孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  内モンゴル政策をめぐり、一部太子党が連名の公開書簡で習近平批判 背後に権力闘争?

2020-09-24 22:51:04 | 中国

(習近平批判の紅二代・任志強【9月24日 大紀元】 禁固18年の重い判決は反習近平勢力への“みせしめ”とも)

 

【「第2の新疆ウイグル自治区」になりかねない】

中国・内モンゴル自治区において、小中学校で9月から中国語教育が強化されたことへの抗議活動が広がっていることは、9月10日ブログ“中国・内モンゴル自治区における中国語教育強化 反発する住民 共産党政権の内外統一運動への警戒感”でも取り上げたところです。

 

****中国語教育強化、抗議広がる 内モンゴル自治区、「文化の危機」****

中国内モンゴル自治区の学校で9月から中国語教育が強化されたことに対し、モンゴル族による授業のボイコットや大規模な抗議活動が起きている。中国政府は近年、ほかの少数民族にも標準中国語を普及させる政策を進めているが、モンゴル族の強い反発に遭った形だ。

 

 ■取り締まりで逮捕者も

自治区政府は8月26日、「民族の交流と融和を進める」などとして、モンゴル族の民族学校の小学1年と中学1年の「中国語」の授業では、従来のモンゴル語ではなく中国語で教えるとの方針を通知。教科書もモンゴル語を主体としたものから漢民族の学校と同じものに変更し、来年からは道徳、再来年からは歴史の授業でも同様の対応をとるとした。

 

9月の新学期の直前に示された変更に対し、モンゴル族の保護者や教員、研究者らが「民族文化の危機だ」などと反発。

 

自治区東部の通遼市や区都フフホト市など各地で抗議活動や授業のボイコットが起き、AFP通信などによると、参加者は各都市をあわせて数万人規模に達した模様だ。

 

隣国モンゴルの国営放送によると、首都ウランバートルでもこのほど、内モンゴル自治区出身者らが中国大使館前などで抗議した。

 

自治区政府は「(中国語、道徳などの)3科目以外はこれまでと変わらない」「(新課程は)就職に有利に働く」などと繰り返し釈明したが事態は収まらず、AFP通信などによると、当局の取り締まりで逮捕者やけが人が出ている。警察がデモ参加者の顔写真を公開して懸賞金をかけたり、デモの様子を伝える投稿がSNSから削除されたりもしている。

 

中国国営新華社通信によると、趙克志・公安相が自治区に入り、地元の警察幹部らに「反分裂闘争を進め、地域の安定を守れ」と指示した。

 

習近平(シーチンピン)指導部は「中華民族」としての一体感を強めようと、近年、少数民族への中国語教育を強化。内モンゴル自治区と同様の措置は2017年に新疆ウイグル自治区、18年にチベット自治区でも導入されている。

 

内モンゴル自治区では資源開発などで伝統的な生活環境や暮らしが激変し、失業や格差の拡大などが深刻化。11年には炭鉱に出入りする車両に遊牧民がひき殺された事件を機に激しい抗議運動が広がるなど、民族意識の高まりも指摘されている。(後略) 【9月8日 朝日】

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「国の共通言語を学ぶことは各市民の権利であり義務だ」(中国外務省の華春瑩報道局長)とは言うものの、敢えて変更することによって、ウイグル、チベット同様の民族浄化的な同化政策が強化されるのでは・・・と懸念されています。

 

また、共産党政府が外モンゴルとの統一運動を不安視しているということは前回ブログで取り上げたとおりです。

 

この内モンゴルについて今日目にした、中国政治事情に疎い私などにはいささか唐突な感もある記事。

 

****太子党「第2の新疆」と習氏批判 モンゴル巡り公開書簡****

中国の内モンゴル自治区で少数民族モンゴル族への標準中国語(漢語)教育が強化された問題で、「太子党」と呼ばれる高級幹部の一部子弟らが連名の公開書簡で、習近平国家主席に「第2の新疆ウイグル自治区」になりかねないと政策の見直しを求めたことが、24日までに分かった。

 

習氏自身も元副首相を父に持つ太子党で“身内”から批判が出た格好だ。

 

内モンゴル自治区では9月から中国語教育を強化し、母語のモンゴル語が失われると恐れたモンゴル族が授業ボイコットなどで抵抗。逮捕者が相次ぎ、区都フフホトでも厳戒態勢が敷かれている。【9月24日 共同】

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どういう背景があるのでしょうか?

