー・センター」と、オンライン地図作成を通じた人道・災害・開発支援を行っているグループ「ヒューマニタリアン・オープンストリートマップ・チーム(HOT)」からの援助を受けて、ドローンを使い上空より画像を撮影し、マココ地域のオンライン地図の作成を開始。今までは知られていなかったマココの詳細な建築物の位置などをマッピングすることに成功した。(中略)

BOPビジネスの可能性
マココに住む人の収入や雇用に関する正確な統計データはないが、低所得者や収入のない人が大半と想定される。購買力が低いため、マココでビジネスを展開するのは非常に難しいが、社会課題の解決と採算性を確保するビジネスとして両立するBOPビジネスの可能性もある。

BOPはBase (or Bottom) Of the (economic) Pyramidの略で、世界の所得別人口構成ピラミッドで最下位層に位置する、一人当たり年間所得が購買力平価で3000米ドル程度以下の低所得貧困層を指す。BOPビジネスはこうしたBOP層をターゲットとしたビジネスを意味する。(後略)【2022年12月18日 不破直伸氏 Foresight】
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マココのBOPビジネスの可能性が現実のものとなるのか、その前にマココ全体が取り壊されてしまうのか・・・可能性としては後者でしょうが、マココが取り壊されても、そこに生活していた貧困層が消える訳でもなく、他の地域に拡散移動するだけでしょう。

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