【ファクトチェック・ニッポン!・06.22】:今回の選挙を「参議院」というものの機能を考える機会にしたい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ファクトチェック・ニッポン!・06.22】:今回の選挙を「参議院」というものの機能を考える機会にしたい
7月10日に投開票が行われる参院選挙。ある地域で計画された党首討論が中止となったと耳にした。自民党が参加を拒否したのが理由だという。主催者側の関係者は、「自民党は失点さえなければ勝てると踏んでいるので、盛り上げたくないのでしょう」と話した。
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国会議事堂(C)日刊ゲンダイ
昨今の情勢を見ると自民党がそう考えたとしても不思議ではない。仮に、その推測が本当だとして、自民党が悪いのか? そう思わせる我々有権者が悪いのか? 間違いなく後者だろう。
こうした中で、政府の衆院議員選挙区画定審議会が、1票の格差を2倍未満に収めるための小選挙区の区割り見直し案を勧告した。これによって、東京、神奈川など5都県で10増、宮城、和歌山、山口など10の県で10減となる。
もともと自民、公明両党が議員提案したものだが、後に減となる県が明らかになると自民党内から激しい反発が出たと報じられている。山口県、和歌山県などは有力議員の地元だけに、わかりやすい反応だ。
衆議院選挙において1票の格差を2倍未満におさえることは重要だ。有力政治家のために制度があるわけではない。一方で、1票の格差を是正する中で、結果的に地方の衰退を加速させる恐れがあることも否定できない。
私は、その部分を埋める役割を参議院に持たせるべきだと考えている。現状では、参議院にも1票の格差の是正を求める考え方となっている。最高裁もそれを命じている。本当にそれでいいのか? この点を考え直した方がいいというのが私見だ。
■アメリカではどうしてる?
ここで、別の国の例を見てみたい。100万余が2人を選ぶモンタナ州と約4000万人が2人を選ぶカリフォルニア州。これはアメリカの上院議員のケースだ。その1票の差は数倍などというレベルではない。桁が違う。
アメリカも下院議員の区割りは国勢調査に基づいて目まぐるしく変わる。日本の衆院に近い下院では有権者の平等が重視されているからだ。しかし制度的に参院に近い上院では、人口の多少にかかわらず各州2人の選出だ。それを見直す動きがあるとは聞かない。民意をストレートに反映させる下院と、大所高所からものを考える上院とで議会を構成するという考えなのだろう。
日本も、そうした衆参での役割分担を検討してもいいのではないか? 民意を反映させる衆院と民意から距離をおいて日本全体に目を向ける参院という役割分担を明確にしてはどうだろうか?
今回の選挙を、各党の主張を見るだけでなく、参議院というものの機能を考える機会にしたい。例えば、疑惑を指摘され雲隠れする衆議院議員がいる。もちろん、国会議員の身分は守られねばならないが、例えば、参議院には衆議院議員の身分を剥奪する権限を与えることはあり得るかもしれない。もちろん、その前提として参議院議員は政党の枠組みを超えて日本全体を考える役割を担うといった規定も必要だろう。
盛り上がりに欠けるとされる今回の選挙。ぜひ、そうした国会のあり方も含めて考える機会にしたい。
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元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・連載・「ファクトチェック・ニッポン!」】 2022年06月22日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。