噂では聞いていたものの、実物を見たことはなかった『マテオ聖福音書註解』。
昭和7年(1932年)に岡山のカトリック思想・科学研究所から発行されたもので、おそらく日本で初めての本格的なカトリックの注解書ではないかとも言われている稀覯本です。
▲『マテオ聖福音書註解』ラルボレット博士編/守屋興雄訳
それを、あるサイトで、ついに見つけました。
箱入り・上製本・2色刷り・462頁の大著です。
「即決 100円」と出ていたので、慌てて落札!
どんな本なのだろうと期待していたら、数日後、小さな封筒に入った
縦115ミリ×横95ミリの、文庫本より若干小さめ目のミニ本が届きました。
A5判の雑誌と比較するとこんな感じです。
確かに箱入りの上製本でしたが、何ともかわいい感じがします。
中身は、2色刷りで、ミニ本にしては贅沢な作りでした。
内容ですが、聖書本文(ラゲ訳)が赤字で印刷され、単語や文章ごとに注解がほどこされています。
原著は、当時有名なアリオリ師の本を、イエズス会のアルント師が改訂し、教会の校閲を受け、教皇ピオ10世のとき印刷・出版されたものだそうです(日本語訳にする際に、ラルボレット師が編集)。
当時の標準的な聖書理解が記されているので、貴重な一冊です。
本書の巻末に、出版元の「カトリック思想・科学研究所」による出版物リストが掲げられていますが、聖書、神学、哲学、教会史、一般向けのパンフレットなど多岐にわたっており、当時の教会の宣教に対する熱意が伝わってきます。
信徒数が減り、本が売れなくなった現代では、カトリックの立場に立つ聖書注解書は、もはや望めないかもしれません。けれども、いつか、安心して使えるくせのない聖書注解が出版されることを願っています。