 

もちろん、先述のように内モンゴルでの対応に多大な問題が懸念されるのは事実ですが、中国のような政治体制において政府・党の方針に異議を唱えることは、非常に例外的、かつ、危険なことです。

 

しかも、習近平一強体制という現状にあっての意義申し立てというのは、よくよくのことと推測されます。

 

人権活動家みたいな立場の者であれば、自己の信念に基づいて・・・ということで、その後に我が身にふりかかる厄介・弾圧にもめげずに・・・・ということもあるでしょう。

 

しかし、「太子党」と呼ばれる高級幹部の子弟らは、中国にあっては貴族階級、特権階層であり、モンゴル族の心情に思いをはせて「信念」に基づく行動をとるとはとても思えません。

 

習近平氏自身が同様の出自であり、利害が一致しているとも考えられてきたグループであり、異議申し立てによって失う特権・資産も多いグループです。

 

こういうグループがリスクの大きい危険な行動に出るのは、「次は自分たちが標的にされる」という恐怖・不安か、もしくは、大きな権力闘争の流れの中で、勝算があると見込める場合でしょう。

 

【革命の功労者を親に持つ実業家・任志強が習近平批判で重罪判決】

折しも中国では、遠慮のない発言、放言で知られ、「裸の皇帝」「道化」などと露骨な習近平批判を行っていた紅二代(親が革命の功労者)の実業家・任志強(じん・しきょう)氏に対し、汚職の罪で厳しい禁固刑が言い渡されています。(任志強がそうした方言をこれまで咎められなかったのは、習近平政権の実力者・王岐山の親友ということもありました)

 

****中国裁判所、実業家に汚職で禁固18年の判決 習氏風刺で身柄拘束****

中国・北京市の第2中級人民法院は22日、国有不動産会社の会長だった任志強被告に汚職の罪で禁固18年、罰金420万元(61万9003ドル)の刑を言い渡したと明らかにした。

判決文によると、任被告は1億1100万元を横領し、125万元の賄賂を受け取った。また、自身の地位を悪用し、複数の国有会社に1億1700万元の損失を負わせる一方で、自分は1941万元の利益を得たとしている。

任被告は不当に得た金を全額返還し、「すべての訴因について自主的に自白し」、判決を受け入れ上訴しない方針という。

任被告は、習近平国家主席が2月に行った政府の新型コロナウイルス対応に関する演説を巡り、習氏を道化師などと評する記事を出し、3月に身柄を拘束された。【9月22日 ロイター】

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任志強の逮捕・非常に厳しい禁固刑判決は、共産党政権内部にうごめく習近平氏をめぐる権力闘争的な動きがあることを推測させます。このあたりの事情が、先述の太子党の内モンゴルを巡る公開書簡・習近平批判ともつながるのでしょう。

 

****「中国のトランプ」に鉄槌、習近平文革の始まりか****

「中国のトランプ」といわれるほどの遠慮のない発言、放言で知られる、紅二代(親が革命の功労者)の実業家・任志強(じん・しきょう)は、今年(2020年)2月に習近平を「裸の皇帝」「道化」などと激しく批判し、宮廷クーデターを煽ったともとれる署名原稿を米国発の華字論文サイトに寄稿したことで、およそ半年にわたって身柄拘束されていた。9月22日、その任志強に、懲役18年という重い判決が言い渡された。

 

任志強は元中央規律検査委員会書記の王岐山の親友という極めて強い政治的バックがあり、これまでは習近平に批判的な態度をとっても党籍剥奪を免れていた。

 

だが、ついに党籍剥奪どころか、懲役18年という69歳の老身にとっては無期懲役ともいえる重い判決を受けたのである。

 

中国政治の人治性を知る人間からすれば、これは相当激しい権力闘争が背景にあったと想像せざるを得ない。この任志強の判決によって、習近平は党内の紅二代グループと完全に対立したともいえるし、また実業界にも激震が走ったことだろう。

 

罪の重さは“宮廷クーデター”未遂に匹敵?

