【政局】:不人気な政策も実現できる 岸田政権「黄金の3年」の使い方 ■八代尚宏・昭和女子大特命教授
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政局】:不人気な政策も実現できる 岸田政権「黄金の3年」の使い方 ■八代尚宏・昭和女子大特命教授
岸田文雄首相は、衆院解散がなければ2025年までは全国規模の国政選挙の予定がない「黄金の3年」を手にしたが、これは過去の慎重な政策方針の結果である。
まず自民党総裁選では、現状の制度改革を唱える河野太郎氏に対して、成長よりも分配を重視した「新しい資本主義」を唱えることで、現状維持を望む既得権層に安心感を与えて勝利した。
他方で、アベノミクスの下で高騰した株価と停滞する賃金水準の格差を是正するための分配政策の柱は資本所得への課税であった。これに対して金融界から批判が生じると、今度は「成長も分配も重視」の政策に転じ、さらに「資産所得倍増論」まで打ち出した。
この変わり身の早さとスキャンダルとは無縁の人柄で、野党に付け入る隙(すき)を見せず、7月の参院選でも圧勝した。いかなる政策でも放り込める「新しい資本主義」を掲げて、政権は盤石となっている。これは、いよいよ満を持して、従来の「何もしない岸田内閣」という汚名をそそぐ時期が、ようやくやって来たといえるのではないか。
◆脆弱な医療制度の改革
第一に、医療改革である。コロナ危機は、日本の医療制度の脆弱(ぜいじゃく)さを浮き彫りにした。人口比で米国よりもはるかに少ない感染者数で、4倍超もある病床数にもかかわらず、ピーク時には自宅待機を強いられる患者が続出した。7月には再び感染者数が急増しており、地域によっては、再び病床逼迫(ひっぱく)のリスクも高まっている。
これは患者を受け入れる病院が限られているためで、懸命に患者に対応する病院と、そうでない医療機関との差が著しい。緊急時には政府が民間病院も含めた医療機関に、救急患者の受け入れの指揮権を発動できる、強力な法的仕組みを整備することが最優先される。
欧州主要国では、社会保険から収入を得ている医療機関に対する公的な関与は当然とされている。日本でも医療のセーフティーネットが確保されれば、今後、感染防止のための経済や社会活動の抑制は、最小限度にとどめることができる。
◆歳出削減か増税か
第二に、財政の野放図な拡大と、それをファイナンスして来た異次元の金融緩和の見直しで…、残り1505文字(全文2390文字)
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元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 政治 【政局・参院選最終盤の7月8日、安倍晋三元首相が街頭演説中に凶弾に倒れて約3週間】 2022年07月26日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。