新型コロナで中国歴史ドラマに嵌る

 

新型コロナで外出もままならず、ホーム生活はただでさえ退屈だというのに、さらに時間を持て余すようになってしまった。そんな時の時間潰しにぴったりなのが中国歴史ドラマだ。平均して50話以上あり、一日に2話づつ観たとしても一つのドラマを見終わるまでにほぼ一ヵ月ほども楽しめる。セットも衣装も豪華だし、出演している役者も美男美女揃い。アマゾンプライム(アマプラ)でも数多く配信されている。今これを観ない手はない。21年6月末現在アマプラで無料で観ることのできるドラマの中からオススメの3作品の個人的感想を書いてみた。


琅琊榜(ろうやぼう)~麒麟の才子、 風雲起こす~

★★★★★

とにかく脚本が素晴らしい。綿密に練られたストーリーに片時も目が離せない。中国版エミー賞を受賞しただけのことはある。しかし、人間関係や宮廷内の組織の複雑さなど難解な部分が多く一回観たくらいではこの作品のもつ本来の面白さの半分も堪能できないだろう。そもそもタイトルになっている琅琊榜が何なのかが分からない。本編を観てもいまいちよく分からない。調べてみると琅琊というのは現在の山東省辺りを示す地名で、榜は立看板のこと。つまり琅琊榜とは琅琊にある格付け機関の琅琊閣が公表するランキングで今風に言うとオリコンやミシュランみたいなもののことらしい。

ストーリーは謀反の罪を負わされ、死に追いやられた一族と配下の赤焔軍の名誉回復と皇帝の後継争いを絡めた復讐劇なのだが、そんなにドロドロしていない。むしろ随所にある感動的なシーンが心に残る。その感動をより深いものにするためにも、この作品は二度三度観てほしい。わざわざそんなことを言わなくても全話観終わった後、きっともう一度観たくなるに違いない(だろうと思う)。背景を理解した上で観る二週目はさらに面白い。三週目にはこれまで見逃していた伏線を見つけたり、役者の表情や目線の僅かな違いに込められた意味が分かったりしてもっと面白い。そんな作品なのだ。


風中の縁

★★★

琅琊榜で主演したフー・ゴーが出ているというので観てみた。訳ありの美女を身分の高い二人の男が奪い合うという中国時代劇では定番となっている筋立て。琅琊榜と同じくここでもフー・ゴーは障害のある、石舫(豪商)の主人、九爺(きゅうや)という設定。自らが置かれた立場と障害故に愛する人に想いを伝えることができず、ようやく胸の内を告白するも時すでにお寿司。そして最期は愛する人の幸せのために・・・という切ない系ラブストーリーでもある。もちろん中国歴史ドラマではお約束となっている宮廷内の争いや復讐といった要素ももれなく含まれている。

このドラマでいい味出しているのが脇役の人たち。九爺の側近の石謹言(せき・きんげん)演じるワン・チュンユェンはこの他のいくつかのドラマにもキーパーソンとして出演している、いわゆる"中国時代劇でよく見る人"の一人だ。小太りの憎めない風貌のわりには結構強いのだが、何故かいつも最期は死ぬか殺されてしまう役柄が多い。もう一人は、ヒロイン莘月(しんげつ)が身を寄せることになる落玉坊の女将、紅姑(こうこ)。人情味があって男気?もある、いかにも歌舞坊の女将という感じの役どころ。声が似ているのか雰囲気なのかこの人が出てくる度に何故かタレントの清水ミチコが頭に思い浮かんだ。出演している中国の役者を日本の役者に例えて脳内で変換してみるのも中国ドラマの楽しみ方の一つだと思う。


「三国志-Secret of Three Kingdoms(三国機密)」

★★★★

一番最近観た作品。もし漢の献帝(劉協)が〇〇だったなら、もし劉協と司馬懿の関係が〇〇だったならという設定で描かれた本家中国版の新解釈三国志。このドラマを十二分に楽しむにはいわゆる正統派三国志の予習が必要だ。三国志に書かれた史実を知ってこそこのドラマの意外性が引き立つといえる。蜀を中心に書かれた三国志演義とは違って、魏が中心の話なので孔明も関羽も呂布も出てこない。しかし、三国志演義では枠役扱いだった郭嘉や荀彧が重要な人物として登場するのでこれはこれで面白い。

ストーリーは本当によくできているし、映像も綺麗で申し分ない。ただ、キャスティングがちょっといただけない。皇后の伏寿役のレジーナ・ワンは美しいが、皇帝の劉協との見た目の年齢差がありすぎ。司馬懿と唐瑛もそう。曹操にもがっかりした。三国志の英雄なのに最初に登場したときは「えっ、これが曹操?」と思ってしまったほど。もうちょっと何とかならなかったものか。

それでも邦画の「新解釈・三國志」の100倍は面白いと思う。そっちは観てないけど。また、司馬懿をメインにした「三国志~軍師連盟 司馬懿~」というドラマもあって、この作品で曹丕役だったタン・ジェンツーと荀彧役だったジーン・オウがそれぞれ司馬懿の息子・司馬昭、曹操の息子・曹植で出演しているのでそれもまた見てみたいものだ。


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