任志強が問われた罪状は4つ、汚職、収賄、公金横領、国有企業人員としての職権乱用である。(中略)

 

任志強の習近平批判論文は2月に発表され、3月に、身柄拘束が伝えられた。4月末には任志強が絶食して尋問に抵抗したといった噂が流れた。7月になって党籍剥奪の決定が発表され、起訴され裁判で罪が問われることになった。

 

任志強の周辺の友人らによれば、任志強裁判のために、王滬寧(中央政治局常務委員、宣伝・イデオロギー担当)は専門のタスクチームを立ち上げ、“反党的”な任志強の自白をとり、重罪判決方針を決めた。

 

中国では単純に裁判で罪が決まるわけではないことは当然といえば当然だが、このやり方は、まるで文革時代の江青林彪集団を模倣したかのように見える。(中略)

 

習近平がこれまで粛清してきた人物で思い出すのは、元重慶市書記の薄熙来、元政治局常務委員の周永康、胡錦涛の腹心でもあった令計画らで、いずれも無期懲役の判決だった。だが彼らは党内のハイレベル政治家であり、習近平から権力奪取する陰謀を企てたと噂されていた。

 

ほかには、中国の政治体制の変革を訴える「零八憲章」の起草人の1人で、2010年に中国の獄中でノーベル平和賞を受賞した劉暁波が、「国家政権転覆煽動罪」で懲役11年の判決を下された。

 

また、中国の人権問題を啓発するインターネットサイト「六四天網」の創始者・黄琦は、国家機密漏洩罪と外国に不法に国家秘密を適用した罪で、昨年、懲役12年を言い渡されている。

 

つまり任志強の“経済犯罪”は、国家政権転覆煽動や国家機密漏洩よりも重罪で、党中央ハイレベル政治家の“宮廷クーデター”未遂に近い罪だということになる。

 

なぜ再び習近平を攻撃し始めたのか

任志強が身柄を拘束されたのは、2月に発表した習近平を激しく批判する文章が直接的なきっかけであろうが、彼の体制批判、政権批判の発言はそれ以前から物議を醸していた。

 

2016年2月に習近平がCCTV、新華社、人民日報などの政府系メディア各社を視察したときに、CCTVが「CCTVの姓は党、絶対忠誠を誓います。どうぞ検閲してください」と卑屈な標語を社内に掲げたことに対して、任志強が「人民の政府はいつ党の政府になった?」といった批判をSNSの「微博」上でつぶやいた事件があった。

 

この批判がきっかけで、習近平が中央メディアを使って、自分を毛沢東のように神格化すべくキャンペーンを張ろうとした「個人崇拝路線」は挫折した。一部ではこの事件を、習近平が仕掛けた“プチ文革”が任志強によって10日で挫折したという意味で、「十日文革」事件とも呼ばれた。

 

任志強は、中国メディアで「反党的」と一斉にバッシングされ、そのバッシングは任志強の親友である王岐山にも及んだ。だが、それでもその時は任志強の党籍は剥奪されなかった。北京市西城区の共産党委員会は任志強を「党の政治規律に違反した」として1年の観察処分に処しただけった。

 

それから4年、任志強は表舞台から身を引いていた。なぜ任志強は再び、習近平を攻撃し始めたのだろうか。十日文革のときには、党籍剥奪こそされなかったが、かなり激しいバッシングに遭っていたし、後ろ盾の王岐山もすでに現役ではなくなっている。

 

考えられるのは、党内で任志強に同調し、新型コロナ肺炎の蔓延や、中国の国際社会における孤立、経済悪化の責任を習近平に取らせたいと考える勢力が実は想像以上に存在するということ、そしてその勢力には、王岐山以上のかなりの上層権力者が含まれているのではないか、ということである。

 

中国内政に詳しい元香港民主党創始者の林和立はアメリカの政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア」の取材にこんな見方を寄せていた。

 

「任志強がこれほど重い判決を受けたのは、党内の“反習近平派”に対して、“鶏を殺して猿に脅す”(見せしめ)的効果をねらったものだろう。たとえ紅二代であっても、(習近平に逆らえば)罪を逃れられない、と思い知らせる効果を狙ったのだろう」

 

「習近平はこの1〜2年の間、自分に対する批判を行った人間に対し厳しい懲罰を与え続けてきた。彼にとっては劉暁波よりも任志強への懲罰の方が重要だった。これほど判決が重いということは、任志強の書いた一つ二つの批判文章だけが理由ではないと思う。習近平は、彼を党内の反習近平派のメンバーの1人とみなしたのだろう」

 

内部から続々とあがる体制批判の声

実際、この1年、習近平を公開で批判する体制内人士が続出している。

 

中央党校の定年教授の蔡霞は「共産党はゾンビ」「習近平はマフィアのボス」と批判し、党籍をはく奪された。彼女はすでに米国に亡命している。(中略)

 

また、現在進行形の内モンゴル自治区での第二類双語教学導入(学校での漢語教育強化)への抵抗運動には多くの共産党員、公務員も反対の声を上げている。

 

その中には革命家で政治協商会議副主席も務めたことのある馬文瑞の娘の馬暁力、つまり紅二代も含まれているという。馬文瑞と習近平の父親の習仲勲は親友であり、習近平と馬暁力も幼馴染の関係だ。

 

9月10日、米国に亡命している元中央党校教授の蔡霞はボイス・オブ・アメリカの取材に「数年前から中国共産党内の紅二代が集まる会食の席では、みな今の共産党政治への反省の話になる。その中には共産党体制に疑問を持つ声もあった」と証言していた。

 

紅二代は、中国共産党内の特権階級、いわば貴族のような扱いであったが、その中から中共の合法性についての疑問が語られるようになったということは、もやは、共産党の寿命が尽きている、ということに他ならない。

 

紅二代勢力を極度に恐れる習近平

(中略)任志強の父親は商業部副部長を務めたこともある任泉生だ。王岐山と親密な関係にあり、不動産企業・北京市華遠集団元会長でもある大富豪だが、彼の歯に衣着せぬ発言は大衆に支持されていた。

 

2013年の北京大学での講演会では、彼はこう語っている。「今の中国の現状で、我々の唯一の社会的責任は、ここにいるみんなが、努力して立ち上がり、目の前の壁を倒して、社会民主制度を打ち立てることだ」。

 

習近平はこうした紅二代勢力によって、自分が権力の座から追い落されることを極度に恐れている。だからこそ、王滬寧らに命じて任志強を何としても重い判決に処し、紅二代勢力全体に対する委縮効果を狙ったのだろう。

 

だが、任志強一人を牢獄に閉じ込めても、紅二代の反感は抑えむことができるだろうか。紅二代勢力は、実業界、学者知識人界、官僚界、そして解放軍内に幅広くネットワークをもっており資金力もある。

 

習近平の性格を思えば、こうした実業家や学者、知識人、官僚らを次々と、それこそ文革時代のように粛清していかねば安心できない、ということになる。

 

今回の任志強事件は、十日では済まない長い“習近平文革”の始まりを告げるものになるかもしれない。【9月24日 福島 香織氏 JB press】

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今回の内モンゴルを巡る公開書簡・習近平批判が、上記記事にある紅二代・馬暁力を含む“内モンゴル自治区での第二類双語教学導入(学校での漢語教育強化)への抵抗運動には多くの共産党員、公務員も反対の声を上げている”者によるものなのかどうかは知りません。

 

中国共産党政権を“自分たちの親がつくった政権”として身近なものに感じている紅二代・太子党の面々にしてみれば、習近平一強体制のもとで変質する政権への不満・危惧があるのでしょう。

 

そうした紅二代・太子党の面々の不満と、彼らの影響力を恐れる習近平主席の不安が交錯する形で、なにやらドロドロしたものがうごめいている・・・・との指摘です。

 

【権力闘争の存在をうかがわせる教科書における「文革」評価の揺らぎ】

「文革」を復活させようとしているとも指摘される習近平政権と反対勢力のせめぎあいは、「文革」に関する教科書記述の揺らぎにも表れているとも。

 

*****「文革」評価揺り戻しから見える習近平の危うい立場****

(中略)このように、近年、中国歴史教科書で大きく変化したのは、2018年版である。

 

おそらく習近平政権は、前年の2017年(ないしは、それ以前)から「文革」への評価を変更しようとしていた事が窺える。そして、実際、2018年の教科書改訂につながった。これは「習近平派」が一時、党内で優勢になった結果ではないだろうか。

 

ところが、翌2019年には、「反習近平派」(その中心は李克強首相)が徐々に巻き返し、今年2020年には、以前の「文革」評価に戻っている。これは、2018年〜19年にかけて「反習派」が党内で支配的になった事を物語るのではないか。

 

だからと言って、軽々に、「反習派」が共産党全体を牛耳っているとは決めつけられないだろう。習近平主席が依然、軍・武装警察・公安等を掌握しているからである。

 

ただし、いつ習主席に対するクーデターが起きても不思議ではない状況にある。直近では、今年3月、郭伯雄の息子、郭正鋼がクーデターを起こしたと伝えられている。(後略)【9月11日 澁谷 司氏 JB press】

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太子党の公開書簡による習氏批判というのも、李克強首相らの反習近平勢力につながる動き・・・・でしょうか?

“習氏の粛清が本格化、公安機関を完全掌握へ”【8月19日 WSJ】

“習近平と9人の経済ブレーン、李克強を“のけ者”に”【8月27日 福島 香織氏 JB press】

といった話も。

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